星野 源 @ 日本武道館

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星野 源、完全復活! あらゆる角度から見て、完全復活!! そう断言できるような、素晴らしいライヴだった。2012年12月、クモ膜下出血で活動を休止。2013年に復帰するものの、6月に再び療養へ。7月に行われる予定だった日本武道館公演も、延期となった。彼の才能がやっと広く世の中に知れ渡ってきたタイミングでぶつかってしまった、分厚い壁。しかし彼は、恐ろしい病を克服して、1年4カ月振りのライヴとなる、この武道館振替公演において、あまりにも星野 源のままで、私たちの前に戻ってきたのだ。

延期を発表しても、ほとんどキャンセルが出なかったという、彼を信じて待っていた人たちによって、武道館は大入り満員。ステージには楽器がズラリ。一体、どんなライヴになるんだろう? そんな期待を抱きながら開演を待っていると――暗闇に現れたのは、二人のミニスカ・ナースに連れられた星野 源! ニンマリとピースし、去ろうとするナースのスカートの中を見ようと追い掛ける……そんなところも完全復活か!(笑)。「源ちゃーん、待ってたよ!」という歓声が飛び交ううちに、いつの間にかステージにはバンドメンバーがずらり。そして、いよいよ1曲目“化物”がはじまった。あー、動いてる! 歌ってる! そして曲間に「こんばんは、星野 源です!」と挨拶! 本当に、ここにいるんだなあ……歌い終えたところで、そんな思いを実感するような、大きな拍手が武道館を包み込む。さらに、賑やかな演奏に囲まれて軽やかに歌った“ダンサー”、SAKEROCKの盟友でもある伊藤大地(Dr)のドラムからはじまった“ギャグ”とぶっ続けて、小休止。たくさんの「おかえりー!」に応えて「ただいま」と口を開くと、「いやいやいやいや、ちょっと下ネタ言っていい?……ただいま●こー!(絶叫)」。ずっと病院のベッドで考えていたそうで……これ以上ない、完全復帰宣言である。

星野 源 @ 日本武道館
みんなで音頭のリズムを手拍子し、星野 源流の一体感を生み出した“パロディ”、《くだらないの中に愛が 人は笑うように生きる》という歌詞がやけに染みた“くだらないの中に”と続いていく。武道館ぐらいのキャパシティのワンマンライヴは彼にとって初めてだが、距離が凄く近く感じる。オーディエンスとも、まるで小さなバーで弾き語りをやっているかのように会話。「みんなのお陰でここに立っています……ナースのお陰で別の意味でも勃ってるけど(笑)」なんて、感謝の言葉の後に照れ隠しのように付け加えていたけれど、彼の喜びはひしひしと伝わってきた。“湯気”、“ステップ”、“季節”、“くせのうた”……つくづく、彼の歌は匂う。歌声自体は素朴で、佇まいも飄々としているのに、嗅覚までも刺激されてしまうような、強い匂いがある。実家の匂いを嗅いで「帰って来たなあ」と思う時にも似た、音楽的なところを超越した感慨が沸いてくるようだ。

星野 源 @ 日本武道館
ここで、スクリーンに「一流ミュージシャンからお祝いメッセージが届いております」と映し出される。何と、バービーボーイズ(の杏子に扮した椿鬼奴とKONTAに扮したRG)と、アン・ルイス(に扮した森三中の黒沢)! その一流パフォーマンス(ある意味)に、客席も爆笑に包まれる。そんなサプライズを経て、アコースティック・コーナーへ突入。“スカート”、“キッチン”とミニマムな編成で聴かせ、“電波塔“では一人っきりに。座ってじっくりと聴くオーディエンスに向けて、星野がおもむろに語り出した。手術後の検査で、太ももからカテーテルを通して動けない状態の時に、凄くおしっこに行きたくなったこと。でも、尿瓶をもらったのに出なくて、膀胱からカテーテルを通したこと。そうしたら凄く出て、でも尿瓶とおち●ちんを持ってくれている看護師さんに何か話さなきゃ、と思ったら、彼女がDJをやっていることが発覚したこと――ヘヴィなんだけど面白可笑しいエピソードを披露し、そこから「風のように去ったあの子は透明少女」とまさかの曲導入。ナンバーガールの”透明少女”を一人っきりでカヴァーした。その後も、“レコードノイズ”で、ミラーボールが丸い天井に映ってプラネタリウムみたい!と感動していたら「間違えたんでもう一回」とやり直すなど、完全に彼のペースに持っていかれている。再び届いた一流ミュージシャンからのメッセージは、赤えんぴつ(ことバナナマン)、水谷千重子(こと友近)。そして星野は「休んでいる間、武道館をどうしようって考えていたから、寂しくなかった」と笑顔。つくづくこの人は、星野 源を生きることが生きがいなのだなと思う。

