フラワーカンパニーズ @ LIQUIDROOM ebisu

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10月23日、メジャー復帰を果たした2008年11月以降の楽曲をまとめたベスト盤『新・フラカン入門(2008-2013)』をリリースしたばかりのフラワーカンパニーズ。そのリリース・ツアー「上京20才まえ」の2本目、恵比寿リキッドルーム公演が行われた。ツアータイトルにもある通り、彼らの上京20周年記念日である2014日2月4日へ向けて、来年2月2日まで全国14公演を行う本ツアー。来年4月のバンド結成25周年を目前に控えたタイミングという意味でも、バンドにとって大きな節目となるツアーだ。ベスト盤のリリース・ツアーということで、セットリストは彼らのキャリアを総括した贅沢な内容。ゆえに最初から最後までフロアとの一体感に満ちた圧巻のステージとなったわけだが、それ以上に心を揺さぶったのは、己が信じるロックンロールを25年近くにもわたって鳴らし続けてきた4人だからこそ放つことのできる、毅然とした強さだった。

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「どうもフラワーカンパニーズです! 上京20才(ハタチ)まえ!」という鈴木圭介(Vo)の高らかなシャウトを皮切りに、最新にして23枚目のシングル“夜空の太陽”でライヴはスタート。ミドルテンポのサウンドで場内を藍色に染め上げたのもつかの間、“アンテな”“ライトを消して走れ”とエネルギッシュな楽曲を真っ赤な照明の下で叩きつけ、満場のハイジャンプを導いていく。「今年で東京に出てきて19年です。今日は上京した頃の自分たちのことを思い出しながら……そのときのギラギラした感じを出せるかわからないけども、なにしろ暮らしはまったく楽になってませんからね! 肉体だけは衰えているけど気持ちはギラギラしているから、そこでカバーしながら今日はやっていきたいと思います」という圭介の自虐交じりのMCは相変わらずであるけれど、その後の“上京14才”“煮込んでロック”“なれのはて”の連打ではガッチリと組み上がった鉄壁のアンサンブルを響かせて、場内の温度を急上昇させていく。

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この日はトレードマークの素肌にオーバーオール姿ではなく、白シャツ&チノパンという至って普通な出で立ちのグレートマエカワ。「その格好どうしたの?」(圭介) 「冬服だよ、今日から。っていうかお前(ギターの竹安堅一に向かって)、全身ネズミ色だな。靴もメガネもネズミ色だよ」(マエカワ) 「本当だよ。顔色も悪いしよ」(圭介) 「顔もネズミ色だ(笑)」(マエカワ)と、爆笑必至の軽妙なトークはこの日も絶好調。それだけでなく、この日は曲の配置やライヴ全体の流れも絶妙で、ベスト盤のリリースを祝うツアーとして相応しい内容だったと思う。“ビューティフルドリーマー”の滋味に富んだ音世界、“はぐれ者賛歌”の鋭利でささくれ立ったロックンロール、“宙ぶらりんの君と僕”のサイケデリックなグルーヴと、新旧のレパートリーを駆使して多彩な情景をノンストップで描き出していく振れ幅の大きさ。“日々のあぶく”“元少年の歌”“大人の子守唄”“エンドロール”“たましいによろしく”とベスト盤からのスロー・チューンを並べ立て、大人になっても色褪せることないキラキラとした感情をロックンロールに刻んできた自らの足跡をじっくりと浮き彫りにしていくドラマティックな流れ。中でも“エンドロール”の《ああ ロックンロールを鳴らしてくれ》という悲痛な叫びには、胸に迫るものがあった。

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そうして濃密なエモーションを生み出した直後、メンバー紹介では「平日なのに今日はSOLD OUTです。ありがとうございます。正直、完売しないと思っていました」(マエカワ)、「デビュー当時からのファンが全員来てたら、今ごろ東京ドームも即SOLD OUTしているはずなんだけどな。24年もやってるんだから。でもフラカンのファンは程よく新陳代謝してるから」(圭介)、「それも良いことだよね。だから24年も続けられているのかも」(マエカワ)と再び自虐をまじえたトーク。確かにバンド初期のアップ・チューン“くるったバナナ”では「♪バナ~ナ!」のコール&レスポンスが決まらない場面もあったけど、その後の“脳内百景”や第二期メジャー以降の“チェスト”で一糸乱れぬコール&レスポンスやハンドクラップが送られる様子を見ていると、「これが今のフラカンの強さだよなぁ」と深く感じ入らずにはいられなかった。四半世紀にわたってブレることなく、己の信じるロックンロールを真正面から鳴らしてきたフラカン。その不器用かつ真摯な活動の軌跡が、往年のファンどころか新たなロックリスナーの心にまで熱い火を灯し、かつてない熱狂を生み出しているのは本当に素晴らしいことだ。メジャーからの離脱や再びのメジャー・デビューといった紆余曲折を乗り越えて、バンド25周年という金字塔に向けて一切の死角なしの様相で突き進んでいるフラカンの現在。その歩みの正しさを祝福するように、本編ラストの“YES, FUTURE”が高らかに鳴り響いていた。

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ツアー序盤なので曲目を明かすことはできないが、アンコールでも計5曲を披露して、2時間半に及ぶステージを完全燃焼で終えたフラカン。ダブル・アンコールを終えた後に「まだ足りないよね?」とミスター小西(Dr)が一旦ステージ袖に捌けたメンバーをステージに呼び戻し、予定になかったジャムセッションを終えてステージを去った後も、アンコールを促すフロアの拍手が3分近くも続いたことが、この日のステージの充実ぶりを何よりも物語っていた。12月31日には、恒例のカウントダウンライヴを下北沢GARDENで開催。さらに上京20周年記念日の来年2月4日には、東京での初ワンマンの場所・渋谷O-WESTで「上京成人式」なるワンマンライヴも開催される。結成25周年に向けて、フラカンはますます強靭な輝きを放っていく。

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最後に、ひとつだけ余談。中盤のMCでは、先日アルバムのプロモーションで名古屋を訪れた際、久しぶりに実家に泊まったという圭介。「そしたら親父が“あまロス”にかかっていて……」という話から、能年玲奈が表紙巻頭の『CUT 11月号』の話題におよび、「その中で能年ちゃんがギターを弾いている写真が載っているんですけど、そのギターは彼(竹安を指さして)のギターです!」という自慢話も飛び出した。その経緯はこちらを御参照いただきたいが(http://ro69.jp/blog/cut/90951)、「でも能年ちゃんがかけたストラップを肩にかけてる」(竹安) 「関節キスならぬ関節肩!」(マエカワ)と言われてニヤつく竹安の姿がおもしろかった。その噂のギターに興味がある人は、現在発売中の『CUT 11月号』(http://ro69.jp/product/magazine/detail/90673)を要チェック。(齋藤美穂)

セットリスト
1. 夜空の太陽
2. アンテな
3. ライトを消して走れ
4. 上京14才
5. 煮込んでロック
6. なれのはて
7. ビューティフルドリーマー
8. はぐれ者賛歌
9. 宙ぶらりんの君と僕
10. 日々のあぶく
11. 元少年の歌
12. 大人の子守唄
13. エンドロール
14. たましいによろしく
15. くるったバナナ
16. 脳内百景
17. チェスト
18. YES, FUTURE
※アンコールの曲目は非公開
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