The Birthday × dip @ LIQUIDROOM Ebisu

The Birthday × dip @ LIQUIDROOM Ebisu - The Birthday/pic by Yuki ShimboThe Birthday/pic by Yuki Shimbo
ライブハウス「LIQUIDROOM Ebisu」9周年イベントの一環として開催中のLIQUIDROOM恒例対バン・シリーズ『UNDER THE INFLUENCE』。この日の「The Birthday×dip」の他にも、「MASONNA×後藤まりこ×MO’SOME TONEBENDER」(8月8日)、「田我流×フラワーカンパニーズ」(9月17日)、「9mm Parabellum Bullet×UNISON SQUARE GARDEN」(9月19日)、「bonobos×トクマルシューゴ」(9月20日)、「TK from 凛として時雨×amazarashi」(9月30日)といった音の異種格闘技戦が展開される『LIQUIDROOM 9th ANNIVERSARY presents “UNDER THE INFLUENCE”』。いよいよロックンロールの強度と熱量そのもののような存在になってきたThe Birthdayと、痺れるようなロックのサイケデリアを鋭利かつディープに体現するdipの競演、いざ開幕!

■dip
01.HASTY
02.TELVET
03.CYAN
04.SATURNINE
05.13階段への荒野
06.OFF THE SUN
07.Siamese Fins
08.FASTER, FASTER
09.FLY BY WIRE
10.SLUDGE

The Birthday × dip @ LIQUIDROOM Ebisu - dip/pic by 大串義史dip/pic by 大串義史
The Birthday × dip @ LIQUIDROOM Ebisu - dip/pic by 大串義史dip/pic by 大串義史
ほぼ19:30オンタイムで客電が消え、先攻:dipのステージがスタート! ヤマジカズヒデの赤いフェンダー・ジャズマスターのディストーション・サウンドが、今年7月にリリースしたばかりの最新アルバム『HOWL』から“HASTY”の鋭利なリフを放射し、五感を震わせるようなハード・エッジ&サイケデリックなサウンドと繊細でトリッピンなメロディが疾走ビートの中で咲き乱れ、さらに次の曲へ……というところで、「ごめん! ちょっと壊れた(笑)」とヤマジとスタッフが機材の調整に入り一時中断。「もう1回最初からやりたいけど、時間ないから2曲目から行くね」と言いつつ、続く“TELVET”ではナガタヤスシ&ナカニシノリユキのスクエアなビートからヤマジの歌がワイルドなポップ感を滲ませ、“CYAN”ではサイケな穏やかさと目映い狂騒を行き来しながら観る者を音の異次元に導き……といった熱演で、ついさっきのトラブルなどあっさりリセットしてみせる。

The Birthday × dip @ LIQUIDROOM Ebisu - dip/pic by 大串義史dip/pic by 大串義史
The Birthday × dip @ LIQUIDROOM Ebisu - dip/pic by 大串義史dip/pic by 大串義史
上のセットリストの通り、基本的には『HOWL』で鳴らしたdip最新型を軸に据えたこの日のアクト。ギター・ロックで心の闇に迫るロマンとクリエイティビティの極致を、3ピースのフォーマットでびりびりと響かせるdipの美学が、“OFF THE SUN”の爆発力からも、メランコリックなアルペジオから広がった“Siamese Fins”の10分近い鮮烈なカオスからも滲んでいた。この日、『HOWL』以外から演奏されたのは3曲。ヘヴィな名曲ミドル・ナンバー“13階段への荒野”、ライブの終わりを熾烈に彩った“SLUDGE”、そして「チバくんがカバーしてくれた曲」というヤマジの紹介とともに披露した“FASTER, FASTER”。昨年リリースされたトリビュート盤『dip tribute ~9faces~』で「dip JAPAN(チバユウスケ×クハラカズユキ×TOKIE×ヤマジカズヒデ)」名義で演奏、昨年のトリビュート盤リリース・ライブではチバ&クハラがゲストで登場したこの曲。今回は2人の飛び入りこそなかったものの、20年以上にわたってオルタナティヴ・ロックの刃を研ぎ続けるヤマジの/dipの「今」を、そのアンサンブルでもってリアルに体感させてくれた。

