手島いさむ50祭 ワシモ半世紀 @ 日本武道館

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「感無量ですね。2日間続けて誕生日会を……誕生日『会』じゃないよね、『誕生式典』だよね(笑)」と、ユニコーンのステージで思わずこぼれる手島いさむの言葉に、客席から熱い拍手と♪ハッピーバースデーの歌声が沸き上がる――2009年には『川西幸一 50歳記念 チョットオンチー栄光の50年』と銘打って、ドラム:川西幸一の生誕半世紀を大々的に祝ってみせたユニコーン。今年8月27日、今度はギター:手島いさむの50歳の誕生日!ということで、日本武道館で2日間にわたって開催されたのが、今回の『手島いさむ50祭 ワシモ半世紀』。ちなみに、今回の『ワシモ半世紀』のチケットには、ユニコーンの新曲2曲“ゴジュから男”“新・甘えん坊将軍~21st Century Schizoid Man”が収録されたCDが購入者特典としてついてくるという念の入れようで、単なる「誕生式典」のレベルを越えた5人のワクワク感(と悪ノリ感)が開演前から伝わってくる。「僕の音楽人生というかね、『今やってること』『過去にやってたこと』そして『今観てもらいたいもの』を、ざーっとやっていきますのでね」と手島自身も話していたこの日の祭典の模様を、以下セットリストと共にダイジェストしていくことにする。


■電大 〈ゲスト〉河名直行(The STRIPPER)
01.ハレルヤ
02.愛の陽炎
03.3番街のBack Street (w/河名直行)
04.Body Guard
05.オートクチュール

手島いさむ50祭 ワシモ半世紀 @ 日本武道館
まずは川西/EBI/手島の3ピース・バンド=電大(平均年齢ジャスト50歳!)。手島の華麗なソロ・プレイから流れ込んだ“ハレルヤ”でさらに鮮やかなタッピングを披露し、ハードに燃えるロック・ナンバー“愛の陽炎”へ、と最新アルバム『3D』曲を中心とした躍動感あふれるロックンロールを聴かせていく3人。トータル30分足らずのステージだったが、どこまでも気張らず気負わず、それでいてタイトな推進力とともに鳴らされる電大サウンド――その爽快な威力を、武道館という大舞台でよりいっそうリアルに体感できた。途中、「30年ほど前、川西くんと一緒にやってたバンドでね。EBIくんはお客さんで観に来てたんですよ、高校生で。そういう30年前のセッションをやってみようかと」という手島のMCから、手島&川西がユニコーン結成以前にメンバーとして所属していたバンド=The STRIPPER(当時はSTRIPPER)のフロントマン:河名直行が登場。手島「今はThe STRIPPERっていう名前でやってますからね」 川西「現役ストリッパーの河名くんです!」 河名「脱いだらすごいんです(笑)」のトークから、The STRIPPER曲“3番街のBack Street”へ突入、80s感満載のエッジィなビートとサウンドで広大な空間を震わせていたのも、この祭典ならではのスペシャルな場面と言える。

ちなみに今回の『ワシモ半世紀』は、『チョットオンチー栄光の50年』の時の「メインステージ+その両脇のサブステージ=計3ステージで交互にライブを展開」という方式ではなく、メインの1ステージで素早く転換を行いつつアクトを展開していく、というスタイルで行われている。で、各アクト間の10分程度の転換の間、ステージ背後のビジョンに流れた映像は「手島in手島」。そのタイトル通り、香川県丸亀市に属する、瀬戸内海に浮かぶ小島「手島」を手島いさむが(なぜかギター持参で)訪れ、住人40人ほどというこの島を歩き回ってへとへとになったり、海辺で飴のようにギターを操る映像が「その1」「その2」「その3」と流れ、満場の武道館の爆笑失笑を誘っていた。

■阿部民バンド
(阿部義晴 / 奥田民生 / 八熊慎一[SPARKS GO GO] / YO-KING[真心ブラザーズ] / 桜井秀俊[真心ブラザーズ] / 木内健)
01.御免ライダー
02.SUN SET SUN
03.呼びにきたよ
04.愛する人よ
05.SO SO GOOD
06.WAO!
07.おせわになりました

