エリック・クラプトン @ 日本武道館

エリック・クラプトン @ 日本武道館 - All pics by Masanori DoiAll pics by Masanori Doi
1974年以来、通算20回目となる来日ツアーで日本に訪れたエリック・クラプトン。 武道館を3本(2/18・20・21)、横浜アリーナ(2/23)、愛知県体育館(2/25)、大阪城ホール(2/26)、武道館に戻って4本目(2/28)と公演が予定されている。昨年には、70歳でのライヴ・ツアー引退をほのめかす発言も報道されており(こちらのニュース記事も→http://ro69.jp/news/detail/78986)、今年3月末に69歳の誕生日を迎えることを考えると、今回の日本ツアーが最後になってもおかしくないと言える、そんな機会。モヤモヤとした気分で武道館初日に向かったのだが、クラプトンは「コニチハ! グッド・イヴニング!」と第一声を届ける颯爽とした佇まいからして、ヴァイタリティが漲っていた。前回2011年の、スティーヴ・ウィンウッドとのジョイント・ライヴ時よりも元気そうに見えるが、どうだろうか。以下のレポートはネタバレを含むので、今後の日程を楽しみにしている方は、閲覧にご注意を。

ステージ上は、クリス・ステイントン(Key.)、ポール・キャラック(Vo./Key.) 、スティーヴ・ガッド(Dr.)、ネイザン・イースト(Ba.)といった超一流ベテラン・プレイヤーたちと女性コーラスが2人という編成で、まずはクラプトンが奏でるイントロからデレク・アンド・ザ・ドミノスの“Tell the Truth”がスタートする。小手調べと呼ぶには余りにも輪郭鮮やかなギター・フレーズが浮かび、徐々にバンドごと熱を帯びてゆく。自然に沸き上がるオーディエンスのクラップにも後押しされ、陽気なブルース“Key to the Highway”では、ステイントンのピアノ→キャラックのオルガン→クラプトンのギターとソロのリレーを決める。この序盤で素晴らしかったのは、“Pretending”のしなやかにモダナイズされたアンサンブルだ。パンチの効いたグルーヴ、それにクラプトンのワイルドにささくれ立ったサウンドも最高である。無論、“Hoochie Coochie Man”は大盛り上がりである。

今回の選曲は、ところどころにレアな楽曲も散りばめたオールタイム・クラプトンとなっていて、キャラックにリード・ヴォーカルを委ねる楽曲も含まれている。キャラックの艶と張りに満ちた歌声も見事だ。柔らくあたたかなサウンドにくるまれる“Wonderful Tonight”があれば、アップテンポな“After Midnight”が転がったりと、多彩なナンバーに彩られたパフォーマンスが進む。ステージの上空にはLEDパネルが並べられていて、控えめながら効果的な映像演出が加えられていた。控えめと言えば、女性コーラス2人の前に出過ぎず楽曲を膨らませる歌唱の仕事ぶりも、絶妙な匙加減である。

エリック・クラプトン @ 日本武道館
さて、“Driftin’”からは、クラプトンが椅子に腰掛けてのアコースティック・セット。時間の流れを自在にコントロールしてしまうようなプレイに続いては、アッパーで力強いカントリー・ブルース“Nobody Knows You When You’re Down and Out”が届けられる。ネイザン・イーストがじっくりとアップライト・ベースを奏でるこのアコースティック・セットだが、その流れでアコースティック・ヴァージョンの“Layla”も披露される。誰もが知る名曲に場内からは大きな歓声が巻き起こる。そして、驚かされたのは、続いて演奏された“Tears in Heaven”である。この名曲と久しぶりに触れ合うように、クラプトンは歌っていく。ステイントンはピッチベンドを巧みに操り、鍵盤をあたかもペダルスティールのように奏でて楽曲を彩っていた。

キャラックのレパートリーであるエースの“How Long?”を歌うところから、エレクトリック・セットに戻り、クラプトンは職人気質のバッキングに徹する。ギタリストが彼一人であることからも、今回は「俺はギター」という意気込みもあるのかも知れない。というか、クラプトンの冴えたカッティングをバックに歌うのはヴォーカリスト冥利に尽きる体験だろうな、と想像を膨らませてしまう。そして、クラプトンが白い歯を覗かせて笑いながらブギーする“Before You Accused Me”を挟み込むと、くすぶるようにノイジーなサウンドの“Cross Road Blues”、それに泣きのギターで染め上げる“Little Queen of Spades”と、ロバート・ジョンソンのナンバーを連発。本編最後には、安定感抜群のロック・アンサンブルを力強いリフで牽引しながら、満場の叫びともつかないシンガロングを受け止める“Cocaine”で見事なフィニッシュである。驚くほど短い時間に感じられる、約2時間であった。

まだまだ聴きたいクラプトンのレパートリーは幾らでもあるわけで、一曲のみのアンコール“High Time We Went”までもキャラックのリード・ヴォーカルに委ねてしまうのは、クラプトン・ライヴとしてどうなのかと感じずにはいられなかったが、パフォーマンスそのものは極めて華々しいフィナーレであり、喝采に包まれながらメンバー全員で礼をして去っていった。初日なので、まだ調子を取り戻しているところもあるだろうが、クラプトン、それでもバリバリの現役ぶりである。今後、公演を重ねるに連れ、更に調子は上がっていくだろう。今後の公演にお越しの方は是非楽しんでいただきたい。(小池宏和)

セットリスト
01 Tell the Truth
02 Key to the Highway
03 Pretending
04 Hoochie Coochie Man
05 Honest Man
06 Wonderful Tonight
07 After Midnight
08 Driftin’ Blues
09 Nobody Knows You When You’re Down and Out
10 Alabama Woman Blues
11 Layla
12 Tsars in Heaven
13 How Long?
14 Before You Accused Me
15 Cross Road Blues
16 Little Queen of Spades
17 Cocaine
encore
18 High Time We Went
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