【コラム】心の五感を解放しろ――京の個展「我葬」で生々しい詩世界を堪能

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五感が衝撃に包まれた。京が、DIR EN GREYやsukekiyoで約18年間にわたって書き上げてきた歌詩を厳選し、新たな書き下ろしも加えて76編を掲載した詩集『我葬の詩』上巻。その発表を記念して、個展「我葬」が、8月19日から23日まで、東京・渋谷GALLERY LE DECOで行われた。詩集そのものも、「詩集」と呼んでいいのか戸惑うほどに、想像の斜め上を行く孤高の仕上がりになっているのだが、それが空間で体感できる個展となると、さらに隅々まで京の眼が行き届いた、完璧な作品となっていた。

『我葬の詩』に収録されている詩や写真が展示されるだけではない。京プロデュースの服「flexus」(読み:フレクサス)を着たマネキンに迎えられてエレベーターを昇り、真っ暗な会場の中に入ると、sukekiyoのドラマーでもある未架が撮影に携わった映像が流れ、京の手を石膏で固めたヘッドフォンから詩が聞ける小部屋があり、京が個展のためにプロデュースした香り「elisabeth addict」が漂い――もう、ただの「個展」ではない。さらに開場してから40分ほど経つと、赤い光とスモークの中から、sukekiyoのライヴでも知られる演劇実験室◉万有引力のメンバーが飛び出してきて、観覧者を飲み込む勢いで踊るというサプライズがあったのだ。常々から、歌以外にも様々な表現に興味があると公言していた京。まるで彼の頭の中を覗いたような、生々しいもてなしだった。彼らしい、生死を剥き身で描いたような表現が、いつも以上に迫ってきて、恐怖や緊張も感じたけれど、その奥に秘められている真意も、いつも以上に伝わってきた。

会場の外に出ると、いつもと変わらずギラギラと太陽が照り付けていた。白昼の都会で異世界に飛び込んだような、茫然とした心持。でも、本当は、異世界ではない。この現実には、いつも「我葬」の世界が隣合せているのだ。心の五感を解放しろ――京のメッセージが、聞こえてくる気がした。(高橋美穂)
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