ART-SCHOOL presents「KINOSHITA NIGHT 2013」(1日目)@ SHIBUYA-AX

ART-SCHOOLの恒例企画にして、昨年6月の開催に続き、今回は敷地内の桜の木も奇麗に開花中のSHIBUYA-AXで2デイズが行われる「KINOSHITA NIGHT」。開演時刻の前には、木下理樹自ら影アナのマイクを取り、注意事項等をアナウンスする。たどたどしくも「モッシュ、ダイヴなどの危険行為は……歓迎します。ただし自己責任で」「……じゃあ、最後まで盛り上がって帰ってください〜」といった彼らしい言葉を投げ掛け、集まったオーディエンスの喝采を浴びていた。この初日の出演者は、ライヴ・アクトにtricot、THE BACK HORN、そしてトリのART-SCHOOL。ステージ転換中のDJを務めるのは、こちらもお馴染みとなった細美武士(the HIATUS)である。

ART-SCHOOL presents「KINOSHITA NIGHT 2013」(1日目)@ SHIBUYA-AX
ART-SCHOOL presents「KINOSHITA NIGHT 2013」(1日目)@ SHIBUYA-AX
『笑っていいとも』のテーマ曲をオープニングSEに賑々しく登場したのは、tricotの4人。唯一の男性メンバーであるkomaki♂(Dr.)は、キダ モティフォ(G./Cho.)から「栗原類」と紹介されていた。トップ・バッター役を堂々引き受ける華やかな登場から、“夢見がちな少女、舞い上がる、空へ”で急転直下に凄絶なバンド・アンサンブルが転がり始める。まくしたてるような中嶋 イッキュウ(Vo./G.)によるヴォーカル・ワークと、ノイズを撒き散らしながらアクロバティックにもつれ合う、バカテクで硬質なサウンド。ステージ中央では、ひときわ小ぶりな体躯のヒロミ・ヒロヒロ(Ba.) が異様に大きく見えるベースをプレイしつつ、激しいステップを踏んでみせる。彼女がとりわけART-SCHOOLの熱心なファンだったらしく、今回の出演を一番に喜んでいたそうだ。オーディエンスの声を受けて中嶋は「ヒロヒロ、可愛いって。あたし、ヴォーカルやのに」とぼやいていたけれど、バカテクなロックを女子力として振り回す意外性というか、スリリングな楽曲に中嶋のフェミニンな声質とエモーションを迸らせる魅力だって負けてはいない。4/24にリリース予定のニュー・・シングル曲“99.974℃”は、これまた予測不可能な展開を持った新次元のブギー・ロックだ。5月からはそのニュー・シングルを携えた全国13公演のツアー(東京・大阪はワンマン)も控えている。終盤は「キノ!」「シタ!」「キ!」「ノシタ!」とユーモラスなコール&レスポンスにオーディエンスを巻き込んでくれた。

ART-SCHOOL presents「KINOSHITA NIGHT 2013」(1日目)@ SHIBUYA-AX
ART-SCHOOL presents「KINOSHITA NIGHT 2013」(1日目)@ SHIBUYA-AX
フロア内の、ステージ向かって左手に設営されたブースから、休む暇も与えずダンス・トラックを投下する細美武士のDJタイム。坂本教授の“メリー・クリスマス・ミスター・ローレンス”やケミカル・ブラザーズのネタを駆使しつつ、バレアリックでどこかスピリチュアルな手応えのトラックがすこぶる心地よい。個人的には深い時間にじっくり踊っていたい感じで、体に馴染む。決してこれみよがしではないけれど、流麗なミックスの中に鮮やかなブレイクを盛り込んでみせるなど、やるならとことん突き詰めないと気が済まないという彼の性分が滲み出るような、本格派DJプレイになっていた。

ART-SCHOOL presents「KINOSHITA NIGHT 2013」(1日目)@ SHIBUYA-AX
ART-SCHOOL presents「KINOSHITA NIGHT 2013」(1日目)@ SHIBUYA-AX
さて、ライヴの2番手はTHE BACK HORNが登場だ。山田将司(Vo.)による念仏のようなシリアスな節回しが全人類に問いかけ、がっちりと巻き込む“雷電”からパフォーマンスがスタート。燃え盛る命をステージにすべて投げ出すような体当たりのパフォーマンスのみならず、近年はキャリアの中で培われてきた高度でオリジナルな音楽的技巧を発揮しつつステージを展開してくれるTHE BACK HORNではあるのだが、今回は前者が勝っていた。ART-SCHOOLとの共演に際しては「時代を一緒に過ごして来たんですけど、なかなか対バンする機会がなくて」「下北沢GARAGEに、木下っていう凄いやつがいるという噂があって」「いろんな意味で凄いやつが」と過去を振り返りつつ、対バンとしての真剣勝負を楽しみ尽くしているように見えた。ライヴ空間を完全にTHE BACK HORNの色に塗り替えてやる、と言わんばかりの、真剣勝負でこそ礼が尽くされたステージだ。「tricotの、何とも気持ちの良いライヴから、THE BACK HORNの気持ちの悪いライヴ、そしてART-SCHOOLのイカレたライヴへと続きますので」とマツ(松田晋二・Dr.)。“シリウス”で獰猛な蠢きを鳴り響かせる岡峰光舟(Ba.)のベース・ラインから、中盤以降は“いつものドア”を“世界中に花束を”といった『リヴスコール』での逃れようのない歌心を届けてくる。そして“ブラックホールバースデイ”に“コバルトブルー”といった歴戦の必殺ナンバーでフロアを揉みくちゃにしてしまうのであった。貫禄を纏いつつも全身全霊が注ぎ込まれた10曲だ。

