マキシマム ザ ホルモン@Zepp Tokyo

マキシマム ザ ホルモン@Zepp Tokyo - pics by 浜野カズシ、たもりみすず pics by 浜野カズシ、たもりみすず
いやぁ、すごい。お腹いっぱい。なのに喰い終わった先から早速おかわりしたくなるこの感覚は何だろう。過剰で、ヘヴィで、破壊的。だけどキャッチーなアイデアと計算に満ち満ちた、それでいてエンターテインメントに洗練されたステージだった。昨年9月から丸半年かけて全国各地をサーキットしてきた「マキシマム ザ ホルモン“予襲復讐”ツアー」の55本目にして、セミ・ファイナルにあたるZepp Tokyo公演。旧知の仲間や意外な相手を次々と迎え撃った対バンツアーのフィナーレに相応しく、サウンド/パフォーマンス/マインドの全てにおいて型破りなポテンシャルを発揮していくホルモンの姿が、そこにはあった。

■G-FREAK FACTORY
G-FREAK FACTORY、ゴールデンボンバーの2組を迎えての異種格闘技戦となったこの日。最初に登場したのは群馬出身の4ピース・G-FREAK FACTORY。スローテンポのセッションを経て1曲目に突入すると、原田季征(G)の殺傷力あるギターフレーズが炸裂。さらに前のめりなレゲエ・ビートに乗せて、メラメラと燃え上がる炎のようなグルーヴが場内を駆け巡っていく。一転して“日はまだ高く”などのアッパー・チューンでは、「Say Ho!」のコール&レスポンスを展開したり、スリリングなソロ・リレーを展開したりと熟練のパフォーマンスでハッピーなヴァイブスを届けていく4人。さすがホルモンと同期、15年以上のキャリアを持つバンドだけあって、その演奏スキルもオーディエンスのアゲ方も堂に入っている。何より圧巻だったのは、「音楽は非力ではあるが無力ではない!」という茂木洋晃(Vo)の絶叫から雪崩れ込んだ“島生民”。現代社会の闇を膨大なリリックで暴きながらエモーショナルに高揚していく音塊は、G-FREAK FACTORYが掲げる不屈のメッセージとして聴く者の心にしっかりと刻み込まれたと思う。最後は“EVEN”で場内に爽快な風を吹かせてフィニッシュ。4人の闘志が沸々と燃え上がっているような、熱のこもったアクトだった。

■ゴールデンボンバー
“Dance My Generation”でフロアを激しく揺さぶった後、「一言いいですか。男が多い!」と告げたのはゴールデンボンバーの鬼龍院翔(Vo-karu)。「僕ら普段はナヨナヨしたバンドで、モッシュやダイブを経験したことがございません。すみません!」(鬼龍院)、「ホルモンのライヴで舐めたことやったらぶっ殺すぞと思ってるんでしょ? なので、もし僕らのライヴがヌルいと思ったら卵とか投げつけてくれても結構なので!」(歌広場淳・Be-su)と、ひたすら腰の低いMCを繰り出しながら完全アウェイな空気を笑いでかき回していく。2曲目“抱きしめてシュヴァルツ”では喜矢武豊(Gita-)がギターソロならぬ一人シャンプーを披露したり、樽美酒研二(Doramu)が一人シンクロナイズドスイミングを披露したりと最早やりたい放題。だけど、タブーをあっけらかんと突き破りながら未曾有のエンターテインメントを築いていく彼らの姿勢には、どこかホルモンに通じるものを感じる。何より、激しく頭を振り回しながらキレのあるダンスを披露していく4人の姿には、たとえ楽器を演奏していなくとも胸を熱くさせられるものがあった。ラスト“女々しくて”では、フロアの猛者たちが次々とダイブするというこの日しか観られない光景も! 終演後に響きわたった野太い歓声が、ライヴの圧勝感を何よりも物語っていた。

■マキシマム ザ ホルモン
マキシマム ザ ホルモン@Zepp Tokyo
そしてトリのホルモン。大歓声に迎えられての登場シーンから只ならぬ予感が立ち込めていたのだが、マキシマムザ亮君の柔らかなギターフレーズとナヲの甘いヴォーカルで幕を開けた1曲目の“予襲復讐”で、さらにブッ飛ばされた。もう、すごい演奏。すごいテンション。ツアー初日の八王子MATCH VOX公演も観たのだが、そのとき以上にタイトに組み上がった4人の音と声が、凄まじい勢いでフロアに押し寄せてくる。一糸乱れぬシンガロングやヘッドバンキングで応えるオーディエンスのテンションも尋常じゃないもので、半年間のツアーを経て、最新アルバム『予襲復讐』がメンバーとリスナーの間で完全に血肉化されていることを如実に物語っていく。“ビューティー殺シアム”を一心不乱に叩きつけ、“鬱くしき人々のうた”を高速BPMで駆け抜けた後は、「ちょっと待って、いきなり楽しいんですけど」と告げるナヲ。「今日でセミ・ファイナルだけど、もう一周ぐらい周れるんだけど。ってか、むしろ周りたい!」と、いきなり中学生も真っ青の(?)バケモノ級のエネルギーを炸裂させていくのであった。

