RADWIMPS @ 横浜アリーナ

RADWIMPS @ 横浜アリーナ
RADWIMPS、凄い! バンドとは生き物のように進化していくものだと思うけど、こんなにも生々しく鮮やかに「ネクスト・レヴェル」を提示できるバンドが、今のシーンにどれだけいようか。しかも、すでに時代を引っ張るバンドとしての地位を確立し、黙っていてもアリーナクラスのライヴを即完売させてしまうほどの人気を誇る彼らが、それを毅然とやってのけたのである。これは凄いとしか言えないだろう。昨年12月11日リリースの7thアルバム『×と○と罪と』を引っ提げた全国ツアー「RADWIMPS GRAND PRIX 2014 実況生中継 ~会心の一撃編~」の中盤戦となる、横浜アリーナ2DAYSの2日目。彼らのホームグラウンドとも言えるこの場所で、そんなバンドとしての恐るべきポテンシャルの高さを、彼らは高らかに見せつけてくれた。

RADWIMPS @ 横浜アリーナ
地方のライヴハウスを含む大小様々な規模の会場で行われる「会心の一撃編」と、韓国/台湾/香港/シンガポールでの海外公演を含むアリーナ/スタジアム級の会場を中心とした「パーフェクトドリーマーズ編」の二部構成から成る、このツアー。7月20日のファイナルまでツアーは続くのでセットリストなどの詳細は明かせないが、総じて言えば、彼らのライヴバンドとしての大きな進化が、かつてなく伸び伸びと発揮されたアクトだった。思えば、最新アルバムの音源を聴いただけでもバンドの大きな変化を感じ取ることはできた。2ギター/ベース/ドラムという従来の4ピースのフォーマットに捉われず、ノイズからアコースティックまであらゆる音を積極的に取り入れたヴァラエティ豊かな楽曲群。音楽的な新しさに満ちていて、だからこそ決して揺らぐことないRADWIMPSならではの表現理念がかつてなくハッキリと透けて見えるという恐るべきマジックが、このアルバムでは発生していた。それ故に、このチャレンジングな作品がライヴという生の場でいかに表現されるのか全く予想がつかなかったのも事実。しかし、そんな期待と不安の入り混じる感情を、彼らはツアー13本目となる横浜アリーナのステージで軽やかに裏切ってくれた。

ステージ両脇のビジョンにアルバムのアートワークが映し出され、満場のハンドクラップが響きわたる中、幕を開けたオープニング。1曲目に雪崩れ込むなり眩い光とレーザー光線が飛び交い、早くも1点の曇りもない巨大な歓喜が爆発する。最初のMCで「ヤベェなヤベェなヤベェな、これ! 今日ファイナルのつもりでやるからさ。それぐらいこの場所が好きだから、みんなもそのつもりでついて来てくれるかい? 世界一幸せな場所にしよう!」と告げたのは、真っ白な衣装に身を包んだ野田洋次郎(Vo/G)。その言葉通り、全力で音を鳴らすメンバーと全身で音を浴びるオーディエンスとが互いに熱を届け合いながら、場内に生まれた幸福の輪を1曲ごとにじわじわと広げていくのであった。

RADWIMPS @ 横浜アリーナ
何より、そのサウンドの豊かさといったら! タイトなアンサンブルと野田の高速リリックがスリリングに並走し、鍛え抜かれた一枚岩のサウンドをダイナミックに見せつけた4ピース・ギターロック“DRAMA GRAND PRIX”。武田祐介(B)が叩き出すスティール・パンの音色と桑原彰(G)の丸みを帯びたギターフレーズの上で、ピアノを弾きながらの野田のソウルフルな歌声が響きわたった“Tummy”。同期マシンで作り上げた打ち込みのサウンド上で山口智史(Dr)が奏でるマリンバの音色が愛嬌たっぷりに鳴り響く“パーフェクトベイビー”では、「なんかリズムが気持ち悪いから、もう一回最初からやってもいいですか?」と演奏を中断して仕切り直すシーンもあったけど、そんな部分も含めて、持てる力のすべてを注ぎ込みながらクリエイティヴな音を生み出していく4人の高い意識とチームワークの固さには、思わず胸が熱くさせられる。現メンバーになってから今年で10年、深い信頼関係とメンバー個々の真摯な努力でバンドを成長させてきたRADWIMPS。その重みを物語るように、友情の尊さを丹念に綴った“リユニオン”のアコースティックのサウンドも豊潤に鳴っていたように思う。

RADWIMPS @ 横浜アリーナ
そして、「明日、声出なくてもいいと思っているんだ。必死でついてこいよ!」というアジテーションから突入した“実況中継”。仏様と神様の大ゲンカという壮大なドラマを、ハイブリッドなミクスチャー・サウンド/天上界と人間界をスピーディーに活写していくリリック/イメージを具現化したアニメーションという三位一体で描いてしまう手腕には、もう圧倒されるばかりだった。その後も、野田が巧みなマエストロっぷりで緊張感あふれるジャムセッションを操ってみせたり、武田と桑原がドラムセットの両脇に立ってハイハットを叩きながら山口のドラミングに加勢してみたりと、ハイライトと呼べるようなパフォーマンスの連続。サウンドのクオリティはもとより、こういう魅せるスキルも格段にアップしていることも、彼らがシーンのトップを走り続けられている所以だろう。本当に凄いバンドだ、RADWIMPSは。

RADWIMPS @ 横浜アリーナ
「いま幸せだから、もっと遠くまで行こうぜ」「超楽しいです。嬉しいね、楽しいね」「ヤバい、こんな時間が一生続いたらいいのに」と、ライヴ中に何度も喜びを爆発させていた野田。こういう発言自体はRADWIMPSのライヴにあって珍しいものではないけれど、この日は、いつになく重みを持っていたような気がする。それだけ、新たなオモチャを手にした子供のように自由奔放な音を鳴らしていく4人の姿には、親密で、生き生きとしたポジティヴィティにあふれていたのだ。ライヴ終盤には「残り4曲です」の言葉に「えー!」という声が轟くフロアに向けて、「今日が終わらないと、また会えないじゃん。これからも『まだ終わって欲しくないな』っていう時間や楽しい時間をなるべく多く体験することで、みんななりの幸せを掴みとってほしいなと思います」と告げた野田。本編ラストの曲の前では、「こんだけの人数の人が嫌なことを嫌だって言えるようになったら、あっという間に世界は変わるんじゃないかと本気で思っていて。だから明日から素敵な世界をはじめませんか?」という呼びかけで最後のMCを締め括った。その音だけでなく、言葉とパフォーマンスのすべてで世界をポジティヴに変えていく敢然たる覚悟を示したRADWIMPS。その強く温かなヴァイブスが、まだまだ続くツアーの中で全国各地に伝播していくことを、切に願う。(齋藤美穂)
公式SNSアカウントをフォローする

人気記事

最新ブログ

フォローする