クロスビー、スティルス&ナッシュ、20年ぶりの来日公演。ツアー2日目完全レポート

クロスビー、スティルス&ナッシュ、20年ぶりの来日公演。ツアー2日目完全レポート

昨年ファースト・アルバム『クロスビー、スティルス&ナッシュ』のリリースから45周年を迎えたクロスビー、スティルス&ナッシュ。1991年の初来日、95年の再来日に続き、クロスビー、スティルス&ナッシュとしてはおよそ20年ぶりの来日公演となるジャパン・ツアーが、3月5日(木)、6日(金)の東京公演を皮切りにスタートした。

RO69ではツアー2日目、3月6日(金)東京国際フォーラム公演のオリジナル・レポート記事を公開しました。

【クロスビー、スティルス&ナッシュ @ 東京国際フォーラム ホールA】

クロスビー、スティルス&ナッシュの、実に20年ぶりの来日公演である。筆者は91年、95年の過去2回のみの彼らの来日を観ていないので、今回のステージは「あの」CSNを、「あの」ウッドストックの人たちをついに観るのだという、まさにロックの伝説を目撃する機会だったと言っていい。ただ、会場を見渡せば50代、60代の原体験世代はさすがに多いが、筆者のような30代、40代の後追い世代もかなりの割合を占めている。CSNは間違いなくロックの伝説に連なるバンドではあるが、同時に彼らが60年代に鳴らしたメロディやハーモニーは、50年近く経った今もなおギター・ミュージックのベースとなっている。彼らは殿堂に棚上げされた存在ではなくて、2010年代にアクチュアリティを持った存在であるということ、それを強く感じたステージだった。

ほぼ定刻通りに会場は暗転し、大きな拍手に迎えられ3人とバック・バンドが登場する。1曲目は大名盤『デジャ・ヴ』のオープニングにならって“Carry On/Questions”だ。のっけから彼らの代名詞たるハーモニーが炸裂、スティーヴン・スティルスのハード・ギターも唸る。3人の立ち位置はステージ上手からデヴィッド・クロスビー、グラハム・ナッシュ、スティーヴン・スティルス、加えてバック・バンドとしてキーボードが2人、ギター、ベース、ドラムスの計8人が今回のバンド編成だ。「東京に来ることができて嬉しいよ」とナッシュ。そして彼のピアノの連打で“Chicago”、クロスビーの圧巻のソロ・ヴォーカルが響き渡る“Long Time Gone”へと、冒頭はスティルス、ナッシュ、クロスビーを1曲ずつフィーチャーした3曲が並んだ。この日のセットリストを改めて確認すると、すごく民主的と言うか、各自のメイン曲をほぼ均等にやっていることがわかる。

“Southern Cross”はスティルスがメイン・ヴォーカルを取る歌で、3人のアコギのフォーキーなアンサンブルも完璧だ。スティルスの声は3人の中で最も野太く素朴で、正直所々ヨレたりする瞬間もあるのだが、不思議と3人のコーラスになるとそのヨレ具合がまったく気にならなくなる。たとえば同じ3パート・コーラスでもクロスビーの古巣ザ・バーズのそれは、声質のレンジを限りなく狭く一方向に纏めていくことで生まれる美しさだが、CSNのコーラスは3人の声質の違い、放たれる方向のバラバラさをひっくるめて圧倒的な広がりへと変えていっているように感じる。

「これはチャンスとチョイスについての歌だ」とクロスビーが紹介して“Delta”へ。ポケットに手を突っ込み歌うクロスビーが格好良すぎる。続く“Don't Want Lies”はスティルスの新バンド、ザ・ライズが2013年に発表した楽曲で、グループの曲だったりソロの曲だったり、年代も含めて本当にバラエティに富んだセットだ。スティルスは3人の中では最もギタリストとしての見せ場が多く、ナッシュな歌と演奏が半々、そしてクロスビーは最もヴォーカリストとしての力量の凄さを見せつける場面が多い。

