イギー・ポップ、ジャーヴィス・コッカーに経済や音楽哲学を語る

イギー・ポップ、ジャーヴィス・コッカーに経済や音楽哲学を語る

イギー・ポップはジャーヴィス・コッカーのインタヴューに応じて、自身の経済哲学や人生哲学について語っている。

ジャーヴィスはここ1年ほどずっと番組DJを務めてきたBBCラジオの番組をリフレッシュ休暇のため休んでいて、そのピンチヒッターのDJをイギーが務めてきたが、ジャーヴィスが復帰するにあたってイギーをお払い箱にするわけにもいかないということで、イギーには新しく別な曜日に番組が用意されることが明らかになっている。

そんなイギーをねぎらうという形で対談というよりはほとんどジャーヴィスがイギーのお話を聞くという内容のインタヴューがガーディアン紙に掲載されているが、手始めにジャーヴィスがイギーにどうやって最新の音楽の動向を仕入れているのかと訊くと、イギーはニューヨーク・タイムズ紙、ザ・ガーディアン紙、それとマイアミ大学ラジオのプレイリスト、さらに自宅のあるマイアミのスウェットというレコード店の情報を参考にしていると答えている。

ラジオ番組をやっていて特に大変なのはヒップホップの扱いだとイギーは次のように語りながら、注目のアーティストにも触れている。

「ラジオでラップ・ミュージックをかけるのは本当に大変でさ、というのも放送禁止用語だらけだからなんだよ。だけど、ちゃんとかけられるアーティストもいて、その1人がジョーイ・バッドアスなんだよね。とにかく、名前が気に入ったよ。たまたまビデオを観て知ったんだけど、それまでさっぱり知らなかったんだ」

「(たまたまユーチューブで)ジョーイ・バッドアスのビデオを観るはめになって、ニューヨークのいかにも危ないゴミの散乱した路地でヤバそうな10代の連中が身体を上下に揺すってるんだよね。出演してる連中はみんなやせっぽちでさ、普通の男性以上のむきむきな身体を見せつける伝統的なラッパーとはルックスが違うんだよ。と思ったら、いかにもヒップホップのビデオでありそうな展開になって、この子たちが数台のSUVのヘッドライトで照らし出されるということになるんだけど、ところがだよ、このSUVがポルシェでもフェラーリでもなくてさ、全部シボレーなんだよね。俺は、いや、これは正しいよって思ったんだよね、っていうのは、アメリカじゃさ、ちょっとしたお金を掴むことに成功したらこういうことになるからなんだ。まずはこれを買うんだよ。とりあえず街に出て行ってシボレーの新車を買ってくるものなんだよ」

なお、イギーはジョーイ・バッドアスのサウンドについて、スティーヴ・ライヒやジョン・アダムス、フィリップ・グラスなどと一緒くたにして聴くとすごくいいと思うとも語っている。

その一方でジャーヴィスはかつてイギーがイギリスで行った講演で「アートにとって、それに付随するお金の詳細とはまったく無意味なものだ」と語ったことをさらに説明するように促していて、イギーは次のように語っている。

「たとえば、制作のためにどれだけお金を注ぎこんだか、あるいは準備しているかとか、そんなことはまるで関係ないんだ。そういうことは作品がどれだけいいかどうかっていうことにはまったく関係してこないんだよ。もちろん、日常的には俺たちの日々の暮らしを支配しているお金の仕組みがある一方で、世の中には砂漠で物々交換をして暮らしている人たちもいれば、ある時点まではボルシェヴィキ期に成立したマルクス主義の仕組みに支配されている人たちもかつてはいたわけなんだよね。それは結局、うまくいかなかったわけだけど、俺たちが西側諸国と呼んでいる圏内で20世紀の間に長い期間にわたって行われた修正資本主義とはマルクス主義のおかげで生まれたものだと言う人もいるんだよ。全員のためにいろんなものをただにしろとか、全員に平等を保障しろとか、全員のために医療制度を用意しろとか掲げる連中がほかにいたからこそ、資本主義者もちょっと頭を冷やさなければならなくなったんだよ。これにはなんか真理があるのかもしれないと思うよ」

また、イギーは自分の場合には音楽で金持ちになろうという意識はこれまで一度も持ったことがないと次のように語っている。

「やっぱり自分が現に手に入れているものは自分に見合ってるものだと俺は思うんだよね。たとえば、俺は『ドラムを叩いて金持ちになれるかも』って考えたことは一度もないんだよ。ただ、実際に俺が考えたのは『ドラムを叩いてなにかを作り出せば、それがかなりかっこいいものになることもあるかも』っていうことだったんだよね。それこそがまさに俺にとって死に物狂いでやるべき使命だったんだ。それは金を儲けるとか、不動産を手に入れるとか、そんなこととはまったく関係のないことだったんだ。そういうことは特に考えが及ばないことだったんだよ。だからといって、ほかの動機でやってるやつと較べて偉くもなんともないんだけどさ。でも、そのうち好き勝手ばっかりもやってられないということも教訓として学ぶんだけどね。とりあえず、なんか食えることが重要なんだっていう形でね。でも、まずはそういうことをあまり心配しないところから始めるべきだとは思うんだよね」

なお、ラジオDJというキャリアが板についてきてイギーの活動そのものの行方が心配でもあるがという問いには次のように答えている。

「自分でも妙な1年だったけど、その反動もきてるんだよね。だから、あるいいバンドと音楽をやっていく予定なんだ。イギリスのバンドで、グルーヴがとんでもなくやばいんだよ。先週初めて顔合わせをして、俺もほんとマジで嬉しかったから。だから、これをやるのと、自分の曲を書くのと、しばらくずっとやってこなかったストゥージズの曲をやろうと思ってるんだ。それが一つあって、それとまったく新しい音楽に取り組むのはまた別ものだからね、だから、俺に言えるのは、なんかいろいろ準備しているよってことだね」
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