ジューダス・プリースト、3年ぶりの帰還。日本武道館公演の模様を徹底レポート

ジューダス・プリースト、3年ぶりの帰還。日本武道館公演の模様を徹底レポート

デビュー40周年を迎えた昨年、通算17作目となるニュー・アルバム『贖罪の化身』をリリースし、現在3年ぶりのワールド・ツアー「Redeemer of Souls Tour」で来日中のジューダス・プリースト。

RO69では、昨日3月11日(水)に行われた日本武道館公演のオリジナル・レポート記事を公開しました。

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【ジューダス・プリースト @ 日本武道館】

ツアー活動が、まるで終焉を迎える気がしない。そんなライヴだった。フェアウェル・ワールド・ツアーとしてアナウンスされていた前回の「Epitaph Tour」から一転、昨夏には重厚にして王道のメタル・アルバム『贖罪の化身』(『Redeemer of Souls』)をUS6位に送り込み、そのアルバム・タイトルを冠したツアーの発表と共に、堂々ワールド・ツアーへの帰還を宣言したメタル・ゴッド=ジューダス・プリーストなのである。日本での日程は、追加公演として先に行われた東京・EX THEATER ROPPONGI(3/6)を皮切りに、大阪(3/7)、名古屋(3/9)と各地公演を経て、今回レポートするのは武道館公演。今後、ZEPP SAPPORO(3/13)が残されているので、そちらを楽しみにしている方は以下本文の閲覧にご注意を。

ドラマティックなギターのサウンドスケープで新作曲“Battle Cry”の一部がSEとして鳴り響き、一気に沸騰するような歓声とプリースト・コールを巻き起こす場内。いよいよ開演、と胸が高鳴るのだが……流れ出すのはAC/DC。あれ?と思っていると、機材トラブル発生という旨のアナウンスが入り、復旧を待ってあらためてSEから仕切り直す形のスタートだ。グレン・ティプトン(G)、リッチー・フォークナー(G)、イアン・ヒル(Ba)、スコット・トラヴィス(Dr)が登場して“Dragonaut”のイントロを切り出し、ステッキをついたロブ・ハルフォードが歌いながらヨタヨタと姿を見せる。衣装のチェーンを揺らしてゆっくり進む足取りは衰えを感じさせるものの、芯の強い歌声のトーンは上々で、ゴリゴリのメタル・チューンを乗りこなしてゆく。リッチーからグレンへとパスされるタッピングのリレーも鮮やかだ。

背景一杯のLEDスクリーン(スコットのドラム・セットの台座にもスクリーンが組み込まれている)にバンド・ロゴを映し出し、大振りなギター・リフと共に“Metal Gods”が降臨。ロブもさすがに往年のハイトーンは厳しいよな、と思っていたのだが、この曲の後半で「YOW!!!」とシャウト一発を放ってからは、驚くほどハイトーンが伸びてゆく。というか、ステッキも手放して次第に足取りも軽やかになってしまうのだ。手を振って「プリースト・イズ・バック!」と高らかに宣言する姿は、まさにヘヴィ・メタルを糧に何度でも立ち上がるプリーストを象徴するようだった。

この後、各時代の名曲と新作曲が入り乱れる形でステージは進む。情感溢れるメロディと豪快なグルーヴのエピック・メタルが時代を越えて“Victim of Changes”と“Halls of Valhalla”を繋ぐ。そういえば以前、アルバム音源の“Halls of Valhalla”にはロブが一生に一度の叫びを込めたと語っていたが、ステージでは“Victim of Changes”クライマックスの強烈なシャウトも問答無用に大歓声を攫っていた。晴れて新作制作にも携わったリッチーが率先してソロを弾きまくり、その間、ロブは1ラウンドずつを全力で戦い抜きながらコーナーに戻るようにステージ袖に引っ込んで束の間の休息を取る。ゾンビが街を徘徊するCGアニメーションの“March of the Damned”の後に、巨大な歯車とエンジン・ピストンが動き出す“Turbo Lover”で銀色のコートを纏ったロブが再登場するなど、ヴィジュアル演出を巧みに利用して、各時代の音楽性のギャップや、体力面での不安を埋めてゆくさまは極めて戦略的だ。

“Redeemer of Souls”を披露すると、「この特別な日に、俺たちを呼んでくれてありがとう」と、4年前の震災・津波被害に触れて被災者とすべての日本人を悼み、深く頭を下げるロブである。「さあ、お次は『ステンド・クラス』から“Beyond the Realms of Death”だ」と告げて、味わい深いテナー・ヴォーカルから爆発的なスクリームへと到達してみせる。今年リリースから30周年を迎えた『背徳の掟』(この3月にはアニヴァーサリー盤もリリース)からは、“Love Bites”やラメ衣装に着替えたロブ渾身の“Jawbreaker”もプレイされ、「Breaking the WHAT!?」「Law!!」のコール&レスポンスから傾れ込む“Breaking the Law”では、オーディエンスを奮い立たせるように歌声を誘う。グレン&リッチーと並んで上体をシェイクしてみせるロブの姿もご機嫌だ。そしてまたもやステージ袖に引っ込むと、激しく鳴り響くエグゾースト・ノートの中でハーレーを駆り、そのままステージ中央へと進んでステッキを振り翳しながら“Hell Bent for Leather”を披露するバイカーズ・スタイルのロブ。鉄板のパフォーマンスで、本編を締め括ってくれた。

オーディエンスによる“The Hellion”の雄々しいコーラスから“Electric Eye”へと突入するアンコールにおいても、ロブは練り歩きながら執拗にコール&レスポンスを求めてまだまだ元気。スコットが「もう一曲やるぞトーキョー!」とイントロの弾け飛ぶビートを繰り出す“Painkiller”は、このタイミングでこのヴォルテージを見せるのかという、最後の連続シャウトに至るまで完璧なパフォーマンスであった。ロブのこの発声を聴いて、血が滾らない人などいないだろう。さすがにこの大熱演でフィナーレか、と思われたが、ロブは「まだやりてえなあ。一緒に歌おうぜ」といった調子で“Defenders of the Faith”までがっつりと歌声を誘う。墓碑を打ち壊してなお前進し、終焉の始まり“Beginning of the End”をひた走るジューダス・プリースト。彼らにとって、ひとつの新作を生み出しツアーすることは、別れの物語よりも遥かにドラマティックだ。ロブは最後に、何度も「プリーストはまた帰って来るからな!」と告げて、去っていった。(小池宏和)

[SET LIST]

SE Battle Cry Intro

1. Dragonaut
2. Metal Gods
3. Devils Child
4. Victim of Changes
5. Halls of Valhalla
6. Love Bites
7. March of the Damned
8. Turbo Lover
9. Redeemer of Souls
10. Beyond the Realms of Death
11. Jawbreaker
12. Breaking the Law
13. Hell Bent for Leather

En1. The Hellion / Electric Eye
En2. You’ve Got Another Thing Comin'

En3. Painkiller
En4. Living After Midnight
En5. Defenders of the Faith

なお、「Redeemer of Souls Tour」のアジア日程は13日の札幌公演、16日のソウル公演を以って終了。その後4月からは南米、北米、ヨーロッパでの公演が予定されている。
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