真心ブラザーズ @中野サンプラザ

真心ブラザーズ @中野サンプラザ
真心ブラザーズ @中野サンプラザ
「今日は、オモシロ成分は少なめですね(YO-KING)」「あ、それ先に言っちゃいますか(桜井秀俊)」という言葉が序盤のうちに伝えられていて、そうは言っても随所で大笑いせざるを得ないというのが真心の信頼感だったり業の深さだったりもするのだが、確かに、第一級の音楽ショウとして意気込みがビシビシ伝わるステージであった。9月にはデビュー25周年を控え、レコード会社の移籍と自主レーベル〈Do Thing Recordings〉設立も発表。ここ数年で恒例となっている中野サンプラザ公演は今回、ツアーの一環でもなく、ゲスト・アクトもMC Sakuのラップもなく、ストロングスタイルの真心を正面から叩き付ける内容だったのである。あらためて、凄いバンドだ、真心ブラザーズは。

真心ブラザーズ @中野サンプラザ
真心ブラザーズ @中野サンプラザ
ファンファーレのようなオープニングSEが響き渡ると、ステージ背景にはレトロな楕円形デザインに「MB」の文字が煌めく電飾看板が降下して来る。上野一郎(Ba.)、須貝直人(Dr.)、小川文明(Key.)、うつみようこ(Cho.)、西岡ヒデロー(Tp./Perc.)、上石統(Tp.)、首藤晃志(Sax.)、宇田川寅蔵(Sax.)という、マウンテンホーンズも含めた10人編成MB’sが初っ端から揃い踏みで、ソリッド&ファンキーに放たれる“サティスファクション”が、さっそくオーディエンスのクラップとシンガロングを導くオープニングだ。間奏では早くも、桜井のギターとホーンズがデッドヒートを繰り広げている。かつての活動再開時期と、25周年の新章を一気にリンクさせる“少しも冷めていない”、そして桜井の搔き鳴らすギターからひた走る“消えない絵”では、ジャージとシューレースを目に鮮やかなオレンジ色で揃えたYO-KINGが、大きなジャンプを繰り返しつつ強靭な喉を披露するのだった。序盤3曲、MB’sの異常に雄弁でド迫力なバンド・アンサンブルに焚き付けられながら、真心の二人による挨拶はここまで一言もない。

真心ブラザーズ @中野サンプラザ
真心ブラザーズ @中野サンプラザ
「はいどーもー、真心ブラザーズでーす」「ようこそお越し下さいましたー」という、いつもどおりの調子で挨拶が届くと、少しほっとさせられる。恒例のサンプラザ公演について振り返ったり、YO-KINGが公演タイトルを名付ける苦労について愚痴ったり、はたまた桜井のボーダーシャツのラインとスニーカーがオレンジ色(すみません、気が付かなかった)でYO-KINGと被っていることにも触れ、「スタイリストいなくてコレだからね!(YO-KING)」と笑ったりしている。どれだけ仲がいいんだ。一度喋り出すと歯止めが利かなくなってしまうのだが、ロック・モード全開のフル編成“突風”、そしてYO-KINGの口笛も差し込まれて盛大に沸く“胸を張れ”と、新旧のナンバーに現在進行形の説得力を加味しつつパフォーマンスが進む。

真心ブラザーズ @中野サンプラザ
真心ブラザーズ @中野サンプラザ
真心の二人がいかに神経の図太い、大きな器量の持ち主であるか、ということについて、それぞれ互いの揚げ足を取るようにエピソードを語りながら「よく、俺のいい曲の、凄いヴォーカルが5曲続いたあとに歌えるよね(YO-KING)」「中野サンプラザを、よくぞこれだけ温めてくれた、って思ってるもん(桜井)」と絶妙な掛け合いを経て、桜井ヴォーカルの“スイート・フォーク・ミュージック”へ。小川のオルガンが甘く幻惑的に響く、豊穣なフォーク・ロックの名演だ。音源(『空にまいあがれ』のカップリング)と同じく、YO-KINGがドラムスを担当していた。「だからって、ビバさん(須貝)がギターを弾くいわれはないよね」「弾けちゃうんだもんね」という言葉からも、MB’sのハイレヴェルな遊び心が透かし見えて来る。いやもう本当に、かしこまってステージを凝視するような緊張感ではないのだけれど、ときどきゾッとするような素晴らしい音像を放つMB’sなのである。ロック・リスナー冥利に尽きる体験だ。

