J-WAVE LIVE 2000+13 2日目 @ 国立代々木競技場第一体育館

J-WAVE LIVE 2000+13 2日目 @ 国立代々木競技場第一体育館 - JUJUJUJU
『サンスター オーラツー presents 25th ANNIVERSARY J-WAVE LIVE 2000+13』、2日目。このイベントの歴史や性格については昨日のライヴレポート(http://ro69.jp/live/detail/87324)の詳細なご説明をご覧いただければと思うが、大盛況を迎えた昨日に続き、本日も実にバラエティに富んだラインナップが揃えられた。KREVA/山崎まさよし/絢香/アンジェラ・アキ/JUJU/スガ シカオ(スペシャルゲスト:井上陽水)。ジャンルも年齢もバラバラの6名だが、一方で共通点がないわけでもない。まず1つが、全員がこの『J-WAVE LIVE』に複数回出演している、つまり、それぞれが中堅~ベテランと呼ぶべき一定以上のキャリアを積んできた猛者達であるということ。もう1つが、6名全員がソロ・ミュージシャンであるということ。ライヴが始まるまで出演順が分からないこのイベントにおいて、イベントのファンからすれば誰が出てきても「おかえり」と言えるのは幸福なことだし、そのうえ高い次元の中で1人1人がどのような音楽家であるかを存分に聴き比べることができるというのは、集ったオーディエンスにとっても稀有な体験になったのではないだろうか。それでは、出演順に各ライヴのレポートを。

J-WAVE LIVE 2000+13 2日目 @ 国立代々木競技場第一体育館 - 絢香絢香
■絢香
「FIRST UP」のテロップに続いてスクリーンに絢香の名が映し出されると、客席に激しいどよめきが。絢香が1曲目“ツヨク想う”を歌い出すと、驚きの声が歓喜の叫びに変わる。とにもかくにも声量が凄い。しかも、声を張るところと、ファルセットやウィスパー・ヴォイスを織り交ぜるところとで声量がほとんど変わらないというのは、どういうことか。まさしく、海や空くらい容易く割りそうな絶唱である。そんなヴォーカルを今日特に興味深く堪能できたのが、9月4日にリリースされる初のカヴァー作『遊音倶楽部』に収録されるという3つのカヴァー曲。「トップバッターということで皆さんと盛り上がりたいと思って、大好きな曲を持ってきました!」というMCに続いて披露された“シーソーゲーム ~勇敢な恋の歌~”は、サビの天にも昇るような恍惚と、あの曲の肝であるDメロでのドライヴ感を存分に引き出した、真っ向勝負で本家ミスチルに迫るガチンコカヴァー。また、RADWIMPSの“タユタ”では、曲の背景にあるソングライター=野田洋次郎の強固な思想を受け継ぐというより、思想を素にし生まれた曲と詞そのものに残された美しさを純粋に表現するような歌唱で、新鮮味があった。そして小田和正“たしかなこと”は1つ1つの言葉を噛みしめるように、そして目の前の1人1人に語りかけるように、やや後ろ目のリズムで歌い上げ、音楽家としての咀嚼力・解釈力の高さを見せつけてくれた。全て聴き終えた後の会場には、ファンも初見の人間も関係なく、絢香というシンガーへの驚嘆がただただ残っていたように思えた。

J-WAVE LIVE 2000+13 2日目 @ 国立代々木競技場第一体育館 - 山崎まさよし山崎まさよし
■山崎まさよし
本人のエレキ/アコギ弾き語りにベースとドラムを加えた、いつも通り簡素な3ピース。でありながら、聴き手に1音たりとも聴き逃すことを許さないような、緻密極まるバンド・アンサンブルを織り上げた山崎まさよし。そんな演奏の合間に、本人が着た「BIG WAVE」とプリントされたTシャツの「WAVE」の前に小さく「J-」を書き足していることをアピールする茶目っけを見せるのだから、盛り上がらないはずがない。ハイライトとなったのは、トロピカルなレゲエ調で届けられた国民的楽曲“セロリ”とヘヴィなフォーク・ロック“月明かりに照らされて”に続いて演奏された“パンを焼く”。ディープなファンク・グルーヴが渦巻く中、お馴染みとなっている早口言葉のコールアンドレスポンスを観客に促してみせる。ただでさえ言い辛いというのに、本人もたまに噛んだりするから、笑ってしまってまるでレスポンスを返せない。しかも「ジェジェッ、ジェジェッ、ジェジェジェジェジェ…J-WAVE!」というコールで鮮やかにオチを付けた(これはみんな言えた)と思ったら、「きゃりーぱみゅぱみゅ3ぱみゅぱみゅ 合わせてぱみゅぱみゅ6ぱみゅぱみゅ」と最後の大オチをぶちかますタチの悪さ。爆笑である。言うまでもなく、精緻な演奏力を有する彼がやるからこそ、これだけの緊張と緩和が生まれる。それを自ら改めて証明するように、最後はリズム隊を下げ、アコギ弾き語り1本で新たな名曲“アルタイルの涙”を一分の破綻無く歌い上げ、音楽家として立つ高みを静かに顕示して、セットを締めくくった。

