斉藤和義 @ 日本武道館

斉藤和義 @ 日本武道館
「ツアーもだいぶきてて、38本目? そうは言っても先は長いんですけど。気が遠くなるような……(笑)」と序盤からマイペースなMCとは最高のコントラストを描き出す、武道館震撼級の爽快でタフなロックンロール・ソングの数々。斉藤和義本人の歌とギターはもちろん、辣腕サポート・メンバー揃いのアンサンブルに至るまで、「すごさ」や「カッコよさ」をわざわざアピールせずともその1音1音から凄味と艶とエネルギーがあふれ出してくる最高のサウンド……昨年10月に2作同時リリースされた16thアルバム『斉藤』&17thアルバム『和義』を引っ提げて現在開催中の、斉藤和義自身にとっても最長&最多公演=全国55都市62公演・トータル実に14万人動員の一大ロング・ツアー『KAZUYOSHI SAITO LIVE TOUR 2013-2014 "斉藤 & 和義"』。ツアー37・38公演目にして、自身5回目となる日本武道館ワンマン、さらに言えば『斉藤和義 ライブツアー2011-2012 "45 STONES"』以来2年ぶり2回目となる武道館2Days公演(前回は「追加公演を含め2Days」だったのと比べても、当初から武道館2日間開催を発表していた今回のツアーのスケール感は歴然だ)。その2日目となるこの日、「昨日も(武道館で)やったんですけど。昨日は雪で、電車が走ってなかったり、駅まで辿り着けなかったり、結構な方が来れなかったらしくて……今日は大丈夫ですかね?」と世間話のように満場の客席に語りかけつつ、ひとたび音が鳴ればそこはロックンロールのど真ん中。都市の通奏低音もパーソナルな想いも雄大なロックとして放射していく斉藤和義のポテンシャルが最大限に解き放たれた、至上のステージだった。

斉藤和義 @ 日本武道館
まだまだツアーは続くので、ここではセットリストや演出の数々の記述は割愛し、以下のテキストでもライブの内容は一部楽曲に触れるのみに留めさせていただくが、2年前の武道館公演から鉄壁のチームワークを実現しているメンバー:隅倉弘至(B/初恋の嵐)・辻村豪文(G/キセル)・藤井謙二(G/The Birthday)・玉田豊夢(Dr)に加えて高野勲(Key)を迎えた強力な布陣で、『斉藤』『和義』の収録曲――つまりは斉藤和義最新モードの楽曲群を次々に繰り出していく図はまさに圧巻。無駄も力みもない自然体なフォームで鮮やかに場外ホームランを連発してみせるような斉藤和義の空気感が、見事なくらいに舞台の6人全員に共有されきっていて、その自然さが「ショウ」とか「エンターテインメント」とかいう枠を取っ払ったところでオーディエンスの心を優しく、しかし確実に抱き締めていく。特に音量が大きかったり、ステージと客席が並外れて近いセッティングだったりしたわけでもないのに、2時間半あまりのアクトの間、彼の歌と6人のサウンドがずっと自分のすぐそばで鳴っている気がして仕方がなかったのは、その歌と音の伸びやかなヴァイブが聴いているこっちまであっさりと巻き込んでいた、ということなのだろう。

斉藤和義 @ 日本武道館
“カーラジオ”の《ケイタイばっかイジってないで ちょっとこの曲を聞いてごらんよ》という挑発的な歌が、トリプル・ギターの爆発力と一丸となって、「ラジオ流れる車内の描写」を超越して「ロック・ミュージシャンからの“今”への挑戦状」としてパワフル&タイトに響き渡った瞬間。珠玉のロック・バラード“月光”が武道館をでっかく揺さぶるダイナミズムをもって広がった瞬間。“Hello! Everybody!”のストーンズ直系のソリッドなロックンロールが、斉藤&藤井のテレキャス・バトルと相俟ってワイルドな躍動感を放っていた瞬間。“Always”の快活なモータウン・ビートの上で、満場のコール&レスポンスとシンガロングが高純度の祝祭感とともに弾け回った瞬間……懐の深いロックもメランコリックなブルースもどこまでもリアルに息づかせてみせる、至福の音楽体験。一方、その合間合間で、観客の声に応えての「ああ、年男なんですよ。すでに気分は48歳なんですけど」という言葉に続けて「それよりも、50がイヤ! 50って響きが重いなあ……50でもオナニーはすると思うんだけど、50で夢精はまずいかなあと思って。一昨年しましたけど。『知らないおねえさんのお尻をずっと舐めてた夢』を見て……」というMCで場内をどよめき混じりの失笑で包んだり、「The Birthdayの藤井謙二がですね、このメンバーの中で唯一ラジオ番組を持ってるんですよ。この間、ベースの隅ちゃんとゲストに呼ばれて行ってきたんですけど、超棒読みで(笑)。『フジイケンジのすてきなアナルに』っていう番組なんですけど(註:『フジイケンジのすてきなあなたに』/広島・HFMにてレギュラー放送中)」と日本ロック・シーンきっての名ギタリストをいじりまくったり、という語りの面での「自然体」っぷりも、この場の高揚感と一体感をどこまでも濃密に高める最高のエッセンスとして機能している。

斉藤和義 @ 日本武道館
そして、斉藤から曲紹介を任された藤井の、「2011年、ドラマ『家政婦のミタ』の主題歌ともなった……栃木県出身! かんぴょうの名産地! 斉藤和義、歌います!」のコールから流れ込んだのはもちろん“やさしくなりたい”! 辻村が奏でる印象的なギター・イントロから、6人の力強いアンサンブルへと流れ込み――激しくアコギをかき鳴らし、想いのすべてを歌に委ねて《愛なき時代に生まれたわけじゃない 強くなりたい やさしくなりたい》と絶唱する斉藤の姿に、思わず胸が熱くなった。“歩いて帰ろう”などこれまでの人気曲も披露して武道館一面のクラップ&大合唱を巻き起こしてもいたが、それらにまったく負けず劣らず、デビューから丸20年を経た「今」のモードの楽曲群が、彼の最強アンセムとなって響いていたことが何より嬉しかったし、感動的だった。

斉藤和義 @ 日本武道館
「武道館はほんとに、何度やっても楽しいところで……ありがとうございましたー」と例によってのんびりとした口調で語りつつ、「今年もいろいろ動きがあると思うので。えーと……またどこかでお会いしましょう!」と「その先」へのさらなる展開を匂わせてもいた斉藤和義。ロング・ツアーは4月25日・26日の大阪城ホール2Daysやファイナル=4月29日・沖縄コンベンション劇場公演などを含め、あと24本。次回公演は2月23日、徳島・鳴門市文化会館にて!(高橋智樹)
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