ASIAN KUNG-FU GENERATION デビュー10周年記念ライブ「オールスター感謝祭」 @ 横浜スタジアム

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大型の台風18号の接近により開催も危ぶまれたアニバーサリー・ライヴ2日目だが、蓋を開けてみればまさかの快晴である。「(晴れたのは)皆さんの普段の行いの良さだと思います。僕らも今日晴れるように、喜多さんの不摂生とか、僕の嫌味とかも、なるべく控えるようにして、身を引き締めてました」と後藤もやや驚いた表情で快晴の横浜スタジアムを見上げていた。「ファン感謝祭」と銘打ち、特設サイトで行われたファン投票で上位にランクインした楽曲を、4人編成で披露したデビュー10周年記念ライヴ初日と打って変わり、2日目「オールスター感謝祭」は三原重夫(パーカッション)、上田禎(キーボード、ギター)、岩崎愛(コーラス)を加えた7人編成でステージに登場。観客からの大きなハンドクラップに迎えられる中、“All right part2”で第1部の幕を開けた。

続く“アフターダーク”では、イントロのドラムに会場から大歓声が巻き起こり、後藤と喜多によるギターの掛け合いからスタートした“ブルートレイン”では、伊地知と山田が織りなす複雑なリズムパターンにステージ背景の映像がシンクロし、興奮を加速させていく。伊地知と三原のツイン・ドラムによるパーカッシブなサウンドが爽快な高揚感をもらした“AとZ”、後藤がハンドマイクで激しく歌い上げた“新世紀のラブソング”と、夕暮れ時を迎える横浜スタジアムで、ライヴ序盤から実に濃密なステージを繰り広げる。静かな始まりから、喜多のハイトーンのコーラスに大きな歓声が上がった“ナイトダイビング”、会場中がハンドクラップしながら飛び跳ねた“ラストダンスは悲しみを乗せて”に続き、「みんな、自由に踊ってよ」という後藤の言葉からスタートした“1980”では会場中の手が掲げられ、横浜スタジアムを爽快な一体感が包んだ。「オースター感謝祭」とは言いつつも、お祭り騒ぎをぶち上げるというよりは、長らく信頼関係を深めてきたもの同士がお互いを確かめ合うようなライヴだ。

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「今夜は『オールスター感謝祭』ということで、我々のできる限りのコネクションを使いまして、皆さんとお祭り騒ぎしたいと思います」と後藤が語ると、ゲストアクトを迎えたライヴ・コーナーに突入する。最初のゲストは、「一番予想できるヤツだったよね、オレ(笑)」とホリエアツシ(ストレイテナー)。ホリエをメイン・ヴォーカルに迎え、“無限グライダー”の演奏が始まると、会場からは「ウオォォォ!」と地鳴りのような歓声が。繊細さの中に強烈な強さを持ったホリエの歌声が、この曲のメロディに実に映える。さすがは「カラオケの十八番」だということだけはある。さらに「ワンモアソング!」(後藤)と後藤とホリエのツインヴォーカルによるストレイテナーの“KILLER TUNE”を披露! こちらもイントロのギターのフレーズに大歓声が上がり、横浜スタジアムが騒然となるほどの盛り上がりを見せた。

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続くゲストは、後藤が10代の頃に憧れていたというWEEZERの元ベーシスト、マット・シャープ。「成功するということは、みんなとどれだけハッピーになれるかだと僕は思う。ASIAN KUNG-FU GENERATIONは、僕にとって、みんなにとって、世界中に幸せを届けてくれている。だから、このバンドは素晴らしい成功を収めているんだ。みんなでシャンパンを持っている気持ちで、手を上げて、AKGが幸せを与えてくれたことにカンパイしよう!」とアジカンの10周年を祝うと、会場からのものすごいハンドクラップに迎えられ、ザ・レンタルズの“Getting By”を披露する。そして「次の曲は僕が世界で一番好きな曲です。この曲のアウトロをこのギターで弾くのが夢だった」と後藤が語り、WEEZERの“Only in Dreams”を共演。マットはベースを持ち、お馴染みのベースラインをプレイし、山田はアコースティック・ギターを演奏。10代の頃の後藤の夢が、今は横浜スタジアムの夢となって、観客の心を強く掴んだひと時だった。このライヴのためだけに来日したというグラサン姿のマットも、本当に楽しそうな表情だった。

