MUCC @ NHKホール

MUCC @ NHKホール - photo by:緒車寿一photo by:緒車寿一
『MUCC TOUR 2013 ”Shangri-La”』

アンコールに応えて演奏を再開する前に、YUKKE (Ba.)は「最初から楽しかったんだけど、どんどん“楽しい”が加速するツアーでした」と語っていた。なるほど、さもありなん。最新ツアーの、NHKホール・ファイナル2デイズで迎えた最終日。アルバム『シャングリラ』を携えたツアーは、2012年末に計4公演、2013年に入ってからの今回のシリーズでは2月から18公演を駆け抜けてきた。バンド結成15周年イヤーの終盤に差し掛かっているMUCCではあるが、キャリアを重ねるほどに自由度が高くなり、なおかつ一本スジが通っているという表現の現在地を堂々見せつける内容であった。ツアーの裏ファイナルということで予定されていた6/7の沖縄公演の詳細も既に発表されているけれど、逹瑯(Vo.)も「ひとまずこれで一段落」と語っていたので、表ファイナル2日目の模様をレポートしたい。

MUCC @ NHKホール
MUCC @ NHKホール
「I’m fuckin’ ready, motherfuckers!!!」とステージの幕を切って落とした逹瑯が、いきなりグロウルとメロディアスな歌唱にまみれながら、客席全域のヘッド・バンギングを巻き起こす“Mr.Liar”。アルバム『シャングリラ』の楽曲がすべてフィーチャーされたパフォーマンスがスタートする。重厚にしてギラギラと怪しい光を放つようなバンドの出音も凄まじい。“G.G.”ではSATOち(Dr.)の繰り出すアップリフティングなマーチング・ビートに逹瑯の裸足が高く蹴り上げられるというお馴染みのアクションが観る者の高揚感を誘い、雄々しいコーラスが会場内を満たしていった。続く“アルカディア featuring DAISHI DANCE”は、YUKKEがアップライト・ベースを振り回す力強いダンス・ロック・チューン。演奏の最中に「今日は最後の夜だね! まだ夜じゃねえか! 最後まで一緒に楽しもうじゃないか!!」と逹瑯は告げていたが、そうだった。この日のステージは、16時と割に早い時間の開演なのだった。柱状の可動式スクリーンを用いた映像演出も手伝って、屋外はまだ明るいはずなのに異様な狂騒のムードが生み出されてしまっている。

MUCC @ NHKホール
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《壊れた世界の隅っこで 僕らは空を見上げてる》と、逹瑯がその伸びやかな歌声に狂おしいロマンを滲ませるシングル曲“ニルヴァーナ”では、ミヤ(G./Cho.)がその感情表現を率直に伝える鮮やかなギター・ソロを加え、そしてコーラスがオーディエンスに預けられる。「もう明日のことは考えなくていいんでね。あなた方は月曜日かも知れませんけれども。燃えカスのようになって帰りたいと思いますので、見届けてちょうだいね」。どこかトボケた調子で言葉を投げ掛けながらも、明らかに総力戦/完全燃焼のパフォーマンスを見せている逹瑯である。ここまではソリッドでヘヴィなバンド・サウンドと、華々しいエレクトロニック・サウンドを融合させていかにもムックらしいステージが進められてきたわけだが、スウィング歌謡ロックとでも呼ぶべき“ピュアブラック”、ウェスタン風の燃え上がるようなエモーションがひた走る“終着の鐘”、煌めくような美しいサウンドが広がるロマンチックな1曲“夜空のクレパス”と、ライヴ中盤は『シャングリラ』の多彩な表現ボキャブラリーを次々に見せつけてゆく時間帯だ。

MUCC @ NHKホール
逹瑯は「15周年もそろそろ終わりで、16年目のMUCCに期待していてください。また新しい遊びを開発していこうじゃないか、みんなー!」と話していた。意外性にも満ちた、新鮮な視界と感情の形を伝える楽曲たち。バンドが成長するだけ、遊び心も込みで表現は広がってゆく。というか、そうしなければキャリアを積み重ねてゆくことも、そのためのモチベーションを維持することも難しいはずだ。逹瑯が勢い良くハープを吹き鳴らして転がり出す“ファズ”から、強力なラテン・ビートのロックに視界一面のタオル回しが壮観な“風と太陽”、そしてレゲエのトースティングとグルーヴで会場内の空気をこね回す“YOU&I”と、強烈な一体感をもたらしながらステージは終盤戦へと向かっていった。おどろおどろしいヘヴィネスの中で一斉ジャンプが繰り広げられた“蘭鋳”の後には、思い悩みながらも人々を更なる高みへと力強く運ぶ、美しい轟音ナンバー“シャングリラ”で本編をフィニッシュである。

MUCC @ NHKホール
盛大に沸き上がるアンコールの催促に応えると、YUKKEは暗がりの中で光るピックを客席に飛ばすという実験を行ったり、SATOちはミヤのリクエストで「“ネガティヴダンサー”の間違っちゃったヴァージョン」(「なーるほど」「マジでー?」「やったー!」といったサンプリング・ヴォイスがパッドから繰り出される)を披露したりと、まだまだ遊び足りない様子である。逹瑯は「絶対、本番でやらないでね」と釘を刺していた。そして、アンコールの一発目には『シャングリラ』収録曲の中でも異色中の異色ナンバー、ムック流のウェディンング・ソングである“Marry You”を披露。歌いながら、手に掲げたブーケを、後ろ向きに客席に投げ入れてみせる逹瑯。そしてスカの裏打ちギター・カッティングが小気味よく響く“前へ”、『シャングリラ』CDでは69トラック目に当たる爆裂ブラスト・チューン“MAD YACK”、そして圧巻のサイケデリック・トランスなCGアニメーションと共に披露された“MOTHER”と、『シャングリラ』の多彩な世界観がパフォーマンスとして昇華され、見事に描ききってみせたステージであった。各地での2デイズが予定される新ツアーも発表されたムックの新章は、更なるアイデアが盛り込まれて面白いものになってゆくはずだ。(小池宏和)

01. Mr.Liar
02. 塗り潰すなら臙脂
03. G.G.
04. アルカディア featuring DAISHI DANCE
05. ニルヴァーナ
06. ハニー
07. ネガティヴダンサー
08. ピュアブラック
09. 終着の鐘
10. 夜空のクレパス
11. 狂乱狂唱~21st Century Baby~
12. 娼婦
13. ファズ
14. 風と太陽
15. YOU&I
16. 蘭鋳
17. シャングリラ

encore
01. Marry You
02. 前へ
03. MAD YACK
04. MOTHER
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