「ぼくは1週間東京にいるんだけど、この前すごいレストランに行ったんだ。ロボット・レストランっていうんだけど。すごくファニーだったよ」とナッシュ。そんな彼の“Our House”から“Déjà Vu”への流れは圧巻だった。ホワイト・ストライプスみたいなことになっている前半、ブルースハープで転調する中盤、そしてスティルスのギター・ソロでさらに表情を変え、後半はバック・バンドの各メンバーのインプロも交えてのジャム・アウトロへ。その畳み掛けるような展開に、客席からは何度もさざ波のようなどよめきが起こる。そしてバッファロー・スプリングフィールドの“Bluebird”へ。ここはもちろんスティルスの独壇場で、ついには会場はスタンディング・オベーションとなった。

15分の休憩を挟み、第二部が始まる。前日の公演ではこの2部にジャクソン・ブラウンが登場して“The Crow On The Cradle”を共演したそうだが(うわーそれも観たかった!)、この日はブラウンは登場せず、3人のソロ曲や新曲を中心とした構成で、一部よりもアコースティックで親密なナンバーが並ぶ。ボブ・ディランのカヴァー“Girl From The North Country”では、スティルスがディランの歌モノマネを披露し、会場の笑いを誘う一幕もあった。「僕らは900曲近い曲を書いてきたし、今でもずっと書き続けているんだ」とナッシュが言い、彼の新曲“Myself At Last”へ。バックのギタリストとふたりで向き合いセッションとなる。余談だが、今回のツアーのバック・バンドのギタリストであるシェーン・フォンテインは、ピーター・バラカン氏の実の弟さんだそうだ。

そんなナッシュに続いてひとりステージに立つのがクロスビーで、こちらも新曲の“What Makes It So”を披露する。このナッシュ、クロスビーのソロ新曲から彼ら2人で歌う往年の“Guinnevere”への流れが素晴らしく、大迫力の輪唱ヴォーカルには思わず鳥肌が立つ。「ワン・モア・ニュー・ソング」と言ってスティルスがソロ新曲“Somebody Home”をやったところで3人が再び揃い、CSNとしての2013年の新曲“Burning For The Buddha”へ。この曲は中国によるチベット弾圧をモチーフとしたポリティカルな歌で、その内容に負けず劣らずハードでアグレッシヴなパフォーマンスだ。“Almost Cut My Hair”はクロスビーのヴォーカルがとんでもないド迫力で、一段階、さらに一段階と限界を突き破っていく。個人的に彼はバーズ時代の実績もあって美しく繊細なテナー・ヴォーカルの人というイメージだったのだが、こんなにパワフルで、いい意味で力でねじ伏せ圧倒していくような歌唱の人でもあったのか、という驚きがあった。ここで2度目のスタンディング・オベーションとなる。

転調につぐ転調でさらにクライマックスを煽る“Wooden Ships”、スティルスが勢い良く弾き出したリフに乗って舞い上がる“Love the One You're With”と、本編はジョイフルなエンディング。そしてアンコールは名曲中の名曲“Teach Your Children”!総立ちとなった会場に手拍子と大合唱が響く。全23曲、3時間近いパフォーマンスの中で、60年代から2010年代までの様々な時期の様々なフォーマットの曲が入り乱れるという、その充実の内容と彼らの飽くなき表現への希求に、どこまでも感動させられた一夜だった。(粉川しの)

<第1部>
01. Carry On/Questions
02. Chicago
03. Long Time Gone
04. Southern Cross
05. Just A Song Before I Go
06. Delta
07. Don't Want Lies
08. Marrakesh Express
09. To the Last Whale:Critical Mass / Wind On The Water
10. Our House
11. Déjà Vu
12. Bluebird
 
<第2部>
13. Helplessly Hoping
14. Girl From The North Country
15. Myself At Last
16. What Makes It So
17. Guinnevere
18. Somebody Home
19. Burning For The Buddha
20. Almost Cut My Hair
21. Wooden Ships
22. Love the One You're With

En1. Teach Your Children

なおツアーはこの後、大阪、福岡での公演を経て、3月12日(木)名古屋で最終日を迎える。

●ツアー情報
【大阪】
2015年3月9日(月) フェスティバルホール 19:00開演

【福岡】
2015年3月10日(火) 福岡サンパレス 19:00開演

【名古屋】
2015年3月12日(木) 名古屋市公会堂 19:00開演

料金:S¥13,000 A¥12,000(座席指定・税込)
(問)ウドー音楽事務所 03-3402-5999 udo.jp

更なる詳細は以下のサイトで御確認下さい。
http://www.udo.jp/Artists/CSN/index.html
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