手島いさむ50祭 ワシモ半世紀 @ 日本武道館
続いて「ゲストバンド」的な立ち位置で登場するのが、阿部義晴 / 奥田民生 / 八熊慎一[SPARKS GO GO] / YO-KING[真心ブラザーズ] / 桜井秀俊[真心ブラザーズ] / 木内健という錚々たるメンバーが顔を揃えたスーパー・グループ「阿部民バンド」。“アンパンマンのマーチ”に乗って現れたアロハシャツ&短パン姿の「短パンマン」6人衆。前列上手(舞台に向かって右側)から桜井(G)・八熊(B)・YO-KING(G)、後列に木内(G)・民生(Dr)・阿部(Key)と配置についたステージで、まずは民生曲“御免ライダー”では民生がドラム&ヴォーカルを務め、続く阿部曲“SUN SET SUN”では鍵盤を木内に任せた阿部が前列に進み出て、さらに“呼びにきたよ”では桜井・民生・YO-KINGの地球三兄弟が前列に勢揃い(民生:ベース&ヴォーカル、八熊:ドラム)……と曲ごとにフォーメーションを変えながら、ポップ・マジックの結晶のような阿部/民生それぞれの極上のメロディを武道館の客席へと広く解き放っていく。8月7日にリリースされたばかりの阿部のソロ三部作EP第2弾『G』収録のロックンロール・ナンバー“SO SO GOOD”の後で民生が「生のドラムが1人2曲まで!」と呼吸を乱しながら言っていた通り、「ドラムもできる人」はいても「ドラマー」がいない「阿部民バンド」、後半どうするのかな?と思っていたら、“WAO!”はなんとリズムボックスの脱力ビートとともに披露。それでも満場のハンドウェーブとシンガロングを巻き起こしていたのはさすがとしか言いようがない。ラストはそのままリズムボックスとともにABEX GO GO(阿部義晴&SPARKS GO GOが90年代に組んでいた期間限定ユニット)の激ポップ・ナンバー“おせわになりました”でフィニッシュ!

■手島いさむバンド 〈ゲスト〉THE ポッシボー
01.birds
02.around again
03.さくら (w/ THE ポッシボー)
04.Circles
05.あの丘へ

手島いさむ50祭 ワシモ半世紀 @ 日本武道館
そして、今度は自らのバンドを率いて3ピース編成で登場した手島、いきなりギター・インスト“birds”で雄大なサウンドスケープを展開、武道館を悠久のロックの大平原へと塗り替えてみせる。かと思うと、一転してコーラスチームとともにポップ・ナンバー“around again”を歌い上げ、さらには5人組アイドルグループ:THE ポッシボーを招いて、9月11日にリリースされる彼女たちのニューシングル『乙女! Be Ambitious!』カップリング収録曲“さくら”のメロウ&メロディアスな高揚感で武道館を包んでみせる。ハード・ロック/ヘヴィ・メタル/ブルースなど幅広い音楽性を血肉化した「ギター・ヒストリー伝道師」的な側面と、それをポップど真ん中に直結させる「ギター・エンターテイナー」の側面とが、たった5曲のアクトから(ユニコーンとも電大とも違う形で)くっきりと浮かび上がってきた。そして、そんな手島の「歌心」がカラフルに花開いていたのが、コーラスとともに丁寧に歌ってみせた“Circles”であり、カントリー・ロックとスカが青春ドラマ主題歌のような陽性ヴァイブの中で融け合って響く“あの丘へ”だった。「あの……何回ここに立っても、やっぱり……嬉しいですね、これだけのお客さんの前でできるのはね」と、この晴れ舞台に立つ喜びを改めて口にしていた手島に、会場から惜しみない拍手が降り注いだ。

■ユニコーン
01.Feel So Moon
02.ケダモノの嵐
03.裸の太陽
04.オッサンマーチ
05.WAO!
06.服部
07.オールウェイズ
08.新・甘えん坊将軍~21st Century Schizoid Man
09.オレンジジュース
10.ヒゲとボイン
11.すばらしい日々
En1.ゴジュから男
En2.HELLO