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「もう一人、僕たちの大事な友だちを紹介します」とステージに呼び込まれたのは、細美武士(the HIATUS)。彼を「勝手にお兄ちゃんだと思っている」と後藤が語ると、細美は「俺は水戸黄門の角さんだと思ってる。助さんは、ホリエさん」と語り、「黄門」に掛けた下ネタで会場を爆笑させる。細美をヴォーカルに迎えて演奏したのは、the HIATUSの“Insomnia”。細美は途中、弾いていたアコースティック・ギターを置いてステージ中央で飛び跳ねながら熱唱し、ものすごいエネルギーを持った歌声が横浜スタジアムを包む。さらに“遥か彼方”では、細美がメイン・ヴォーカルを歌いながらステージの袖まで駆け出し、会場の熱気をヒートアップさせる。満面の笑みで歌い、観客を煽る細美のパフォーマンスは、アジカンへの愛とリスペクトに満ち溢れていたように思う。「ありがとうございました!」とステージを去った彼に、観客からは大きな拍手と歓声が贈られていた。

スペシャルゲストとして登場したホリエと細美に対して、後藤は「デビュー当時のツアーを一緒に回って、今では年に何回かしか会わないけど、あんまり会わなくても安心な友だちというか。音楽的にも尊敬できるし、人間的には……尊敬できないところもあるけど(笑)、大好きな友だちです」と紹介し、感謝を語ると、再び7人編成でのライヴに戻る。まずはBeckの名曲“Loser”の日本語カヴァー。後藤はハンドマイクでラップしながら、ステージの袖まで歩いて会場を沸かす。さらに“マーチングバンド”で緊迫感のあるサウンドを響かせると、宮崎駿監督が引退会見で語った「この世は生きるに値する」という言葉を引き合いに出し、「自分にとって音楽は、『この世は生きるに値する』ということを証明し続けるためのものだと思う。マットも言ってたけど、俺たちが演奏する音楽がみんなの幸せになってくれたら嬉しいです。音楽やダンスは、生きるエネルギーだよ。という気持ちで震災の後に作った曲です」と語り、“踵で愛を打ち鳴らせ”を演奏。悲しみと向かい合いながらも生きることを祝福するように軽快に響くサウンドで横浜スタジアムを深い感動に包むと、第1部のラストは大ハンドクラップに迎えられた“今を生きて”。このかけがえのないステージを胸に刻み込むような、余韻を残して第1部はフィナーレを迎えた。

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20分の休憩をはさみ第2部がスタート。アリーナのスタンディングゾーンの後方、ちょうどピッチャーマウンドの上辺りに設けられた小さなステージに、アコースティック・ギターを持った後藤が一人で立つと、会場に驚きと歓喜のどよめきが起こる。「今からやる曲は、(ファン投票で)上位に入ってたけど、割とバンドではやってない曲です。でも聴きたいという声が多かったので」と震災直後の後藤のパーソナルな思いを綴った楽曲“ひかり”を演奏する。さらに「反対向いて歌おうかな」とアリーナを背にした形で“夜を越えて”を披露。「10代の頃、ぐちゃぐちゃした青春の終わりかけに、音楽だけが、〈お前、あっち行け〉って言わなかった。音楽みたいに、自分が救われた音楽のように、手を差し伸べられたらいいなって、僕はそんなこと思ってます」と語ると、会場からは温かい拍手が巻き起こった。そして、「僕のベストフレンドの一人をシークレットゲストとして呼び込みたいと思います」(後藤)とステージに迎えたのは、ナカヤマシンペイ(ストレイテナー)だ。後藤のギターに合わせてナカヤマがカホンを叩き、“転がる岩、君に朝が降る”を演奏。後藤の力強いヴォーカルにナカヤマのコーラスが重なって、胸を強く締め付けるように響いた。まるで演出かのように、この曲の間だけ会場に小雨が振り注ぎ、忘れられないほど優しい光景を作った。

