デイヴ・グロール、ロックの殿堂入り式典でのニルヴァーナのパフォーマンス裏話を語る

デイヴ・グロール、ロックの殿堂入り式典でのニルヴァーナのパフォーマンス裏話を語る

4月10日にロックンロール名誉の殿堂入りを果たし、バンドとしても20年ぶりの演奏を式典パフォーマンスで行ったニルヴァーナだが、デイヴ・グロールはパフォーマンスや式典の舞台裏について語っている。

ローリング・ストーン誌の取材に答えてデイヴは昨年の式典で、人からいよいよだなと声をかけられてデビュー25周年も迎えて殿堂入りの対象になることに気がついたと説明しているが、殿堂入りが決まったことは、ちょうどポール・マッカートニーとのコラボレーション曲"カット・ミー・サム・スラック"がグラミー賞の候補に残ったのが明らかになった頃だったという。ただ、殿堂入りして嬉しかったのは確かだが、式典がカートの自殺20年からわずか1週間足らずに開催されることを知って不安な気持ちにもなったという。そこでデイヴは「だったら、カートへのトリビュートにしちゃえばいいじゃないか」と思い直すことにしたと説明している。

また、当初はパフォーマンスをやることなどまったく考えてもいなくて、開催の2か月前になってようやくそんな話をかつてのメンバーの間でし始めたというが、単純にありえないと思っていたからだとデイヴは説明していて、「音楽的にはちょっと準備が必要だけど、心の準備はものすごく必要なんだよ」と語っている。

しかし、いざパフォーマンスに向けて準備し始めるとなると、誰が歌うかということが問題になり、一線級の男性アーティスト数人に声をかけていったが誰もいい返事をくれず「これのヘヴィーさに不安になっちゃう人もいたんだと思うよ」とデイヴは説明している。結局、最初に話に乗ってくれたのが「一緒にやるのにほかにこれ以上いい人はいない」というジョーン・ジェットだった。その後、デイヴとクリス・ノヴォセリックはP・J・ハーヴェイに話を持って行ったという。

「カートはPJがほんと大好きだったからね。『イン・ユーテロ』の"ミルク・イット"をPJと一緒にやれたらってずっとみんなで思ってたくらいでさ。"ミルク・イット"はかなりねじくれた曲でPJの『リッド・オブ・ミー』に入ってそうな曲なんだよ。これもまたスティーヴ・アルビニがプロデューサーをやってるアルバムなんだけど。本当によく合うんじゃないかと思ったんだけど、日程の都合が合わなかったんだよ」

しかし、PJと接触したのをきっかけに今回のパフォーマンスの歌い手は女性だけにするべきだと閃いたそうで、その心境をデイヴは次のように語っている。

「このすごい女性アーティストらにニルヴァーナの曲を歌って貰って、それでロックンロール名誉の殿堂をお客さんでいっぱいにできたら、俺たちなりの革命にもなるなって思ってね。それにライヴにもまったく新しい次元をもたらしてくれたし。中身と深みが出たからね、ただ讃えるだけのものにはならずに済んだんだ。もっと未来を目指すものになったよね」

出演順にも時代的な流れがあるとデイヴは次のように語っている。

「ザ・ランナウェイズを結成したジョーン・ジェットは女性のためにロックンロールを変革したんだよ。ソニック・ユースのキム・ゴードンはあらかじめマッチョで男性原理が支配的だったアンダーグラウンド・パンク・シーンで一筋の光となった存在なんだ。セント・ヴィンセントはすごいミュージシャンで、今現在表現の領域をどんどん押し広げてくれてる人だよね。そしてロードはソングライター、パフォーマー、歌い手としてこの先凄い将来を持っている人なんだよ」

また、リハーサルで実際に音を合わせてみた時の感触をデイヴは次のように振り返っている。

「1日目で本当にやってよかったと思えたよ。俺なんか、『ああ、そうだった! そう言えば、ニルヴァーナってこういう音だったし、だからみんな一目置いてくれたんだよね。思い出したぜ! みんなが本を読んだり、映画を見たり、ドキュメンタリーを観てそれだけでほめてくれてるわけじゃなかったんだな!』って興奮したよ。部屋の中で響くあの音がすごかったんだよ。それがみんなを『なんだ、これ?』って思わせてたんだ。それをまた感じてほんとに最高だったよ」

実際のパフォーマンスについてデイヴは次のように振り返っている。

「あんまりよく憶えてないんだけど、ドラムはもう叩きまくったからな。全体が完璧にこうなってほしいっていうものになってくれたよ。ヘヴィーな一夜だったし、みんなピリピリしてたし、だから、終わった時にはみんなほっとしたよ。賞の式典があって、トロフィー貰いましたっていうこと以上のものだったからね。俺たちにとっては、個人的に、それに気持ちの問題としてすごい大事件だったんだから」

その一方で殿堂入りセレモニーのコートニーのスピーチについてデイヴは次のように語っている。

「(この日、居合わせた人たちはみな家族だと語ったコートニーのスピーチについて)コートニーの言う通りだよ。どんなことがあっても、俺たちは家族なんだ。どんなことがあったとしても、愛し合ってるんだよ。なんか説明文とか写真とか、そんなものよりずっと大きなものなんだ。リアルなんだよ。だから、再会となったわけでさ、みんなカートのためにあそこに集ったんだよ。素晴らしい一夜だったね。ほんといい思いをさせてもらったよ」

式典後にはニューヨークのクラブでディア・ティックのジョン・マッコーリーも交えて朝までライヴに興じたというが、残されたニルヴァーナの面々での今後の活動の可能性についてデイヴは次のように語っている。

「あの晩のことはもう二度とこんな機会はないというものとしてやったことだからね。だから、あんなに力強くて、美しくて、意味のあるものになったんだよ。もう二度と起きないようなことかもしれないから、本当にみんなでありがたく思ってるよ。それに最高に楽しかったから」
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