DIR EN GREY @ 新木場スタジオコースト

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赤黒く冷えた爆風のようなDIR EN GREYの音像と巨大なスケール感を、至近距離と言って差し支えないライブハウスの規模で体感するのはやはり、途方もなくスリリングで蠱惑的な体験だ。昨年12月に幕を閉じた『TOUR2012 IN SITU』のグランド・フィナーレ=東京国際フォーラム公演で告知されていたミニアルバム『THE UNRAVELING』リリース、そして同作を引っ提げて行われた全国ツアー『TOUR2013 TABULA RASA』。その『TOUR2013 TABULA RASA』のファイナルにして新木場スタジオコースト2デイズの2日目となるこの日、むせ返るような満場の熱気の中で繰り広げられていたのは、DIR EN GREYの「最新型」にして「核心」そのものの、熾烈なる背徳と生命の悦楽が渦を描く、唯一無二の風景だった。

DIR EN GREY @ 新木場スタジオコースト
DIR EN GREY @ 新木場スタジオコースト
「最新型」とは言っても、SEの“狂骨の鳴り”に続いてスタジオコーストに轟々と鳴り渡った“業”しかり、 “Unknown.Despair.Lost”しかり、ご存知の通り『THE UNRAVELING』に収録された楽曲群は、新曲“Unraveling”を除いては、これまでのDIR EN GREYの楽曲を再構築したものだ。が、「何を」演奏するかよりも「どう」演奏するかという点において、それを鳴らす5人の今の音は明らかに「最新型」だった。そこに“DIFFERENT SENSE”“「欲巣にDREAMBOX」あるいは成熟の理念と冷たい雨”といった最新フルアルバム『DUM SPIRO SPERO』の収録曲や最新シングル“輪郭”が加わり、“蜜と唾”“CONCEIVED SORROW”といったアーカイヴが加わり……といったセットリストが妖しく乱反射しながら、DIR EN GREYの「今」をよりいっそう鮮烈に描き出していく。

DIR EN GREY @ 新木場スタジオコースト
DIR EN GREY @ 新木場スタジオコースト
DIR EN GREY @ 新木場スタジオコースト
壮絶なスラッシュ・ビートと京のグロウルで会場を一気に戦慄で塗り潰した“業”、ハード・エッジなアンサンブルとアリアの如き朗々たる京の絶唱とのコントラストが映える“DIFFERENT SENSE”といった怒濤の序盤から、オーディエンスを絶頂へと煽り立てていたDIR EN GREYの5人。そして、京のファルセットが描き出す“輪郭”の麗しのメロディがスタジオコーストの闇を照射した後の、ヘヴィなリズムがでっかくとぐろを巻いた中盤。Toshiyaのベースが繰り出す魅惑の重低音から流れ込んだ“Bottom of the death valley”で凄絶に鳴り渡る虚無の世界。そして、舞台上方に設置されていた透明なスクリーンがメンバー5人とオーディエンスの間に降りてきたところで、“THE BLOSSOMING BEELZEBUB”に続いて披露された“蜜と唾”。衝撃的な言葉が次々とステージ背後を彩る中、「ステージ後方の小型カメラが捉えてスクリーンに映し出した京の映像」と「背後から京を映し出したシルエット」、「その奥に見える京の実像」の3つが重なり合ったその場面が、不穏なまでの緊迫感を生み出していく。

DIR EN GREY @ 新木場スタジオコースト
そして終盤、“OBSCURE”“冷血なりせば”といった激烈ライブ・アンセムとともに大きなクライマックスを刻んだのが“Unraveling”。人間の多面性そのままに、時に艶やかにメロディを歌い上げ、時に空も裂けよとばかりの叫びと唸りを上げる京。薫&Dieのギターが妖しく絡み合い、Toshiya&Shinyaの重低音ビートが地を割るように響き渡る……黒に黒を塗り重ね、狂気と狂騒を突き抜けた果てにしか描き得ない、目映いばかりに胸を射るサウンドスケープが、スタジオコーストを歓喜の異次元へと導いていたのが印象的だった。1曲1曲に生命力の限りを注ぎ込み、本編終了後、ふらつきながら舞台を後にする京の姿が、さらに熱い歓喜の叫びを巻き起こしていく。

DIR EN GREY @ 新木場スタジオコースト
アンコールを求めるオーディエンスの声が割れんばかりに鳴り響く中、再びオン・ステージした5人。 それこそ2つ目の心臓を稼働させたようなアグレッシブさでもって、“DECAYED CROW”から会場丸ごと熱狂させていく京。「お前らを1人残らず響かせてくれ!」という京の絶叫がフロア一丸の大合唱を呼び起こした“激しさと、この胸の中で絡み付いた灼熱の闇”。この日の正真正銘ラスト・ナンバーは、『THE UNRAVELING』の最後に収められた“THE FINAL”。残るすべての力を振り絞って、最後のロング・トーンを高らかに歌い上げる京の声が、びりびりと空気と心を震わせ……すべてをシャット・ダウンするかのように舞台が暗転。再び照明が灯ったステージからは、すでに京の姿は消えていた。あまりに鮮やかでドラマチックな幕切れ。ライブの余韻を噛み締めるかのように、ステージドリンクの水やピックやスティックなどをフロアに投げ込んでいく薫、Die、Toshiya、Shinyaの4人。感慨深げに1人また1人と舞台を後にする彼らに、惜しみない拍手と歓声がいつまでも鳴り響いていた。ロック・ミュージックが到達し得る、究極の暗黒にして珠玉のアートフォームが、この日はどこまでも生々しく、美しく展開されていた。最高のアクトだった。(高橋智樹)


[SET LIST]
(SE 狂骨の鳴り)
01.業
02.DIFFERENT SENSE
03.Unknown.Despair.Lost
04.輪郭
05.「欲巣にDREAMBOX」あるいは成熟の理念と冷たい雨
06.Bottom of the death valley
07.THE BLOSSOMING BEELZEBUB
08.蜜と唾
09.CONCEIVED SORROW
10.かすみ
11.霧と繭
12.Unraveling
13.OBSCURE
14.冷血なりせば
encore
15.DECAYED CROW
16.羅刹国
17.激しさと、この胸の中で絡み付いた灼熱の闇
18.THE FINAL
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