【コラム】KANA-BOONの武道館ライヴ作品を観て~感情があとから追いつく、4人の疾走

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  • 【コラム】KANA-BOONの武道館ライヴ作品を観て~感情があとから追いつく、4人の疾走 - 『KANA-BOON MOVIE 03 / KANA-BOONのとぅるとぅるかむとぅるーTOUR 2015 ~夢のアリーナ編~ at 日本武道館』

    『KANA-BOON MOVIE 03 / KANA-BOONのとぅるとぅるかむとぅるーTOUR 2015 ~夢のアリーナ編~ at 日本武道館』

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9月16日に、KANA-BOONの映像作品『KANA-BOON MOVIE 03 / KANA-BOONのとぅるとぅるかむとぅるーTOUR 2015 ~夢のアリーナ編~ at 日本武道館』がリリースされる(Blu-ray/DVDでそれぞれ発売)。大阪城ホールと並んで、彼らが「夢の舞台」と呼んだ3月の武道館公演の模様を収めている。武道館後には『なんでもねだり』や『ダイバー』が発表されているし、11月にはシナリオアートとのスプリットシングル『talking/ナナヒツジ』も控えているのだが、どうも彼らの生きるスピード感には、こちらが意識して立ち止まってみないと、どんどん引きずられていってしまうところがある。

そもそも、メジャーデビューから約1年半で武道館ワンマンに辿り着いてしまったこと(華やかなアイドルグループでもない、谷口鮪が言うところの「浪人生崩れみたいな見た目のバンド」の話だ)に、KANA-BOONが生きるスピード感の異常さが表れている。今回の映像作品は、ライヴ本番前に4人が「初めて」武道館に足を踏み入れ、場内を見渡し、リハーサルを行い、そしていよいよステージヘと向かう、そんな姿を追う場面から始まる。円陣を組み、谷口鮪は告げる。「しっかり、気ぃ抜きながら、いきましょう」。当然、緊張感は立ち籠めている。その上で、気持ちが入り過ぎないよう、注意を払わなければならないバンドなのだ。

僕が「KANA-BOONのライヴが変わった」と感じたのは、今年1月のアルバム『TIME』リリース翌日、マキシマム ザ ホルモンとの対バンを観たときだった。谷口鮪が、中学生時代に友人から借りたホルモンの『ロッキンポ殺し』を聴いて衝撃を受け、音楽活動にのめりこんでいったことはよく知られている。特に念願の対バンだから熱くなったというわけでもないのだろうけれど、KANA-BOONの音像と歌が、強烈に人間臭いエモーションを放つようになっていた。シングルの『生きてゆく』や『シルエット』辺りからだろうか、生み出される楽曲が、4人によりエモーショナルな表現を要求しているようにさえ、感じられていた。

かつて、若いロックバンドたちは、拙い演奏技術を補って余りあるエモーションをステージに叩き付け、次第に注目を集めるものだった。しかし、KANA-BOONというバンドは違う。メジャーデビュー前に初めて観た彼らのライヴは、既に高い演奏スキルと、歌詞を小気味良くリスナーの耳に放り込む作曲術に裏づけられていた。だから作品もライヴも、瞬く間に多くの支持を集めた。「僕にはもう、本当に音楽しかないんです」(『ROCKIN’ ON JAPAN』2015年1月号インタヴューより)と語っていた谷口鮪。音楽と共に生きる、音楽で生きることの夢と覚悟の大きさが、若きロックの響き方さえ変えていた。

KANA-BOONのロックにとって、豊かなエモーションは「あとからついて来たもの」であり、「とぅるとぅるかむとぅるーTOUR」は、あとから追いついたエモーションが見事に咲き乱れたツアーである。武道館のステージ上で、メンバー4人がそれぞれのユニークな夢を実現させてゆく一幕(小泉貴裕の本格派イリュージョンがすごい)も見物だが、このライヴ映像作品に向き合う際はぜひ、彼らがそのスピード感の中で描き出す感情の色彩に、注目してみてほしいのだ。(小池宏和)

『KANA-BOON MOVIE 03 / KANA-BOONのとぅるとぅるかむとぅるーTOUR 2015 ~夢のアリーナ編~ at 日本武道館 トレーラー映像』
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