キティー・デイジー・アンド・ルイスとEGO-WRAPPIN’、夢の対バン公演を徹底レポート!

キティー・デイジー・アンド・ルイスとEGO-WRAPPIN’、夢の対バン公演を徹底レポート!

今年4月の初単独来日ツアー、7月のFUJI ROCK FESTIVAL '15出演に続く今年3度目の来日公演として、先週EGO-WRAPPIN'との対バンツアー「KITTY, DAISY & LEWIS vs EGO-WRAPPIN’」を行ったキティー・デイジー・アンド・ルイス。

RO69では、10月2日(金)に行われた東京公演のオリジナル・レポート記事をお届けします。

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【KITTY, DAISY & LEWIS vs EGO-WRAPPIN’ @ EX THEATER ROPPONGI】

公演タイトルに潔く「VS」と銘打たれているイベントも、近頃では珍しい。しかしこれはまさに「VS」と言ってよい組み合わせ。海外アーティストを迎えるオープニングアクトという位置づけではなく、あくまで対等の2マンライヴ。今回は、大阪と東京の2公演で、EGO-WRAPPIN'のホームとも言える1日目の大阪では、キティー・デイジー・アンド・ルイスが先だったとのこと。2日目の東京、EXシアター六本木での公演では、EGO-WRAPPIN'が先に登場した。

この共演が実現したことが本当に嬉しいという様子の森雅樹(G)は、冒頭で「(キティー・デイジー・アンド・ルイスのことを)好きだ、好きだって言ってみるもんですね。もうすぐ出てきますから、ちょっとだけ我慢して。でも、楽しんでもらっていいですか?」なんて言っていたが、そのほんわかしたトークとは裏腹に、演奏では初っぱなから観客をぐいぐい煽る。“奴さん(江利チエミのカヴァー)”や“太陽哀歌”など、ディープな昭和歌謡的な流れから、“キスのうまいあなた(マイティ・スパロウのI'll Be Aroundの日本語カヴァー)”、そしてやもはやスカのスタンダードともいえる“リンゴ追分(美空ひばりのカヴァー)”など緩急自在のセットリストで、中納良恵のパワフルかつ伸びやかな声がオーディエンスの熱をどんどん上げていく。終盤は“色彩のブルース” 、“サイコアナルシス”、“くちばしにチェリー”とまさに畳み掛けるようなキラーチューンの連発で、しっかり観客を踊らせてくれた。

セットチェンジの待ち時間には、ルーファス・トーマスやジュニア・パーカーなど、いかにもKD&Lらしい古き良きソウルやブルースが流れる。この後のライヴへの期待が高まる中、一転、SEはホット・バターの“Popcorn”。モーグシンセがフィーチャーされた70年代のテクノミュージック。4月の来日公演の時と同じだ。こんな有名なテクノ曲でも、KD&Lにはなぜかミスマッチに感じないから不思議である。そして、“Bitchin' In The Kitchen”でライヴスタート。今年1月に発売された3枚目のアルバム『キティー・デイジー・アンド・ルイス ザ・サード』の中でもとりわけキャッチーなこの曲、ルイスがドラム、デイジーがピアノ、キティーがヴォーカルを取る。黒レザーのジャンプスーツに身を包むデイジー、ラメが光る白いジャンプスーツのキティー、ルイスはスーツ姿でキメている。今回もステージ右手には彼女たちの母親であり、元ザ・レインコーツのイングリッド・ウェイスがベースで、ステージ左奥には父親であり、マスタリング・エンジニアとして活躍するグラッツ・ダーハムがアコースティック・ギターなどでサポートしている。

4月の単独来日ツアーから間にフジロックを挟んで、今年3度目の来日となった彼ら。セットリストは4月の公演とほぼ同じだが、また格段に心地好い演奏で素晴らしいグルーヴを感じさせてくれた。それぞれが曲ごとに担当する楽器をチェンジしていくのは結成当初からだが、何度見てもそのスマートなマルチプレイヤーぶりに驚かされる。取ってつけた感など微塵も感じられない。例えばドラムひとつ取っても、いなたい感じの“Feeling Of Wonder”ならルイス、タイトなリズムの“It Ain't Your Business”ならデイジー、“Don't Make A Fool Out Of Me”の高揚感溢れるロックンロールならキティー、というように、曲ごとの適材適所がきちんと考えられているのだ。それを、こともなげにやってみせる3人、やはり凄すぎる。

今回のライヴでは、特にルイスのヴォーカルにヤラレた人も多かったのではないだろうか。“Baby Bye Bye”でのゆったりとしたロックステディ感、“Don't Make A Fool Out Of Me”でのブルージーなロックンロールなど、ルイスの声は、年齢を重ねるごとに彼らが演奏する楽曲に見事にマッチしていく。50年代のロックシンガーが持つヴィンテージな質感の声、それを生のライヴで堪能していると、ここがどこで、いまがいつの時代で、彼らは何歳で、なんてことはどうでもよくなってしまうほど。

そして中盤、おなじみのゲスト、トランペット奏者のエディ“タンタン”ソーントン(fromジャマイカ)を迎えると、ステージは一気に陽気なムードに包まれる。「アイシテル〜!」を連発し、とびっきりの笑顔を振りまいてくれるタンタン。83歳とは思えない力強い演奏で、“Turkish Delight”、“Whenever You See Me”、“Good Looking Woman”と、続けざまに3曲、思いきり盛り上げてくれた。

終盤「From Camden Town, LONDON!」と自分たちのことを紹介しながら、“Developer's Disease”へ。カムデンタウンがホームタウンだと歌うこの曲(彼らは3rdアルバム制作前に、カムデンタウンにスタジオを作った)、ルイスがアコギを手にして、気持ち良さそうに弾き語る。オーディエンスのハンドクラップと相まって、とてもリラックスした表情が印象的。ラスト“Going Up The Country”では、スネアだけをステージ前方に移動させ、デイジーがスタンディングでダイナミックなドラムを叩きながら歌い、同じマイクでキティーのハープが掛け合いのように絡んでくる。絵になりすぎる光景。最高のクライマックス。

アンコールは“Say You'll Be Mine”。呼吸のように反復するキティーのハープ。ゆうに2分はソロで吹き続けていたのではないだろうか。そして、イングリッドとグラッツがステージを去ると、姉弟3人でのエンディング。ギターを弾くのが楽しくて仕方ないというふうなルイスはソロをたっぷりと聴かせ、ラストはドラムとハープが加わって上り詰めていく。圧巻のパフォーマンス。

ダブルアンコールでは、EGO-WRAPPIN'のメンバーも呼び込み、“I Got My Mojo Working”を共演! さらにタンタンも交え、サックス、トランペット、ハープと、ソロのリレーが続くと、ひと際大きな歓声が上がり、アリーナは後方まで大きく揺れている! 「Kitty,Daisy & Lewis!」「EGO-WRAPPIN'!」と、お互いのバンド名を呼び合い大団円。凄まじいエンディングだった。

なんともハッピーなライヴ企画。「VS」というだけあって、両者譲らぬ名演だったが、2バンドで繰り広げられるフェスティヴァルのような濃密な3時間。この組み合わせ、今回だけというのは名残惜しい。チケットが取れず見逃したファンも多いはずなので、ぜひともまた実現させてほしい。(杉浦美恵)
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