サカナクション @ 幕張メッセ9・10・11ホール

サカナクション @ 幕張メッセ9・10・11ホール - All pics by 石阪大輔(hatos)All pics by 石阪大輔(hatos)
サカナクション @ 幕張メッセ9・10・11ホール
「北海道から出てきて6年、こんなたくさんの人の前でライブができるようになるなんて、札幌にいる時は想像してなかったけど、実際にこんなたくさんの人が集まってくれるようになって……みなさんに感謝してます。ありがとうございます!」……そんな山口一郎の言葉に、会場を埋め尽くした2万人のオーディエンスから沸き上がる拍手喝采の嵐! 3月にリリースした6thアルバム『sakanaction』を引っ提げての全国ツアー『SAKANAQUARIUM 2013 sakanaction』の終盤を飾る大舞台――過去最高の総計8万人を動員する今回のツアーの中でも最大規模(2日間で4万人!)のサカナクションのワンマン公演:幕張メッセ2デイズは両日ともソールドアウト。まだ大阪&沖縄の2公演が控えているのでここではセットリスト掲載は割愛、一部曲目の記述のみに留めさせていただくが、サカナクションという音楽が持つスケール感と、その中でひときわ熱く脈打つバンド感とチャレンジ精神とが浮き彫りになった、最高のステージだった。

開演前から熱気と期待感があふれ返り、それこそ5人の登場と同時にクライマックスを迎えていた幕張メッセ9・10・11ホール。「みんな一緒に歌おう!」という山口一郎のコールに導かれて“アイデンティティ”をはじめ随所で会場一丸のシンガロングで応えていたオーディエンスを、この日最も驚かせていたのは何と言っても、ステージ周辺だけでなく側壁やスタンディング・エリア後方など場内の至るところに設置された、計228本に及ぶスピーカー群だろう。ドルビーラボラトリーズの協力を得て、幕張メッセの空間内に巨大なサラウンドシステムを作り上げてみせたのである。実際、会場後方で鳴っていた効果音がスタンディング・エリアの横を通り抜けてステージに移動していったり、ジェット機の飛翔音が右から左へ流れていったり、といった音響的なギミックのひとつひとつが、観客の驚きとさらなる熱気を刻一刻と呼び起こしていた。

サカナクション @ 幕張メッセ9・10・11ホール
サカナクション @ 幕張メッセ9・10・11ホール
ただし、6.1chサラウンドで立体的な音響効果を生み出せるからといって、5人の演奏に関して言えば、たとえば「シンセの音色が右から左へぎゅーんと飛んでいく」といったような奇抜な仕掛けに走るようなことは一切なかった。そのサラウンド感がひときわ印象的に用いられていたのは、リミックス・スタイルで披露された“『バッハの旋律を夜に聴いたせいです。』”、そして“Aoi”での、ステージとフロアを丸ごと取り囲むように麗しのコーラスの歌声が鳴り響いた場面だった。ステージから放射される5人の歌と音。オーディエンスの高らかなシンガロング。さらに、2万人が詰めかけた巨大なフロアのさらに「その外側」の領域への広がりを感じさせるように朗々と響き渡ったコーラス・サウンド……幕張メッセという「会場」の枠組みを、巨大な音空間の広がりによって鮮やかに越えてみせた瞬間には、感激のあまり全身が震えた。それによってサカナクションが、山口一郎が、クラブ・ミュージックとバンド・サウンドへのとめどない愛情の先に、これだけ途方もない音の広がりを見据えてアルバム『sakanaction』に向き合っていた――ということが、改めてリアルに伝わってきて、胸が熱くなった。

サカナクション @ 幕張メッセ9・10・11ホール
サカナクション @ 幕張メッセ9・10・11ホール
さらにそこへ、スクリーンを彩ったオイルアートやレーザー光線といった美しくもスリリングな演出が加わり、“夜の踊り子”ではPVに登場した踊り子が華麗に舞い踊り、“Aoi”では山口いわく「ガンダムみたいなのがバーッて出てきたじゃない?」という大仕掛けも登場。音楽だけでなく視覚的な体験まで含めてトータル・デザインされたエンタテインメント空間が生まれていたのである。「サカナクションは5人ですけど、実はひとつのライブをやるのにたくさんの人が関わっていて、それを僕たちはチーム・サカナクションと呼んでいます。みんな、チーム・サカナクションに拍手をいただけますか?」という山口の言葉に、熱い拍手と歓声が巻き起こったことは言うまでもない。

サカナクション @ 幕張メッセ9・10・11ホール
サカナクション @ 幕張メッセ9・10・11ホール
サカナクション @ 幕張メッセ9・10・11ホール
山口「幕張に来るまで、ライブハウス・ツアーを回ってきたんですよ」
岩寺「……7ヵ所、8ヵ所ぐらい?」
山口「はっきりしろよ(笑)。エジー、どうですか?」
江島「7ヵ所、8ヵ所ぐらいじゃない?」
……と、本編中のクール&アグレッシブ佇まいとは一転、アンコールのMCではいかにもバンド然とした和やかな空気感で会場の笑いを誘っていく5人。そして、「高知とか、500人キャパぐらいのところも回ってきて。ライブハウスでライブをやれなくなるのは嫌だなと思って。でも、こういう大きな会場ならではのライブっていうのもできるなって思いました」という山口の言葉が、この日のアクトの感動と相俟って、巨大なフロアを拍手で埋め尽くしていく。

サカナクション @ 幕張メッセ9・10・11ホール
「昨日、本番が終わった後、関係者挨拶ですごい言われたのが『次何やるんですか?』って。サラウンドやって、大きいプロジェクターとか使って、次にいったい何をやるんですかって。でもね……次やりたいこと、あるんですよ!」と山口は話していた。「今回、僕たち苦手なテレビに頑張って出さしていただいたんですけど(笑)。そしたら、親子連れのお客さんが増えたんですね。責任感じちゃってさ、生まれて初めてのライブでしょ? だったら、ものすごい体験をさせてあげたいなって。これから僕たちは、みんなが新しい体験ができるようなことにチャレンジしていきたいなと。そのためには、もっとたくさんの人たちに、なんとかして自分たちの作った音楽を伝えていけたらなと思います」……そんな真摯な想いと微塵もブレることなく、この日のサカナクションの音は壮大に、力強く響いていた。ツアーはいよいよ22日(水)・大阪城ホール、6月1日・沖縄音市場の2公演を残すのみ。さらに大きく沸き上がるサカナクションの冒険心と音楽探究心が、どんな世界を描いていくのか――すべての音が止んだ後、手を取り合って一礼する5人の姿を見ながら、「その先」が楽しみで仕方がなかった。(高橋智樹)
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