Ozzfest Japan 2013 2日目 @ 幕張メッセ 9~11ホール

Ozzfest Japan 2013 2日目 @ 幕張メッセ 9~11ホール - Black Sabbath  all pics by (c)Ozzfest JapanBlack Sabbath all pics by (c)Ozzfest Japan
記念すべき日本初開催となるオズフェスト2日目、本日も幕張メッセにはバンドT(黒率9割)を着込んだ気合の入ったファンがみっちりと集まった。初日のレポート(http://ro69.jp/live/detail/82153)でも触れられているが、何といっても本日の最重要トピックは、ブラック・サバスである。オズフェストとはそもそもオジーおよびサバスのための祭典であるのだから当然のことではあるが、ここ日本においては別の意味合いが乗ってくる。数度シンガーが変わっているサバスの歴史の中で、オリジナル・フロントマンのオジー・オズボーンを含む編成での来日公演はこれが初。控えめに言っても、超弩級の事件である。オリジナル・メンバーのうちドラムのビル・ワードがギャラ問題で揉め離脱してしまっていることが残念だが、限りなく原型に近いサバスをここ日本でついに、観られることになった。以下、この日の個人的なハイライトをレポートしていく。出演バンドのどれもが程度の差はあれどサバスへの影響やリスペクトを滲ませていたのが本当に素晴らしかった。ラウド・ロック音楽の世界において、全ての道はサバスに通ずるのである。

Ozzfest Japan 2013 2日目 @ 幕張メッセ 9~11ホール - coldraincoldrain
巨大なフロアに同サイズの2つのステージが横並びに配置された今回の会場。交互にライヴをすることによって各アクトのセットチェンジ時間が10分程度で済んだのはなかなか快適だった。オープニング・アクトのHEAD PHONES PRESIDENTとfadeを経てPURPLE STAGEに登場したのはcoldrain。登場と同時にフルテンションで、良い意味で分かりやすく即効性の高いメタリック・サウンドとロマンティックな歌メロが混交したハイブリッドな音像によってじわじわとフロアを沸かし、日本のラウド・ロックの明日を担っていくホープとしての存在感を示していた。ヴォーカルMasatoは「中学生の時からオズフェストに出ることを夢見てきた」とMCで語っていたが、そうした先達への思いがそのまま熱量になったような気持ちの良いステージだった。

Ozzfest Japan 2013 2日目 @ 幕張メッセ 9~11ホール - AA=AA=
一方、BLACK STAGEで胸が熱くなったのは、ANTHEMに続いてステージに立ったAA=だ。ライヴ中にTAKESHIは「個人的には3度目のオズフェスト出演となります。初めて日本で開催されるオズフェスト、どれほどのものか確かめに来ました……やっぱり最高でした、オズフェスト!」と語っていた。オジー率いるブラック・サバスの来日が実現した今回のオズフェスト、少なくとも今日ここで鳴った音楽に対する言葉として、これ以上正しいものはないだろう。そして、そのMCの後に披露された新曲がまた途轍もなかった。高音の重なりが絶妙にコントロールされたビートの完成度はもちろんだが、これまでよりさらに開かれたメロディが乗った、『#3』以降の流れを推し進めたような楽曲で、AA=がさらに進化していることを感じることができた。リリースに期待が高まるところだ。

Ozzfest Japan 2013 2日目 @ 幕張メッセ 9~11ホール - STONE SOURSTONE SOUR
PURPLE STAGEで白眉の盛り上がりを見せたのは、シリアスな2連作のコンセプト・アルバム『ハウス・オブ・ゴールド・アンド・ボーンズ パート1』『ハウス・オブ・ゴールド・アンド・ボーンズ パート2』をリリースし、キャリアの充実期を迎えているストーン・サワー。まず、最初に放たれたまるで大砲のような音圧に慄いた。また「激しく打ち付ける鈍器のような音」というとドラムやベースと思われるかもしれないが、コリィ・テイラーのヴォーカルはまさにそれ。図抜けて強靭な喉と優れたリズム感があるからこそのことだろう。全てを焼き払うような苛烈さを誇るスリップノットのサウンドに対し、よりストレートな王道のヘヴィ・ロックを主とするストーン・サワーではその点がよりくっきりと浮き立つ。ギッチギチに埋め尽くされたフロアに感動したのか、コリィは終始「ビューティフル、ビューティフル、ビューティフル」「トキオ、サイコー!」などと目の前の光景への感謝を口にしていたし、コリィのギター弾き語りで演奏された“Bother”をフロアが大合唱で迎え打つ一幕も。最後には深々とお辞儀をしてまた帰ってくることを約束してくれた。ファンの愛とバンドの想いが正しく交わり、このような関係が築けている事実は、素直に嬉しくなるものである。