ART-SCHOOL presents「KINOSHITA NIGHT 2013」(1日目)@ SHIBUYA-AX
ART-SCHOOL presents「KINOSHITA NIGHT 2013」(1日目)@ SHIBUYA-AX
オーディエンスと一緒になって拍手でTHE BACK HORNを見送った細美武士が、今度は華々しいシンセ・フレーズに彩られた現代的なEDMサウンドで盛り上げると、いよいよトリのART-SCHOOLへ。木下理樹(Vo./G.)と戸高賢史(G.)、サポートに中尾憲太郎(Ba.)と藤田勇(Dr.)というラインナップ。この3/13にリリースされた5000枚限定のミニ・アルバム『The Alchemist』に収められた“Dead 1970”で、藤田の2カウントを合図にソリッドな爆走がスタートするのだが、tricotとTHE BACK HORNのパフォーマンスに触発されたのか、もう緊迫感しかない、みたいな素晴らしいステージであった。安定したリズム・セクションを形成するというよりもむしろ、絶大な信頼感をもってART-SCHOOLの二人を引き摺り回し、或いは突き飛ばす中尾と藤田。これが木下の持ち合わせる危うさと相まって、今のART-SCHOOLでしかあり得ないヴァイヴを生み出してゆく。“DIVA”から“車輪の下”、“サッドマシーン”といったお馴染みのナンバーでさえ、予定調和からは遥かに掛け離れたスリルに満ちている。

トディはトディで、リズム隊の挑発を受け止めながらギターを搔き毟って轟音のギター音響を繰り出し、或いは“SWAN DIVE”での美麗なギター・プレイをロマンチックな物語に寄り添わせてゆく。『The Alchemist』に連動した一幕としては、“Helpless”でサックス奏者の本澤賢士が、“The Night is Young”と“フローズン ガール”では女性ヴォーカリストのUCARY & THE VALENTINEがそれぞれゲスト出演。ぶっ飛んだ爆走モードのステージの中にも、豊かな楽曲アレンジの広がりによってアクセントをもたらしてくれた。4人のみの編成に戻って“BOY MEETS GIRL”が披露されるや否や、またもやスリリングなアンサンブルが立ち上がってくるのには笑ったけれども。“FADE TO BLACK”の最後には中尾がステージ上で転げ回る大熱演で、対バン企画なのにダブル・アンコールにまで応えてしまった。“ロリータ キルズ ミー”や“スカーレット”は恐ろしくBPMが速い。「『KINOSHITA NIGHT』のために古い曲を練習して来たんだけど、失敗しても……ツイッターとか……呟くなっ」と最後に披露されたのは“FIONA APPLE GIRL”であった。感無量である。お祭り企画でありながら、若い世代から寄せられるリスペクト精神や、同世代のライヴァル意識が溢れ出て実に刺激的だった一夜。翌24日には、ART-SCHOOLと細美武士(DJ)が引き続き出演、BIGMAMAに0.8秒と衝撃。を迎えて2日目が繰り広げられる。こちらも凄い夜になりそうだ。(小池宏和)

■tricot
01 夢見がちな少女、舞い上がる、空へ
02 飛べ
03 アナメイン
04 おもてなし
05 しちならべ
06 99.974℃
07 爆裂パニエさん
08 MATSURI

■THE BACK HORN
01 雷電
02 声
03 シリウス
04 野生の太陽
05 超常現象
06 いつものドアを
07 世界中に花束を
08 シンフォニア
09 ブラックホールバースデイ
10 コバルトブルー

■ART-SCHOOL
01 Dead 1970
02 BABY ACID BABY
03 DIVA
04 車輪の下
05 サッドマシーン
06 左ききのキキ
07 BLACK SUNSHINE
08 イディオット
09 SWAN DIVE
10 Helpless
11 The Night is Young
12 フローズン ガール
13 BOY MEETS GIRL
14 UNDER MY SKIN
15 FADE TO BLACK
16 あと10秒で

EN1-1 Heart Beat
EN1-2 ロリータ キルズ ミー
EN1-3 スカーレット

EN2-1 FIONA APPLE GIRL
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