手島いさむ50祭 ワシモ半世紀 @ 日本武道館
そしてラストはユニコーン! 手島が舞台前列上手に陣取るいつものセッティングとは大きく異なり、前列上手から下手にかけて阿部キーボード、民生ギター機材、EBIベース機材、川西ドラム、そして後方中央には手島の機材とマイクがセットされたお立ち台が用意されたこの日のステージ。暗転した舞台の後方でビジョンが左右に分かれ、その後ろから『ワシモ半世紀』のシンボルマークにもなっているテッシー&ドクロのオブジェが現れ、その両目からレーザー光線があふれ出す! そこへ、英バッキンガム宮殿の近衛兵の制服制帽に身を包み、高く足を振り上げるあの独特の歩き方でオン・ステージした民生/阿部/EBI/川西に続き、なぜかナポレオン・スタイルでエコポニー(馬のおもちゃ)に乗って颯爽と(?)登場した手島――という幕開けで武道館の客席に渦巻いた幾多の「?」混じりの爆笑を、“Feel So Moon”“ケダモノの嵐”“裸の太陽”と新旧名曲を畳み掛けて軒並み歓喜の「!」に変えてみせる。さらに、手島いさむ大フィーチャー曲“オッサンマーチ”とその後の“WAO!”のギター・ソロでは、手島と機材を乗せたままお立ち台が高々とせり上がる! ただ楽曲を鳴らし歌うだけでも多幸感あふれまくりのユニコーン・ワールドを、さらにどこまでもでっかい祝祭空間へとつなげてみせようとする5人のぴっかぴかのサービス精神が、この日のアクトを最高に目映いものにしている。

手島いさむ50祭 ワシモ半世紀 @ 日本武道館
“服部”で武道館をでっかく揺さぶった後、自身作曲の“オールウェイズ”を弾き語りで披露した手島。「50歳を迎えるにあたり、ユニコーンで集まって、2曲レコーディングしまして」の前置きとともに5人で炸裂させたのは、チケット購入特典CDに収録された新曲“新・甘えん坊将軍~21st Century Schizoid Man”。ハード・ロックとメタルと“モンキーマジック”が手に手を取って踊り回るような音像の中で「お茶」と「ハイどうぞ」が連呼された挙げ句に、キング・クリムゾン“21世紀のスキッツォイド・マン”へ雪崩れ込む、「カオス」と書いて「楽しい!」と読むような楽曲だ。そこから一転“オレンジジュース”のソリッド&シリアスな世界へ飛び込んでみせ、“ヒゲとボイン”で武道館丸ごと大合唱へと導き……といったジェットコースターのような展開で、時間はあっという間に過ぎていく。「ドラムの位置ってこういうふうに見えるんだ!って初めて学習しました(笑)」とお立ち台からステージと客席を見回す手島に「ところで、なんでこんな衣装になったんですかね?」と尋ねる民生。手島いわく「新曲が“新・甘えん坊将軍”」→「将軍といえば馬」→「馬からナポレオンを連想」→「さらにナポレオンからなぜかバッキンガム宮殿を連想」ということらしい。

手島いさむ50祭 ワシモ半世紀 @ 日本武道館
この『ワシモ半世紀』2公演の後は、8月31日に同じくここ武道館で開催されるイベント『831食べ夜祭(やさいたべやさい)』でのステージが「2013年最後のライブ活動」とアナウンスされているユニコーン。「こうやってね、たくさんの人の前でやってみて……新たに、ユニコーンでライブがいっぱいしたいなって思ってます!」という手島の言葉に、いやが上にもひときわ強い期待感の混じった拍手喝采が沸き上がっていく。その熱気を“すばらしい日々”の胸震わせる高揚感へと直結して――本編終了。アンコールではバースデーケーキ……ではなく、「昨日ケーキだったからさ」と巨大なバースデーカツカレーが舞台に運び込まれる。カレーの香り漂う舞台で、手島に向けて4人がクラッカーを鳴らすと同時に、客席全体に向けてキャノン砲発射! 一面に銀テープが舞い踊る中、もうひとつの新曲“ゴジュから男”へ。ミドル・テンポのハード・ロック・サウンドに乗せて「イサムハンサム」のリフレインが響き渡り、鮮やかなライトハンド奏法を繰り出す手島ごとお立ち台が再びせり上がり、会場の熱気をさらに極点へと煽っていく。ラストは名曲“HELLO”で堂々の大団円! この流れで行くと2015年には民生&EBIの、2016年には阿部の「半世紀」記念式典が……?と勝手に先走って期待せずにはいられない、濃密な祝祭感に満ちた一夜だった。(高橋智樹)
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