Ozzfest Japan 2013 2日目 @ 幕張メッセ 9~11ホール - DIR EN GREYDIR EN GREY
ストーン・サワーとトゥールの間というスロットで、世界基準の堂々たるステージを繰り広げたのはDIR EN GREY。本当に1人の人間が出しているのかと疑ってしまうのではないかと思えるほど多彩を極めた京のヴォーカリゼーションと、そしてその稀代のシンガーのポテンシャルを余すことなく引き出すために全霊を惜しまない楽器陣の演奏で、ぐいぐい自分たちの世界にオーディエンスを巻き込んでいく。黒いヴェールを被り舞踏のようなパフォーマンスをみせるなどのシアトリカルな演出に、自分の隣にいたペア外国人の観客がすっかり魅せられ「アメイジング……」とこぼし合っていたのが微笑ましかった。もちろん彼らだけではなく、フロアには巨大なサークル・モッシュも。狂気と、狂気をここまで真剣に描かかずにいられない表現者としての誠実さ、そして湧き上がる衝動を、音楽と視覚イメージの力によりここまで鮮やかにエネルギーに転化されたら、誰もがその渦に飲み込まれずにいられないのだろう。見る者全てに何らかの爪痕を残す、「衝撃」としてのロックをこの2013年に完膚なきまで体現するライヴだった。

PURPLE STAGEのトリを飾ったのは、久々の来日となるトゥール。サウンドチェックの段階から、「あぁ、トゥールの音だ」という嘆息混じりのざわめきが起こる。そして心音のようなSEが響く中、1人ずつメンバーが現れ、それぞれ音を出し始める。最後に登場したのは、メイナード・キーナン。Tシャツにジーパンのラフな格好でドラムセットの左側に立つとだけで、存在感が半端ではない。曲が始まり、複雑に入り組んでいながら何故かひどくキャッチーな、比類するものなき「トゥールのロック」がステージ上に建立される。どれだけ不在の時間が長くとも、トゥールの代わりなどいないという事実を改めて実感させられる、有無を言わさぬ説得力に溢れた音像だ。もちろん、だからこそこうして彼らを目撃できる場は、確実に得難い体験となる。激しくモッシュやクラウドサーフが起きるような音楽ではないが、曲間毎にビリビリと空気が震えるような歓声が上がっていたのがその証拠だろう。なかでも今日のライヴで際立っていたのは、ダニー・ケアリーのドラム。音圧をフルで保ったまま、手数や音色の微妙な調整で曲の抑揚を牽引するプレイは、鳥肌が立つほど素晴らしいものだった。そうした4人個々の驚異的なプレイヤビリティによって、ライヴ全体を通して1つの曲であるかのような緻密に計算された流れを有したセットも、聴き手の興奮とシンクロするようなヴィジュアル・ワークも成立する。もう前作から7年というスパンが開いているが、新作を望まずにはいられない。

Ozzfest Japan 2013 2日目 @ 幕張メッセ 9~11ホール - Black SabbathBlack Sabbath
トゥールの圧巻のステージを終え、いよいよ残すはあと1組。「オジー!」というファンの叫びの中にたまに「アイオミー!」が混じるのを聴くと、これから起こることへの期待も一層膨らんでしまう。そして、ついにサバスが登場する。オリジナル・サバスが日本に立ち、おもむろに音を出す。重い!間違いなく、「あの」サバスの音だ。1曲目は“War Pigs”。フロアから特大のシンガロングが巻き起こる。オジーのサバスを目撃できた興奮がそのまま発声されたような大音量だが、サバスの音圧はそれに微塵も押されることなく会場全体を打ちつけ続ける。曲が終わると、やっと今自分たちが置かれている状況を落ち着いて飲み込んだかのように、フロアが再度沸騰する。2曲目“into the Void”ではさらに一段階ギアが入り、文字通り空気を揺るがすような強度のロックンロールが放たれる。この時点で今のサバスが紛れもないトップフォームにあることを誰もが確信したはずだ。そうした、我々の「サバスを見ている感動」が最も高まったのが、“Black Sabbath”。会場中の壁に水玉模様のライティングが当てられ幻想的なムードが醸成されるなか、あのイントロが鳴り響く。そして、ステージのバックドロップにもバンドロゴが光で浮かび上げられる。オリジナル・サバスがここ日本で「俺達がサバスだ」と言っているのだ。

中盤で度肝を抜かれたのが、ギーザーのソロから始まる“N.I.B.”。平歌の迫力もさることながら、後半のギターとベースのソロのぶつけ合いがこの上なく壮絶だった。決して音量が並はずれて大きいわけでも、音数が多いわけでもないのに、4つのパートが鳴らされるべき場所で鳴った結果、ロック音楽におけるマキシマムが導き出されてしまう。これがブラック・サバスという奇跡なのだということを、この曲は端的に物語っていた。また、“Iron Man”の深い陶酔と真にオルタナティヴなダイナミズムでフロアを包み込んだ後には、6月にリリースが予定されている新譜『13』からの“God is Dead ?”が披露された。こうして生で他のサバス・アンセムズと並んで鳴らされると、あらためて楽曲としてのクオリティを実感する。また、このサバス・マナーをふんだんに盛り込んだ新曲を、過去の楽曲たちの後に聴くと、改めてオリジナル・サバスが30年以上前に作った曲達の先鋭性に驚きを禁じ得ないものがある。どの曲もそれぞれ違った試みが施され、どの曲もその試みが成功している。オリジナル・サバスがあくまでどこまでもラディカルなイノヴェイターであったということを直接再確認できる幸福といったらない。しかも、その幸福を、アンコールの“Paranoid”まで含め約90分もの時間与えてもらったのだから、尚更である。『13』がオリジナル・サバスの最後のアルバムになるかもしれないという話もあるなか、この伝説が完遂される前に観ることができて本当に良かった。ブラック・サバス、やっぱりあなたたちが王様だったのだ。(長瀬昇)
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