スガ シカオ @ 中野サンプラザ

スガ シカオ @ 中野サンプラザ - All pics by 新家敏之All pics by 新家敏之
2011年秋にオフィスオーガスタから独立、以来インディーズで音楽活動を行ってきたスガ シカオ。その集大成にして、次なる挑戦への布石となるに相応しいアクトだった。デビューからちょうど17年目という記念すべきに日に行われた、「Suga Shikao Hitori Suger Tour 2014」ファイナルとなる中野サンプラザ2DAYSの1日目。“17th Anniversary Premium Adult Night”と釘打たれ、「ライヴハウスを卒業した大人たちに贈るプレミアム・アダルト・ナイトへようこそ! 皆さんご自由にライヴを楽しんで頂ければと思いますし、がっつりシートにうずくまって……でも寝てもらったら困るんだけど(笑)、自分の世界に入っていただければと思います」とスガ シカオ本人も言うところのステージは、“サナギ”のどっしりとしたリズムで静かに幕を開けた。

スガ シカオ @ 中野サンプラザ
そのタイトル通り、「スガ シカオがひとりでライヴをやり切る」をコンセプトに、弾き語りのアコースティック・スタイルで行われるこのツアー。バンド編成での「FUNK FIRE」ツアーと並行して定期開催されているツアーとして、ファンにはお馴染みのシリーズだ。とはいえ同期ものの機材を駆使して生み出されるサウンドは、ダイナミックそのもの。2曲目“アイタイ”では早くもDJセットを用いたアタック感の強い電子ビートが鳴り響き、場内の空気をビリビリと震わせていく。ちょうど1年前のデビュー16周年記念日にもここ中野サンプラザで同様のライヴを行っているせいか、お客さんの様子も実にリラックスしたもの。着席スタイルでありながら、思い思いにサウンドに身を委ねて、じわじわ高揚していくお客さんのテンションが手に取るように伝わってくる。

スガ シカオ @ 中野サンプラザ
先述のMCでひとしきり客席を笑わせた後は、ヴァイオリン/ビオラ/チェロ/コントラバスから成る4人のストリングス隊が登場。“僕たちの日々”では3拍子の静謐なアンサンブルを、“Progress”では叫びにも似たスガ シカオの歌声とともに狂おしいエモーションを響かせる弦楽四重奏によって、豊潤かつドラマティックな風景が描かれる。ここで一旦ストリングス隊が引っ込むと、ステージにひとり残ったスガ シカオによる機材デモンストレーションがスタート。DJセットや同期マシンを用いた実験的なサウンドが次々と生み出され、場内はさながらスガ シカオのプライベート・スタジオに迷い込んだかのようなムードに包まれる……が、そんなアットホームな雰囲気から一転、“夜明けまえ”“風なぎ”を経て、ステージ背景に大きな月の映像が投影される中プレイされた“黄金の月”で一気に宇宙へと上り詰めてしまう展開はさすが。聴き手の心の深遠に寄り添う歌と、うっとりした詩情をともなうメロディによって幻想的かつ壮大なスケール感を描き出すスガ シカオの楽曲の類稀なるパワーが、そこでは十二分に発揮されていた。

スガ シカオ @ 中野サンプラザ
1月15日にニュー・アルバム『ACOUSTIC SOUL』を配信限定でリリースしたスガ シカオ。「このアルバムをもってインディー活動にひとつの区切りをつけて、春からもう一度メジャーで勝負をかけようと思っています」という宣誓の後は、その最新アルバム収録曲を立て続けに披露していく。鋭利なギター・リフが掻き鳴らされる“見る前に跳べ.com”にしろ、ちょっぴりエロティックなファンク・サウンドが炸裂する“ハダカハダカ”にしろ、ほのぼのとした歌心が届けられる“航空灯”にしろ、どこか原始的で生々しい響きを持ったもの。初期衝動を改めて解き放ったようなサウンドは、インディー活動に蹴りをつけて再びメジャーでの挑戦に乗り出そうとするスガ シカオの決意をダイレクトに表現しているように思える。そして映画『オー!ファーザー』の主題歌となった新曲“LIFE”へ。アコースティックの音色に乗って届けられる歌とメロディは、メジャーでの再スタートを飾るに相応しいポジティヴで力強いものだった。

“19才”で幕を開けた終盤は、エレクトロニカ全開の未曾有のダンス天国へ! 客席総立ちとなっての“午後のパレード”で一糸乱れぬシンガロングが発生させたかと思いきや、DJセットを操りながらノンストップで繋げた“コノユビトマレ”“赤い実”“Re:you”の3連発で本編終了。ボトムの効いた打ち込みとリバーブがかったギター音が濃密なファンクネスを広げる中、透明な歌声がどこまでも伸びていくスガ シカオならではの煌びやかな享楽空間を生み出して圧巻のフィナーレを迎えた。

スガ シカオ @ 中野サンプラザ
アンコールでは、まずはストリングス隊とともに“情熱の人生の間”“フォノスコープ”の2曲を披露。ストリングス隊が退場した後、「気づいたら今日でデビュー17年。なんか変な気分です。17年も続けようと思ってやっていたら、ここまで続けられなかっただろうな。このまま20周年に向けて後ろを見ずにどんどんやっていきたいと思います。5月には先ほど披露した新曲もリリースされてメジャーで面白いことをやっていきたいと思いますので、これからもよろしくお願いします」という最後の挨拶から弾き語りでの“愛について”へ――ひとり舞台である故に、歌とパフォーマンスの両方で聴き手を自らの世界に引き込むスガ シカオのポテンシャルの高さを改めて痛感できたし、何より今後への期待感が否応なしに募ってしまうようなパワフルな夜だった。デビューから17年。自らの信じる音を、自らの信じるスタイルで敢然と鳴らし続けてきたスガ シカオ。その気高くも不屈の精神が、再びのメジャーの舞台で鮮やかに花開くことを、今は楽しみに待ちたい。(齋藤美穂)

セットリスト
1. サナギ
2. アイタイ
3. Festival
4. 傷口
5. ぼくたちの日々
6. Progress
7. 夜明けまえ
8. 風なぎ
9. 黄金の月
10. 見る前に跳べ.com
11. ハダカハダカ
12. 航空灯
13. 気まぐれ
14. LIFE
15. 19才
16. 午後のパレード
17. コノユビトマレ
18. 赤い実
19. Re:you
アンコール
20. 情熱の人生の間
21. フォノスコープ
22. 愛について
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