【コラム】back number、”クリスマスソング”は裸の恋心を暴く究極のラブソングだ!

【コラム】back number、”クリスマスソング”は裸の恋心を暴く究極のラブソングだ!

すでにアルバム『シャンデリア』のリリースも発表された中、いよいよ発売日を迎えるback numberの最新シングル曲“クリスマスソング”。清水依与吏自身も『ROCKIN'ON JAPAN』12月号のインタヴューで「『冬の歌あるある』は“ヒロイン”に全部ぶち込んだので、正直もうタマなかったんです(笑)。絶望スタートでしたね」と語っていた通り、彼が徒手空拳状態で臨んだこの曲はそれゆえに、清水依与吏という表現者の在り方がよりはっきりと滲んだものになっている。そして、だからこそよりいっそう胸に迫る。

この曲の歌詞は一貫して《あれ なんで恋なんかしてんだろう/聖夜だなんだと繰り返す歌と/わざとらしくきらめく街のせいかな》《サンタとやらに頼んでも仕方ないよなぁ》と「クリスマスの街の高揚感にハジかれた恋心」にフォーカスを合わせている。“クリスマスソング”というタイトルとは裏腹に、そこで歌われているのは「小綺麗なクリスマスソングになんか到底なり得ない、不器用で不格好な気持ち」なのである。

清水依与吏の音楽の根底には、「こんな自分が幸せになんかなれるわけがない」と石橋を叩いて壊しかねない己への猜疑心と、「そんな自分でも光を追い求めたい」と掲げる微かな希望が、ギリギリと軋みを上げながら常に共存しているし、悲しさ/寂しさ/葛藤といった感情を糧にするかのように、清水のメロディは訴求力と色彩感を増していく。国民的CMソングという大舞台を引き受けた“ヒロイン”の美しさとスケール感もback numberの大きな魅力ではあるが、たとえば同じバラード曲で言えば、「彼女ともっと一緒に過ごしたい!と言い出せずに終電で見送ってしまって後悔に苛まれる男の心情」を切々と歌い上げた“世田谷ラブストーリー”(アルバム『ラブストーリー』最終曲)のミクロな情景描写にひときわ抗い難いリアリティと誘引力を感じるのは、僕が男性だからという理由だけではないはずだ。

しかし、今回の“クリスマスソング”では、どうやったってポップになり得ないくらい切実に軋んだ感情を焼きつけたその言葉が、バンドのシュアなアンサンブルと、小林武史のプロデュースワークと、何より清水の歌とメロディによって、雄大な広がりを持った至上のクリスマスソングとして響いてくる。光は街のきらめきではなく、あなた自身の胸の中にある――ということを、楽曲そのものの力によって示している、実にマジカルな曲だ。《こんな事伝えたら格好悪いし/長くなるだけだからまとめるよ/君が好きだ》……清水依与吏の虚飾なき核心が、月9ドラマ主題歌として結実した、記念碑的な楽曲だ。アルバム発売も今から待ち遠しい。(高橋智樹)
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