J-WAVE LIVE 2000+13 2日目 @ 国立代々木競技場第一体育館 - アンジェラ・アキアンジェラ・アキ
■アンジェラ・アキ
「4回目の出演になるけれど、毎回色んなジャンルが集まるイベントで、みんな耳が肥えてる。そんなみんなの前で歌えるのが嬉しい」と何度も繰り返し、このイベントへの愛情を表していたアンジェラ・アキ。オープニングの“サクラ色”に続いては、亀田誠治プロデュースで、打ち込みに生ピアノを合わせることに挑戦したという新曲“夢の終わり 愛の始まり”が披露される。そのような挑戦を見せる楽曲を演奏していても、音を放つ喜びが内から溢れて仕方ないというように、弾くピアノやヴォーカルにポジティヴなヴァイヴが絶えず宿るのが良い。セット中盤には、「色々な弾き語りの形を観てほしい」と言いシンセの多重録音による曲の構築の仕方をレクチャーし始める一幕も。抜群のMCの上手さもあり、素敵な音楽の先生が音楽室で2人きりで教えてくれているような距離を感じさせない親しみ易さが客席を一層あたためる中、投下されたのは翌日に出演するRIP SLYME のカヴァー、“熱帯夜”だ。ラップもバッチリながら、コーラスを幾重に重ね分厚いハーモニーを独力で作り出した曲終盤が圧巻だった。そして、大きなサプライズだったのが、デビュー時期が一緒の戦友であり親友でもあるという絢香の飛び入り。2人の共演曲に選ばれたのは、アリシア・キーズの“If I Ain’t Got You”だ。技巧をいくつも散りばめながら繊細に強弱をコントロールするアンジェラと、絶対的な声量で全てをなぎ倒すような超絶エネルギーの絢香とのコントラストが何とも面白い。2人のヴォーカリストのこれまで歩んできた軌跡を映し出す、素晴らしい名演だったと思う。

J-WAVE LIVE 2000+13 2日目 @ 国立代々木競技場第一体育館 - KREVAKREVA
■KREVA
ベース、ドラム、キーボードの3人編成KREVA bandとDJおよびMPCの熊井吾郎をバックに従えたKREVA。黒い縦縞のパンツと、ピカピカのタンクトップ、目には蛍光グリーンのサングラス。流石の夏男ぶりだ。1曲目は“Feel It In The Air”。サウンドの、楽曲の、何より本人のスター性による、極めて大きなスケール感が1曲にしてこの広い会場を完全に飲み込んでしまう。しかし、そんな圧勝ムードのオープニングを切りながら、その後KREVAの口から出たのは「ちょっと泣いていいですか、いきなり。思ったより応援してくれる人がいて…。毎回『J-WAVE LIVE』すごくアウェイで。今日のラインナップ見たら、(自分が入っているのが)間違いないじゃないかなって。明日RIP SLYMEに混じって出ようかなって…」という冗談混じりの感謝だった。たしかにアウェーの場に飛び込みそこで新たなファンを獲得するというのはもうずっと前から彼が口にし、そして実践してきたことだ。だが、もはや日本の音楽シーンに彼のアウェイなど無くなってきているのかもしれない。“イッサイガッサイ”ではKREVAが煽る前からフロアからは一斉に手が振りあげられたり、新曲“BESHI”のサビで、音源では大人数のコーラス隊がアンセミックに歌いあげるコーラスを1万人の観客が声を張り上げ、代わりを務めたりしている様を見ていると、どうにもそのように思えて仕方なかった。しかも、そんな眼前のオーディエンスを余すことなく盛り上げ倒したセットが、全8曲中4曲が最新アルバムからで、さらに1曲はピカピカの新曲という。本人も、本人を取り巻く環境も、常に最新が最高なのだ、KREVAというミュージシャンは。逆説的に見れば、そうあるための努力を絶やさない男だからこそ、およそ日本で初めてであろう「アウェイなきMC」にリーチしているのかもしれない。本当に、つくづく凄い音楽家である。

