筋肉少女帯 @ 中野サンプラザ

筋肉少女帯 @ 中野サンプラザ
筋肉少女帯が、メジャーデビュー25周年を記念したワンマンライヴを、中野サンプラザで行った。中野と言えば、大槻ケンヂのホームタウンであり、中野サンプラザは、彼の小説『縫製人間ヌイグルマー』にも登場し、何より2006年の復活ライヴの舞台ともなった大切な場所。ということで、開演前から会場付近は「俺たちの場所で迎えるハレの日!」的な緊張感と祝祭感で、ただならぬ雰囲気が漂っていた。見渡せば、特攻服のおじさんや派手なお姉さま風の女性、さらにヴィジュアル系を思わせるバンギャからオタクっぽい人まで、本当に幅広いファンが集結している。筋少がデビューしてから長い時間が経ち、オルタナやミクスチャーというジャンルも生まれたけれど、こんなにいろんな要素がクロスオーヴァーしているバンドって、やっぱりなかなかいない。そう、この時点で思ってしまった。

BGMの音量が上がると、自然とハンドクラップが起き、わらわらと立ち出すオーディエンス。ソールドアウトで2階までビッシリ埋め尽くした人たちの視線がステージに注がれる中、まずは三柴“エディ”理が登場し、流麗にピアノを奏で出す。そのうち他のメンバーが現れ、始まったのは“サンフランシスコ”。メンバーがステージを立ち回る中、オイ・コールが巻き起こり、既に熱い盛り上がりを見せていく。そして、ここで早くもMC。「あーりがーとよー! 言いたくないけど、みなさんのおかげです」と大槻。ここまではロックバンドとして普通かもしれない。しかし、そこからは大槻ケンヂ。こんな近所でライヴが出来ると思わなかったこと、自分ご褒美でそこ(マジで目と鼻の先)のドンキホーテで布団乾燥機を買ったことを明かし、「ふかふかの布団で寝て来てやったぜ!」と誇らしげ。こんなロックスター、やっぱり4半世紀を経ても他にいないと思う(笑)。さらに、「祝ってくれるのかと問うならば!」、「問うならば!」とお馴染みのコール&レスポンスを挟み込み、「みんなからも何か欲しい。声援が欲しい! DVDを収録しているから、2.5割増しでキャーキャー言ってもいいんだぜ!?」と呼び掛け“くるくる少女”へ。そして復活後のライヴのフックとなっている“ワインライダー・フォーエバー”では、楽器を置いてニコニコとラップするメンバーたち。絶対にこの人たち、今、凄く筋少を楽しんでる! そう思えて、こっちもニンマリしてしまった。

筋肉少女帯 @ 中野サンプラザ
続くMCでは、近所だけに、大槻の84歳と85歳のご両親もリハの時間に来場した話に。お赤飯のおにぎりを差し入れながら、ライヴは「年寄りには無理だ」と言って帰ってしまったのだそう。残念。でもほっこり、いい話! すかさず大槻が「あんたたちは何を食わせてくれるの」……って、カレーですか? 次の曲が予想しか出来ません(笑)。「飽きたから逆で!」と、オーディエンスが「日本を印度に!」と叫び、それに大槻が「しーてしまえ!」と返してはじまったのは、もちろん”日本印度化計画“。”これでいいのだ“では、タオルがぐるんぐるん回るだけではなく、曲中で大槻以外のメンバーが衣装替えで袖に引っ込んでしまい、「メンバーが来るまでの時間潰し! 『あまちゃん』でもお馴染みの、小泉今日子さんの”学園天国“の♪ヘーイヘイヘイヘーイヘーイ調で!」と、事情も赤裸々に明かし、時事ネタまで盛り込んだ振りでのコール&レスポンスへ(笑)。もう、流石としか言いようがない! かと思えば、曲が終わると「中野の北口見た? 変わっちゃったよねえ」とお隣さんみたいな口調で話し出す。それでいてレポートでも「MCばっか抜かれるから、トボけたバンドだと思われる」って、大槻さんが抜きたくなるようなMCばっかりするからです!(笑)。「リポーターの方、MCはなかったことに」って言っていたけれど、イヤです!(笑)。DVDのMCもカットするっていう話もしていたけれど、それは……ないだろうなあ。

