SiM @ SHIBUYA-AX

SiM @ SHIBUYA-AX - pic by kohei suzukipic by kohei suzuki
メジャー移籍第一弾シングル『EViLS』を引っ提げて、47都道府県を行脚。さらにファイナルシリーズとして、5か所で猛者を迎えた2マン企画を実施してきたSiM。その最終日となるSHIBUYA-AX、対バンはONE OK ROCK! 今やアリーナクラスのキャパシティを埋め尽くすバンドとなった彼らだけに、貴重なライヴハウス公演だ。とは言え、会場周辺に「チケット譲って下さい!」と書かれたボードを掲げるキッズも、そのプレミアチケットを握りしめてきたキッズも、恐らくほぼ全てがSiMのファン。しかし、ライヴハウスでアウェイ、という条件は、そもそも茨の道を歩んできたONE OK ROCKの力を思いっきり引き出した。水を得た魚のようにステージを飛び回り、いつもよりも男臭いフロアの熱狂に応えていく。Taka(Vo)の「SiMのツアーファイナルを盛り上げるためにやってきました!」、「Tシャツの後ろにVSって書いてある限りは、本気で行くからさ」という言葉からも、対バンというスタイルに徹底して向き合っていることが伝わってきた。最終的には、キッズにこれだけ出し尽くさせちゃって大丈夫!?と心配してしまうくらいの盛り上がりに。さあSiM、どうする!?

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しかし、その心配は、予想だにしなかったオープニングで早くも払しょくされた。思わせぶりに閉じられていた黒い幕が開くと、さらに白い幕がステージを覆っていた。そこに、まるで映画の予告のような映像が流れ出したかと思ったら、いきなり告知が! ライヴの終了後にこういった演出が行われることはあるが、開始前というのは異例だと思う。ワクワクがマックスまで高まったところで、幕の向こう側にメンバーのシルエットが映り、ハンドクラップの中、“Blah Blah Blah”でライヴはスタート。MAH(Vo)が存在感あるフロントマンということは以前からわかっていたが、SHOW-HATE(G)、SIN(B)、GODRi(Dr)の成長がハンパじゃない。ガンガンに踊り弾き、キッズに火を点けていく。そして演奏も、音の重みは思いの重み、とばかりに心身に響いてくる。そこに支えられたMAHも、エンターテイナーと呼べるほどに動き、踊り、魅せてくれた。フロアにも、でっかい左回りが幾つも現れ、ウィンドミルに没頭するキッズが続出。これは事件ではないだろうか――そう思えるくらいの空間を生み出していった。

SiM @ SHIBUYA-AX - pic by H.and.Apic by H.and.A
「ここにいる全員にとって人生最高の一日になるように、俺は命を賭けていい!」とMAHが叫ぶと、さらに狂騒は加速。フロアの隅から隅まで手が挙がった“Murderer”、MAHの誘いでスカダンスが広がった“Set me free”と畳み掛けられる。そう、SiMのライヴは、レゲエがルーツにあるから、暴れられるだけじゃなく、踊れるところも魅力的。キッズを見ていても、通り一辺倒のノリをしていない。こうしてビートが体に染み込んで、自由な楽しみ方を会得していくことは、キッズの発想そのものにも影響を与えるんじゃないかな?

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MCも印象的なMAHが、「常日頃から考えているんだけど」と切り出したのは、友達も家族も夫婦も、100%理解出来なくてもいい、お前はお前、俺は俺と、敢えて一線を引くことが大切ということ。SNS社会で、会ったことのない奴にいろいろ言われるけれど、そんな奴に俺の何がわかるのか、我慢もするけど、このツアーファイナルでは吐き出してやる!……そして“FiXiT”に突入した。演奏中には狂騒を巻き起こしているキッズが、MCはじっと聞いている。そして、演奏がはじまると、また再び狂騒へ。この光景は、SiMを代弁者のように思っているキッズが多いことを証明しているようだった。MAHが「みんなの分も俺が中指立てて、ファッキューファッキュー言ってやる!」と叫んでからはじまった“I Hate U (It's Not A Play On Words)”は、たくさんの中指と「ファッキュー!」コールが溢れる。画面に思いをぶつけるんじゃない、生で思いをぶつけるんだ。この時代だからこそ、ライヴってとても大切な場所になってきているんじゃないだろうか。そんなことまで思いを馳せてしまった。

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ライヴへの思いを昇華した“Same Sky”を高らかに鳴らした後は、もう突っ走るだけ。「辛いことがあっても、今日楽しかったことを思い出して生きていって下さい!」というMAHの言葉から、ウォール・オブ・デスも起こった“f.a.i.t.h”でライヴを締め括った。

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アンコールに応えて再び現れたMAHは、フロアの写真を撮ると、そのままツイートしている様子。その文面を読み上げると……何と7月24日、彼らの地元の善行Zで裏ファイナルを行うと発表! 何とも粋な演出だった(ちなみに、終演後の22時からチケットを発売し、瞬時に売り切れたとのこと。そりゃそうだ!)。そこから、今日の対バンであるONE OK ROCKへの思いを語り出す。「かっけえバンドとやりたいの。ただそれだけ。今から奇跡が起こるぞ!」と言うと、何とTakaが飛び出してきて、“KiLLiNG ME”を一緒に歌ったのだ! 最初のシャウトからゾクゾクしっぱなし。志の高い二人の若きヴォーカリストの歌声が溶け合うと、こんなにもエネルギーを生み出すのか! それは偏見や壁を取っ払う説得力に満ちていた。最後に4人に戻って、もう一度“Blah Blah Blah”を演奏して終幕。ONE OK ROCKの全員を呼び込んで記念写真を撮影し、お互いを称え合っている姿には、それぞれの道程を想像し、胸が熱くなるものがあった。

MAHはライヴ中に、「僕らがCOUNTDOWN TVに流れるのって夢があるでしょ?」と笑っていたけれど、夢を現実に変えて、世の中の鬱屈を吐き出し真実を伝えられるのは、彼らのようなバンドだと実感した。SiMは、まだまだ凄くなる。見てろよ。(高橋美穂)
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