J-WAVE LIVE 2000+13 2日目 @ 国立代々木競技場第一体育館 - スガ シカオ(スペシャルゲスト:井上陽水)スガ シカオ(スペシャルゲスト:井上陽水)
■スガ シカオ
ステージにライトが灯ると同時にドロッドロに粘ったグルーヴが現出する。その中心は、黒いレスポールを繰るスガだ。1曲目の“アイタイ”で幕を開け、“はじまりの日”のグッド・メロディでフロアに着火し、“コノユビトマレ”のポジティヴなフィーリングで会場を1つにまとめあげる。そして4曲目“Re:you”で彼のチャームである「毒」を注入。この完璧な流れをもってスガの世界を丹念に作り上げた上で、「ある人の音楽を聴いてずっと高校に通ってきた! 俺の夢がまた今日1つ達成するのです!」という煽りでスペシャルゲスト:井上陽水をステージに招き上げる。グレーのスーツを着た陽水がゆっくりと登場し、ハープを吹き上げてから、歌い出す。“氷の世界”だ。紛れもない陽水のあの声が、会場中を容赦なく引っ掻き倒していく。2番を歌うスガも、陽水の歌い方に寄せずに自らのヴォーカリゼーションを貫いていて素晴らしい。しかし、なんというファンクネスか。1小節1小節に滾る、そして陽水が「ア~ォ!」とシャウトする度、スガがカッティングの火花をまき散らす度に爆発するドス黒い熱といったら。これが日本のファンクだ、とこの会場にいない人にも見せつけてやりたい衝動がこみ上げてならない。。続いて、陽水がアコギを手に取り歌ったのが、“少年時代”。事前にスガが陽水に「どのくらいのテンポで演奏したらいいかバンドで聞いた」ところ、「思い出に残るテンポで」という答えが返ってきた、という「らしすぎる」エピソードが披露されたが、まさしく今日会場でこのコラボを聴いた人間は、この曲が、この演奏が思い出としてずっと残っていくだろうと思えるパフォーマンスだった。日本のメインストリームでファンクを担い続ける第一人者とフォークの生ける伝説にして怪物の出会いは、こうして目覚ましい成果となり、この『J-WAVE LIVE』の歴史に永遠に刻まれることとなる。そのことに我々観衆以上に、誰より喜び安心しているのが、他ならぬスガ自身であることが彼の一挙手一投足から明らかに伝わってきて、何とも微笑ましい限りだった。

J-WAVE LIVE 2000+13 2日目 @ 国立代々木競技場第一体育館 - JUJUJUJU
■JUJU
本日のトリを務めるのは、JUJU。白いドレスで統一した女性ストリングス4人組に、サックス、さらにコーラス2名が入った大所帯で、まず奏でられたのは“Dreamer”。ゴージャスなオケに涼しげな歌声が乗る。過剰な起伏に頼ることなく曲に描いた感情の側面を丁寧に歌い上げるその様は正に威風堂々といった趣だ。また、今年リリースされたジャズ・アルバム『DELICIOUS ~JUJU's JAZZ 2nd Dish~』にも収録されたジャズのスタンダード・ナンバー“Take Five”では、ヴォーカリゼーションが一変する。凄い。この人が歌うジャズは、「ジャズ」である。ジャジーなポップスでも、日本人による偏屈なジャズ解釈でもなく、危険でクールな、この言葉が本来指す通りの「ジャズ」そのものだ。それは“My Life”のような日本語曲でもまるで変わらない。破綻スレスレで最大限自分の技術をぶつけ合うチキンレースのようなスリル極まる演奏と丁々発止のやり取りをするヴォーカル。壮絶、とはこういうものをいう。演奏が終わると、JUJUの口から「こういう曲ができるのも『J-WAVE LIVE』ならではだなと思って入れさせていただきました」というMCが。彼女もまた、このイベントのオーディエンスの音楽愛への濁りなき信頼を抱く1人なのだ。それが最も美しく表れたのが、最終曲“Love Together”を終えた後、メンバー全員がはける前から巻き起こった大アンコールに応えて彼女とバンドが再登場した際。「こんな遅くにアンコールまでいただいて、皆さん…」と観客に対し拍手を向けるJUJU。そして、“やさしさで溢れるように”をステージの端から端まで動きながら、観客1人1人の顔を確かめるように歌い上げ、間奏では礼を繰り返す。その様は、ポップスターとしてというより、1人の音楽を愛する人間として、この会場中の人間とその愛を共有するかのようであった。そしてその思想こそ、この尊い大衆音楽に余すことなく彩られた1日を締めくくるのに、何より相応しいものであるように思えてならなかった。(長瀬昇)
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