星野 源 @ 日本武道館
“ワークソング”からは、再び総立ちに。イントロで拍手が起きた“フィルム”を経て、“生まれ変わり”ではJxJx(YOUR SONG IS GOOD)、オラリー、辻村豪文(キセル)というカクバリズムの仲間がコーラス隊として登場し、あたたかく盛り上げる。さらに、重厚なストリングスの中で堂々と歌い上げた“知らない”と続き、フィナーレがどんどん近付いてきた。「もうすぐ終わっちゃうんですけど……俺もヤだ!」、「いやあ、幸せっすね」と本音を曝け出し、「この曲がここでやれて嬉しい」と始まったのは“夢の外へ”! ストリングスがゴージャスに後押しし、武道館でここぞとばかりにポップチューンが響き渡った。最後は名残惜しそうに2階からアリーナまでウェーブを起こし(星野曰く「ドミノのように」綺麗だった!)、「内密な話、アンコールがあるから!」と掟破りでぶっちゃけ、“ある車掌”へ。途中からキラキラと銀テープが舞い、演奏と交わったその光景が、美し過ぎて呆然と見とれてしまった……と思ったら、帰りもナースに手を引かれて星野はステージを降りていった(笑)。在り来たりでは終わらせないその姿勢、本当にぬかりない。

星野 源 @ 日本武道館
オーディエンスがアンコールを求め始めると、すぐさまナレーションが。「星野 源もいろいろありました」……誰もがしみじみと聞き入っていると、休養中も音楽に触れていたいという思いから、wii Uを購入し一人でカラオケをしまくっていたというエピソードへ。そこで運命の一曲に出会い、武道館のアンコールで歌いたいと思っていた、そしてそれは布施明の“君は薔薇より美しい”であると……すると演奏がスタート、そしてヅラ&グラサン&スーツをまとった布施明(じゃない、星野 源)が登場! さらに、ステップまで踏んで♪変った~!と大熱唱。豪華過ぎるカラオケ! 「ここは料金に入っていないんで、クレームとか止めてね」と言っていたけれど、いやいや、追加料金並みの面白さでした。

星野 源 @ 日本武道館
「次で最後の曲なんでー!」と、またネタ明かしをしながら、ナースに連れていかれた星野。スクリーンには映画『地獄でなぜ悪い』の映像が。すると、ステージにその映像の中そのままの衣装と日本刀を持って現れ、本当のラスト“地獄でなぜ悪い”へ! バーッと客席も照らされ、アッパーに締め括った。最後はずらりと豪華メンバーがステージ前へ。星野は客席のあちこちを指して、何度も何度も「ありがとうございます」と呼び掛けていた。この後はツアー「星野 源の復活アアアアア!」も行われる。彼の宝物のようなアイディアとセンスが、さらに生々しい輝きを増して広がっていくことが、本当に楽しみでならない。改めて、おかえりなさい!(高橋美穂)

セットリスト
1. 化物
2. ダンサー
3. ギャグ
4. パロディ
5. くだらないの中に
6. 湯気
7. ステップ
8. 季節
9. くせのうた
10. スカート
11. キッチン
12. 電波塔
13. 透明少女
14. レコードノイズ
15. ワークソング
16. フィルム
17. 生まれ変わり
18. 知らない
19. 夢の外へ
20. ある車掌
En1. 君は薔薇より美しい
En2. 地獄でなぜ悪い
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