イディナ・メンゼル、初の日本武道館公演を速報レポート!

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2013年に全米公開された映画『アナと雪の女王』でエルサ役を演じ、自身が歌唱した主題歌“Let It Go”も大ヒットを記録、第86回アカデミー賞最優秀主題歌賞を受賞するなど、一躍世界的なブレイクを果たしたイディナ・メンゼル。

RO69では、最新ツアー「Idina Menzel: World Tour 2015」の一環として開催中の初来日ツアーより、昨日6月4日(木)に行われた日本武道館公演のオリジナル・レポート記事を公開しました。

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【イディナ・メンゼル @ 日本武道館】

『アナと雪の女王』でエルサを演じ、「レリゴー」の本家本元でもあるイディナ・メンゼルの初来日ツアーである。“Let It Go”はここ数年の日本で間違いなく最も広く聴かれた英語曲であり、昨年の紅白歌合戦に出演して茶の間の話題をかっさらったイディナはまさに時の人には違いないが、超満員の武道館で彼女が証明したのは屈指のミュージカル女優としての本来の実力で、それは「レリゴー」の話題性を遥かにしのぐものだったと言っていい。いやもう、本当に素晴らしいステージだったのだ。

オープニングはミュージカル『ウィキッド』からのナンバー“Defying Gravity”で幕を明けた。この『ウィキッド』の初演でイディナが演じたエルファバは彼女にとって出世作で、同作でトニー賞も受賞している。そう、この日のセットリストはイディナがこれまでに出演したミュージカルのナンバー、ブロードウェイの定番曲、そしてジャンル問わずのカヴァー曲で主に構成されていた。同じく『ウィキッド』の“The Wizard And I”もイントロと共に大歓声で、この日のオーディエンスは『アナ雪』と「レリゴー」でイディナを知って観に来た人たちの一方で、もともとのブロードウェイ、ミュージカルのファンも多く集まっていた印象だ。

紅白での“Let It Go”もあまりの歌唱力のレベルの違いにお茶の間に異次元を生じさせていたイディナだが、改めてこの人の声は凄まじい。ギター、ベース、ドラムス、ピアノに加えてストリングスとホーンを配したバンドによる華やかなビッグバンド・ジャズやコンテンポラリーに乗って、高低自在に伸び、膨らみ、ビブラートを効かせる圧巻のパフォーマンス。MCでの話し声はちょっと鼻にかかってハスキーな彼女だけれど、ひとたび歌い出すとどんな艶やかに繊細なタッチもお手の物だ。ジョニ・ミッチェルのカヴァー“River”は余韻まで素晴らしかった。

中盤はホーンとストリングスを存分に生かしたザッツ・エンターテイメントなビッグ・バンド・スタイルで盛り上げにかかり、ザ・ポリスの“Roxanne”もジャズ・アレンジで披露。「ブロードウェイの女王」ことエセル・マーマンの代表曲をメドレーで聴かせたセクションも楽しすぎた。『アナ雪』のおかげで本場ブロードウェイのトップ歌手のパフォーマンスを武道館クラスの会場で観ることができた、この日のショウの意味はそういうことだったのだろう。

事前にもらったセットリストを見た時から、一体どんな風にやるのか注目していたのがレディオヘッドの“Creep”のカヴァーだ。「“Let It Go”のように前向きでポジティヴなナンバーを歌うのはもちろん大好き。でも、時にはひどく傷ついていたり、何かを失ったりして、こういう曲を聴いたり歌いたくなる時があるの」とイディナ、そしてステージにうずくまるようにして“Creep”を歌い始める。が、これがむちゃくちゃパワフルかつド迫力の歌唱と演奏(ストリングス&ギターで例のミュート・カットも華麗に再現)で、「おれは虫けら、特別な存在になりたいんだ」と歌われるこの歌を、どう控えめに評価しても特別すぎる声と歌唱力を持つ人が歌いきる様がシュールで思わず笑ってしまった。ちなみにこの日のオーディエンスの大半は“Creep”がどういう意味を持っている曲なのか知らなかったようで、イントロ段階での反応はイマイチ、その後のイディナのパフォーマンスに対して純粋に「おお、上手い!」といった感じの歓声が上がっていたのも面白かった。

続く“Take Me or Leave Me”はイディナが客席に降り、数人の観客をリクルートしてそれぞれにワンコーラスずつ歌ってもらうという恒例の参加型ナンバーだ。この日は5人のオーディエンスが歌ったのだが、5人共に驚くほど度胸があり、物怖じせず、堂々と、そして何よりも楽しそうに歌う様がちょっと衝撃だった。「シャイで自己表現が苦手」というステレオタイプな日本人像をブチ壊す新世代を実感したと言うか、「日本の若者、凄いじゃないか!!」と感動してしまったのだ。会場も惜しみない拍手と大歓声で彼女、彼らの熱演を後押ししていた。

“Take Me or Leave Me”、続く“No Day But Today”は共にミュージカル『レント』のナンバー。下積み時代はウエディング・シンガーとして生計を立てていたというイディナは、『レント』の生みの親、ジョナサン・ラーソンに見出されてミュージカルの世界で成功の階段を登って行ったアーティストだ。ちなみにラーソンは『レント』の初演開幕の直前に急逝するという悲劇に見舞われた人で、イディナは“No Day But Today”を生涯の恩人であるラーソンに捧げて歌った。多幸感に満ちた“Take Me or Leave Me”から魂震わせるエモーショナルな“No Day But Today”へ、この日のもうひとつのクライマックスだった2曲だ。

“For Good”のアカペラから本編ラストはもちろんこの曲“Let It Go”。しかも英語ヴァージョンで歌った後に、日本語ヴァージョンも歌ってくれる完全にファンサービス仕様のパフォーマンスで、会場の全員で「ありのーままのー♪」と大合唱だ。ここ数年の日本で最も聴かれた英語曲にして恐らく最も歌われた曲でもある“Let It Go”を歌う場として、これほどのシチュエーションはなかっただろう。アンコールでは神田沙也加も花束を持って登場、ここ日本での「レリゴー」現象の総まとめ的なフィナーレだった。(粉川しの)

1. Defying Gravity
2. Don’t Rain On My Parade
3. Brave
4. I Stand
5. The Wizard And I
6. River
7. Love for Sale / Roxanne
8. There's No Business Like Show Business / Anything Goes / Everything's Coming Up Roses
9. Still I Can’t Be Still
10. Creep
11. Take Me or Leave Me
12. No Day But Today
13. Always Starting Over
14. For Good
15. Let It Go

En1. Child
En2. Tomorrow

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イディナ・メンゼルのジャパン・ツアーは本日6月5日、日本武道館で最終日を迎える。
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