ここで、25年前のデビュー時にいたメンバーで、今ステージに立っているのは大槻、内田雄一郎、三柴(89年に脱退、現在はサポート)という話に。「25年見てくれている人いる?」、「ナゴム時代から見てくれている人いる?」という問い掛けに、ポツポツと挙がる手。さらに、「再結成後から見てくれている人いる?」という問い掛けで挙がった手も多かった。これは、やはり彼らが唯一無二の存在という証だろう……と、真面目に聞いていると、今までで最も印象に残っているライヴは?という話に。大槻が「模範解答を言います。今日です!」と言うと、橘高が「残念だけど、ここ(DVDで)切るからね」とバッサリ! そしてDVD用に、大槻が階段からスポットライトに照らされて階段から降りてきて「今でしょ!」というシーンをわざわざ撮影(笑)。もう、極端すぎるでしょ!?
そして“じーさんはいい塩梅”へ。《ひなたぼっこじーさんはな/あの世でいい塩梅》という歌詞とほのぼのしたメロディの合わせ技を初めて聴いた時は、本当に衝撃的だった……それを2013年に大合唱していることが可笑しくも嬉しい。さらに名曲“孤島の鬼”は、大槻が「筋少、うま~い!」と言っていたけれど、楽曲の世界観が3Dで迫ってくるような、重厚な演奏だった! しかし実は大槻、「みなさんも足腰が弱っているだろうから、“じーさんはいい塩梅”から座ってもらうはずだったの」と、段取りを間違ったことを告白。そして「ここで座りませんか?」と座らせ、MC後に「何やってんの!? 立てよー!」とメンバーが口々に言うという小芝居があり(笑)、一体感を誇るジャンプが炸裂した“踊るダメ人間”へ。大槻のヌンチャクさばきが見られた“イワンのばか”、「この曲に共感してくれることは、筋肉少女帯のファンの証!」という大槻の言葉が染みた“蜘蛛の糸”と、どんどんヒートアップしていき、ラストは「再結成の1曲目に歌った曲でおしまいだ!」と“トゥルー・ロマンス”で締め括られた。

筋肉少女帯 @ 中野サンプラザ
アンコールに呼び込まれて、大槻以外のメンバーが登場。橘高が「25周年のスタートですよ!」と、今後の予定をチャキチャキと発表。9月の追加公演や10月以降のツアー、さらにメンバーのソロ活動に他のメンバーが参加する「筋少拡散波動砲2013」企画まで……内容も凄いけど、橘高の一人芝居のような話し方が華麗過ぎて印象的だった(笑)。そして“少女の王国”がはじまると、つつーっと大槻が出てきて歌い出す。うっとりと聴き惚れたところで、「意外とライヴって忘れちゃうけど、今日のライヴは忘れないでくれよ!」という素の言葉も飛び出し、“キノコパワー”、“再殺部隊”と攻めまくっていく。しかし、何と言ってもこの日のハイライトは、大槻の「25年こんなことやってきたなんて、夢を見ているようだね」という言葉からはじまった、メジャーデビュー25周年記念曲“中2病の神ドロシー”だろう。《そのバンド/本当はいなかった/25年見てたのは/自分の心さ》――バンドを追い掛けるって、どういうことなんだろう? その答えをロマンティックなメロディに昇華した楽曲を口ずさみながら、この場所にいた多くの人が自分自身の人生も振り返っていたはず。感動に包まれる中、大槻が「本当はこの曲で終わりにしようと思ったんだけど、バンドは幻だったっていう歌っていうのと、ヴォーカリストが2カポ付きのフォークギターを持って終わるのはおかしいだろっていうことで、ド定番で」と言い、はじまったのは待ってましたの“釈迦”! 思いっきり気持ちを出し尽くして、終演となった。

先日リリースされた『公式セルフカバーベスト 4半世紀』の収録曲を中心に、代表曲だけではなく、ファンの心を掴むセットリストだったこの日。エンタテイナーでありながら、常にライヴを主戦場としてきた彼ららしい記念日となったと思う。今では多くのバンドにあるオーディエンス参加型の楽曲を、何年も前から演奏し続けてきた事実は、揺るぎない。これからも、老若男女のバンド好きを巻き込んでいって欲しい!(高橋美穂)
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