真心ブラザーズ @中野サンプラザ
ここでマウンテンホーンズが抜けた編成となるのだが、“情熱と衝動”、“この愛は始まってもいない”、“マイ・バック・ページ”というじっくりとしたロック・チューンの時間帯は、真心とリスナーが歩んで来た道程の、記憶の深い部分に触れてしまうような濃密な音楽世界だった。ソウルフルなピアノとコンガのビートに彩られた“傷だらけの真心”に続いては、YO-KING×桜井のみのアコギ2本弾き語りでデビュー曲“うみ”。25周年の“うみ”が、ふくよかなハーモニーでホール内を掌握してしまう。「25年経ちまして、新曲を来月。レーベルを立ち上げたので、ご贔屓にお願いします。天才・YO-KINGが、またとてつもない曲を、書いてしまいましたね!(桜井)」「まあ、尽きることないね! 日本って、掘ればどこでも温泉が出るって言うでしょ。俺、温泉と一緒だね。キング・スプリングス(YO-KING)」「今日一番の名言が出ましたね! 掘る場所によって、泉質もいろいろ違うわけですね!(桜井)」。桜井の乗せ上手っぷりに後押しされて披露されるのは、3/19リリース予定のニュー・シングル曲“I’M SO GREAT!”。YO-KING節ど真ん中のポジティヴィティが、思うさま吹き荒れる痛快ロックンロールである。

真心ブラザーズ @中野サンプラザ
“素晴らしきこの世界”から「デートで来てた人すみません! あと子連れの人すみません!」と締め括られた“STONE”のシリアスなロック連打。そして「飛び道具的なものはない、って言いましたが、“25周年の歌”を作ってきました」と桜井が紹介して、アコーディオン入りの大らかなフォーク・ポップへ。2人が交互に務めるヴォーカルの歌詞はほとんどユーモラスなアドリブだったが、《同期はX(エックス)とB’zとドリカムでーす♪》《そうだ、フリッパーズ・ギターもそうだったかな ニルヴァーナ 忘れちゃいけない ようこちゃんのメスカリン・ドライブ〜♪》といった、1989年デビュー組を挙げ連ねる掛け合いも見事に決まっていた(B’zは惜しくも88年)。そして“どか~ん”からは、ライヴ・アンセム連打のラストスパートへと突入である。ピアノ・イントロが牽引する“エンドレス〜”じゃないほうの“サマーヌード”が生々しい躍動感に満ち、“EVERYBODY SINGIN’ LOVE SONG”からダメ押しの“拝啓、ジョン・レノン”でフィニッシュだ。

真心ブラザーズ @中野サンプラザ
真心の二人やようこちゃんらが、新レーベルのロゴ入りTシャツに着替えて始まったアンコールは、しょっぱい加齢ネタを振り撒きながらも「前頭葉応援ソング」こと“あれあれ、あの、あれ”でスタート。“RELAX~OPEN~ENJOY”の大団円を迎えると、あらためてMB’sの面々も含めて挨拶する。ようこちゃんはメスカリン・ドライブの名を連呼されるものだから「もう言わんといて〜!」と嘆いたり、首藤がリーダー・バンド=TASTE OF TIMEのアルバム告知を行おうとするたびに、上野のベース・アンプがハウリングを起こしたりして、結局最後まで笑いは絶えなかったけれど、真心のソングライティングとエモーション、MB’sのスキルの高さと遊び心が完璧に合致したライヴであった。4月から6月に掛けては全国ツアー『WE ARE SO GREAT! 〜俺たち、エライよね〜』も予定され、真心ブラザーズはデビュー25周年を駆け抜けてゆく。(小池宏和)

01 サティスファクション
02 少しも冷めていない
03 消えない絵
04 突風
05 胸を張れ
06 スイート・フォーク・ミュージック
07 情熱と衝動
08 この愛は始まってもいない
09 マイ・バック・ページ
10 傷だらけの真心
11 うみ
12 I’M SO GREAT!
13 素晴らしきこの世界
14 STONE
15 25周年の歌(仮)
16 どか~ん
17 サマーヌード
18 EVERYBODY SINGIN’ LOVE SONG
19 拝啓、ジョン・レノン

encore
01 あれあれ、あの、あれ
02 空にまいあがれ
03 RELAX~OPEN~ENJOY
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