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“転がる岩、君に朝が降る”が終わると、メインのステージの方に喜多、伊地知、山田の3人が登場。「普段、野球を見に来てるスタジアムでライヴできて嬉しいです」(喜多)、「感無量です。物販もたくさん買ってくれてありがとう!」(伊地知)、「まだ飲み込めていない自分もいるけど、皆さんのおかげでここまで来れたんだなって、じわじわと感じています」(山田)とそれぞれこのステージに立つ喜びを語ると、最後のゲストアクトとして金澤ダイスケ(フジファブリック)をステージに呼び込み、喜多、伊地知、山田、金澤の4人編成で“嘘とワンダーランド”をプレイし、会場を熱狂させる。曲終わりでステージに戻ってきた後藤も「だいぶジェラシー、だいぶジェラシー。なにこの盛り上がり!」と叫び、喜多の歌い方をモノマネするなどひとしきり悔しがった後「ダイちゃんと一緒にちょっと多めに何曲かやります」と語り、“迷子犬と雨のビート”を披露。さらに“架空生物のブルース”、“さよならロストジェネレイション”と、金澤が全国ツアーに参加した『マジックディスク』のナンバーを立て続け、カラフルな音色のロック・サウンドで横浜スタジアムを揺らした。

金澤をステージから送り出すと、ASIAN KUNG-FU GENERATIONの4人だけでライヴ。奥深いグルーヴがめまぐるしく展開する“センスレス”、キレの良いバンドアンサンブルを響かせた“惑星”で会場に熱を響かせると、「デビューから10年、結成から18年ですか。人生の半分をこの人たち(メンバー3人)といると思うとなかなか複雑な気持ちになりますけど、僕らの音楽をこうして見つけてくれてありがとうございます」と後藤が語り、メンバーとの思い出話に。後藤が「俺、あんまりアジカンが好きじゃない」と喜多に言われ、泣きながら山田に電話したというエピソードを披露し、「本当に良いヤツなんです」と後藤がしみじみ語ると、山田も「テヘッ」とはにかんだ笑顔をみせる。そういうやりとり一つ、表情一つとっても、彼らが培ってきた信頼が伝わってくるようだ。

「うちのリーダー(喜多)がここでどうしてもやりたいと言って聞かない曲」と“江ノ島エスカー”を披露。もちろん会場は大歓声だ。さらにイントロからものすごいオイコールが起こったのは“リライト”。間奏では観客との掛け合いをたっぷり続け、後藤はその間にステージの袖まで歩きアリーナにピックを大量に投げ込んだり、ステージ横のカメラに向かってウインクしたり、この日しかやらないようなパフォーマンスで観客を湧かせる。ラストは会場が爆発的な歓喜に包まれた“君という花”。大合唱する観客をもっと近くに感じたかったのだろうか、後藤はマイクスタンドをわざわざステージの最前列まで持って行って歌っていた。曲の最後に“大洋航路”のフレーズを歌うというサプライズも見せた。

アンコールでは再び7人編成で、新曲“スローダウン”を披露。この曲は、前日の「ファン感謝祭」で演奏された新曲“ローリングストーン”同様、ライヴ参加者に配布されたダウンロードカードからのみゲットできる「僕らを応援してくれた皆さんへのプレゼント」(後藤)だ。「僕たちの歩みはこれからも続いていくので、またどこかで会いましょう。いい感じの音楽がなっているところで」と後藤が語ると、最後は“アネモネの咲く春に”でスペシャルな2日間のフィナーレを飾る。「いつかまた君と会う日を願う」と歌いながら、後藤が会場を指さして手を振ると、観客も手を振って応えた。

1部と2部、さらにアンコールと合計32曲、4時間にわたって繰り広げられた「オールスター感謝祭」。最後の最後まで、ファンへの愛、仲間への愛、そして音楽への愛で溢れたライヴだった。このバンドを好きで良かった――そう横浜スタジアムにいた誰もが強く感じたはずだ。そしてもちろん、これからも。(大山貴弘)
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