■The Birthday
01.泥棒サンタ天国
02.Buddy
03.MEXICO EAGLE MUSTARD
04.YUYAKE
05.爪痕
06.なぜか今日は
07.Red Eye
08.涙がこぼれそう
09.さよなら最終兵器
10.READY STEADY GO

The Birthday × dip @ LIQUIDROOM Ebisu - The Birthday/pic by Yuki ShimboThe Birthday/pic by Yuki Shimbo
そして後攻:The Birthday! クハラカズユキが颯爽と登場して爆裂ビートを叩き出し、ヒライハルキ、フジイケンジが加わったところに、マラカスを手に意気揚々と登場したチバユウスケの姿に、リキッドルームのフロアは瞬間沸騰! そのまま“泥棒サンタ天国”“Buddy”のでっかいビートでフロアを揺さぶっていく。今回のライブは「LIQUIDROOM Ebisu」9周年記念イベントであると同時に、この当日はThe Birthdayが2006年のシングル『stupid』でのデビューからちょうど7周年の記念日。“stupid”はやらなかったが、同じく2006年リリースのアルバム『Rollers Romantics』から“MEXICO EAGLE MUSTARD”をぶっ放していたのは、The Birthdayからの7周年の祝砲だったのかもしれない。

The Birthday × dip @ LIQUIDROOM Ebisu - The Birthday/pic by Yuki ShimboThe Birthday/pic by Yuki Shimbo
The Birthday × dip @ LIQUIDROOM Ebisu - The Birthday/pic by Yuki ShimboThe Birthday/pic by Yuki Shimbo
チバの歌もクハラのドラムもヒライのベースも冴えまくっていたこの日のアクトだが、際立っていたのはフジイのギターの切れ味だった。The Birthday加入当初のレスポールではなく、最近のライブではジャズマスターを使っているため、ヤマジとの「ジャズマスター揃い踏み」が実現!という時点で個人的には体温が3度くらい上がる思いだったが、“なぜか今日は”のイントロから曲全体にドライブ感を与えるアグレッシブなプレイといい、チバが吹き鳴らすブルースハープとスリリングに絡み合うギター・ソロといい、オルタナ魂の結晶のようなヤマジのプレイに触発されたかのように、フジイのサウンドはギラギラした獰猛さと躍動感に満ちている。

The Birthday × dip @ LIQUIDROOM Ebisu - The Birthday/pic by Yuki ShimboThe Birthday/pic by Yuki Shimbo
The Birthday × dip @ LIQUIDROOM Ebisu - The Birthday/pic by Yuki ShimboThe Birthday/pic by Yuki Shimbo
「LIQUIDROOM、9周年おめでとうございます!」とクハラ。続けて「The Birthday、6周年おめでとうございます!」と言ったのをすかさずフロアから口々に訂正され「え、7周年? マジで?」と苦笑していたのはほんのご愛嬌。“涙がこぼれそう”のイントロではチバが観客にメロディを委ね、LIQUIDROOM一丸の歌声を巻き起こし……という場面から、ライブは一気にクライマックスへ。“さよなら最終兵器”のシリアスな爆走感はどこまでも狂おしく胸に迫ってきたし、本編ラスト“READY STEADY GO”のチバの絶唱が天井も夜空もぶち抜く勢いで噴き上がって最高のロックンロール・パラダイスを描き出していた。アンコールではTシャツ&ハンドマイクのチバがひときわ熱く“ローリン”を歌い上げ、割れんばかりのシンガロングで大団円——かと思いきや、「もう1曲やらしてくれる?」とチバ。「また1人、俺たちの仲間に娘が生まれたんで……」と歌い上げたのは“オリーブ”。《もしも君が汚い大人にだまされたら 僕が君を助けにゆく》という切実な言葉を丁寧に歌うその声が、そして《オリーブ》と繰り返し叫び上げる凄絶な絶唱が、熱い一夜の余韻とともにひりひりと胸に残った。(高橋智樹)
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