ザ・ビートルズが音楽にもたらした革新とは? 英研究結果が論議を呼ぶ

ザ・ビートルズが音楽にもたらした革新とは? 英研究結果が論議を呼ぶ

音楽の傾向とその影響についての研究から、ザ・ビートルズやザ・ローリング・ストーンズらは必ずしも音楽を革新したわけではなく、これまでに存在していたパターンを踏襲したものだったことが指摘されている。

研究はロンドンの研究者らのグループによって行われたもので、その研究結果も王立学会の機関誌に先頃発表されたが、1960年代から2010年代にかけてのアメリカのポップ・チャートを調査対象とし、さまざまな音楽トレンドの出現とその勢力期間についての分析などを行ったという。それによれば、音楽には特に大きな変化を示した時期が3つあって、それがそれぞれ1964年、83年と91年だったことが判明したとザ・ガーディアン紙が伝えている。

この研究では、いわゆるザ・ブリティッシュ・インヴェイジョンと呼ばれ、ザ・ビートルズ、ザ・ローリング・ストーンズ、ザ・キンクス、ザ・フーらのイギリスのバンドがアメリカのチャートを席巻した60年代の現象について、特に音楽的な革新という意味では誇張され過ぎていると分析されている。音楽的にはこうしたバンドの演奏における、コード進行や音調など、さまざまな特徴はすでにそれ以前にアメリカで確立されたものだったと研究では指摘している。

それに対して、ヒップホップは1991年にチャートに登場してから、ポップ・ミュージックの形やスタイルにより大きな影響や衝撃をもたらしたと指摘していて、研究者たちはヒップホップがほかのどんな音楽スタイルよりも音楽の傾向を刷新するのに最大の寄与をもたらすことになったと結論付けている。研究に参加したロンドンのクイーン・メアリー大学のマシアス・マウチは次のように解説している。

「今回の研究で初めて、音楽レコーディングにおける音楽的な特徴や性格をこれほど大きなスケールで比較検討することができるようになったのです。この研究では、楽曲と正面から取り組んで、その成り立ちを計測し、その変化を観察していくことで、音楽専門家の指摘していることやわたしたち自身がすでに知っていること以上に踏み込んでいくこともできるのです」

「多くの人は音楽がどんどんひどくなっているという意見を表明していますが、わたしたちは今回の研究では特にそうした兆候を発見することはできませんでした。作曲面、あるいはチャートにおける音楽的要素から多様性が失われているというトレンドが音楽全体にあるとはいえません」

また、マウチ研究員は「ヒップホップのおかげでチャートは命拾いをした」とも解説している。

その一方で、リヴァプール大学でビートルズ学の教鞭を執っているマイク・ブロッケンは次のようにこの研究への疑問点を提示している。

「ポピュラー・ミュージックはこういうやり方では測れないものです。というのも、一般的な評価や受け、政治経済、ポピュラー・カルチャーなどの文脈などが欠落してしまっているからです。したがって、わたしとしては、おぞましいデータ分析を駆使した研究についてはすべて直感的に疑ってかかってみてしまうのです」

「今回の研究で行われている、音楽における形態やスタイルの分析というのはまるで参考にならないものです。ザ・ビートルズは大衆に向けて『コミュニケーションを試みた』ことが重要なことで、それがAメジャー・コードだったか、あるいはAマイナー・コードだったのかということにはさしたる違いもないのです。コードの形態や拍数にこだわるよりは、記号論的にアプローチした方がよっぽどわかることは多いのです」

「そもそもどんなにまともな音楽研究者でも、ビートルズの音楽が革新的だったというよりは、さまざまな音楽の寄せ集めだったということに同意するはずです。これは別に批判にはならないんですよ。ビートルズはわたしたちと同じように、いろんなものを聴いていて、その当然の結果としてそれに触発されていたんですよ」

なお、ポール・マッカートニーは先月の武道館公演でこれまで一度も演奏されたことのないビートルズ時代の"アナザー・ガール"を披露したことで話題を呼んだが、ポールは武道館公演について次のように語っていた。

「最初の時のことを思い出して、それから今日の素晴らしいお客さんと触れ合うことになって、感激したし、かなりぐっとくるものだったよ。ぼくたちにとっては本当にスリル満点のライヴだったし、日本でやったライヴでは最高だったとも思うし、49年経ってまた武道館をやれて嬉しかったよ。実際、クレイジーだったよ。最高に楽しかったね!」

(c) NME.COM / IPC Media 2015
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