マキシマム ザ ホルモン@Zepp Tokyo
その後も、1曲ごとに興奮の連続。とてつもないスケールでブチかまされた“maximum the hormone”では上ちゃん人形が登場し、“「F」”“便所サンダルダンス”ではナヲの爆裂ビートと上ちゃんの屈強なベースプレイが炸裂。かと思えば、ナヲがステージ前方でキュートに歌い踊った“え・い・り・あ・ん”、ミラーボールの閃光が場内を七色に染め上げた“ビキニ・スポーツ・ポンチン”で狂騒的なダンスホールを創り上げる。社会への皮肉や怒りをノリツッコミを交えながら露わにしていくダイスケはんとナヲのトークも最高で、その緩急の差が激しすぎる展開にフロアの熱気は上昇するばかり。“ロックお礼参り~3コードでおまえフルボッコ~”からラウドチューン連打に突入すると、柵でブロック分けされているZepp Tokyoのフロア特性を逆手に取ってサークル・モッシュならぬスクエア・モッシュをオーディエンスに強いたり、ステージに運び込まれたおにぎりをメンバー4人で頬張りエネルギーチャージしてから演奏に入ったりと、悪ノリ感満載のステージで汗と笑いにまみれたフロアの歓喜を突き上げていくのであった。そして「麺カタこってり、ヤッター!」と恋のおまじないを慣行してからの“恋のスペルマ”で本編フィニッシュ!

マキシマム ザ ホルモン@Zepp Tokyo
アンコールに入っても悪ノリムードは留まることなく、まずは学生服姿のナヲ/上ちゃん/ダイスケはんによる学生コントを披露。そのまま“中2ザビーム”をレーザービームが飛び交う場内に叩きつけると、“恋のメガラバ”でアッパーに爆発。そのまま大ラス“握れっっ!!”に突入したかと思いきや、「まだまだパワーが足りん。威勢のいい男子、ここに上がってこい! でも包茎男子、先着10名のみやー!」と演奏をストップして呼びかけるダイスケはん。我こそはという男子が続々とステージに上がり、男子メンバーによる包茎チェックを経て「東京包茎ボーイズ」がめでたく結成されると、再び“握れっっ!!”へ。曲終盤で包茎ボーイズたちが次々とフロアにダイブして、尋常じゃないほどの開放的なエネルギーが会場全体に満ち満ちたところで、約2時間におよぶステージは大団円を迎えたのであった。

終演後の人ごみで、「ちょっと怖かったけどダイブしちゃった。したらすげぇ楽しかった!」という声が近くから聞こえてきた。声の主を確認すれば、およそダイブとは無縁そうな華奢な男子(失礼!)。でも、これこそがホルモンのライヴなんだと思う。普段の自分を突き破って全身で衝動を剥き出しにすること。それにより日々の鬱憤を解き放ち、今を生きる喜びを全身で味わうこと。その目的に向かってどこまでも貪欲だからこそ、ホルモンのライヴは過剰で、破壊的で、至上のエンターテインメントであり続けるし、それを求めてやまない人々たちの居場所であり続けるんだと思う。その必然性を身をもって実感させてくれた最高の一夜。この後はガガガSPとの東北ツアーも控えているし、まだまだその動向から目が離せない。(齋藤美穂)

セットリスト(マキシマム ザ ホルモンのみ)
1. 予襲復讐
2. ビューティー殺シアム
3. 鬱くしきOP~月の爆撃機~
4. 鬱くしき人々のうた
5. maximum the hormone
6. 「F」
7. 便所サンダルダンス
8. え・い・り・あ・ん
9. ビキニ・スポーツ・ポンチン
10. アンビリーバボー!~スヲミンツ ホケレイロ ミフエホ~
11. 絶望ビリー
12. ロックお礼参り~3コードでおまえフルボッコ~
13. メス豚のケツにビンタ(キックも)
14. 糞ブレイキン脳ブレイキン・リリィー
15. ぶっ生き返す!!
16. 恋のスペルマ
アンコール
17. 中2ザビーム
18. 恋のメガラバ
19. 握れっっ!!
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