世界で最も生活水準の高い北欧で、世界で最もメタルが好まれるわけとは?

世界で最も生活水準の高い北欧で、世界で最もメタルが好まれるわけとは?

19世紀から刊行が続くアメリカの評論誌ジ・アトランティックのウェブサイトで、さまざまなテーマのリサーチや研究を行っているシティラブは、メタルは生活の質が高い国ほど支持される傾向が強いという解析結果を報告している。

この研究は、2年前に行われたメタル・バンドについてのあるデータ解析から始まったもの。当時、世界各地の人口10万人あたりのバンド数を統計にとったところ、北欧諸国の数が圧倒的に突出していることがわかったという。これをさらに突っ込んでみたのが今回の研究で、この研究を著したリチャード・フロリダは次のように説明している。

「この分布図をわたしが2012年に作成した後、ヘヴィ・メタルはなぜこの北方の地でこれほどまで浸透することになったのかということについて、さまざまなコメンテーターがそれぞれの持論を展開することになった。たとえば、メタルのエモーショナルな暗さは北欧の長く寒い冬を映し出すものだという説もあった。あるいはメタルの持つ怒りや暴力性はキリスト教が伝播する以前の北欧のヴァイキングやベルセルク伝説と呼応するものなのだという説もあった。あるコメンテーターは、メタルは世界各地のアルコール依存症の高さを反映するものだとも言っていた。

実際、マーク・エイメスが10年前に発表した『ブラック・メタル・ネイション:ノルウェーのニートとリチャード・パールの共通点とは?』という論文で指摘しているように、メタルとは北欧の表面的には申し分のない社会体制の水面下で、実はふつふつと熱を高めているマグマのような『思春期的イド』そのものを反映しているものなのかもしれないのだ。エイメスは次のように指摘していた。

『ノルウェーとは完璧にユーモアの介在しない社会であるだけでなく(略)、深く抑圧的な社会でもあり、それはみてくれは文句のつけようのない、他者にやさしそうで、敬虔で、社会民主主義的だという意味で抑圧的なのだ』

こうした社会でメタラーは『退屈さ』を『深刻な苦しみ』として経験しているのではないかとエイメスは推論している。さらに、そう考えていくと、メタルとは豊かな社会の産物であって、恵まれた富裕層にとってのサブカルチャー的な反動を表現したものなのかもしれないとエイメスは指摘していた。

また、国別にみていくと、国民一人あたりに対するメタル・バンドの多さは、国民一人あたりの経済支出額、クリエイティヴなレベル、起業の多さ、大卒の多さ、人としての成熟度や福利厚生面や人生一般に対する満足度などが高ければ高いほど、増えていくという。

つまり、どういうことかというと、メタルは確かに社会から疎外された労働者階級の男性の一部から好まれる音楽ではあるかもしれないが、その一方で社会的に最も先進的で、寛容で、教養の行き届いた諸国で、最大の人気を誇る音楽でもあるということなのだ」
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