■奥田民生
01.ドースル?
02.さすらい
03.家に帰れば
04.野ばら
05.スカイウォーカー
06.My Back Pages
07.イオン
08.月ひとしずく
09.ひとりカンタビレのテーマ
10.無限の風
11.サマーヌード
12.イージュー☆ライダー
すでにアジカンの機材がセットされたステージの前方に、エレキ・ギターのセット+αの機材だけを並べたシンプルなセッティング。「1時間あるからね。1時間たっぷり……4曲ぐらいでいきたいと思います!(笑)」と冗談めかして言っていた民生だが、“さすらい”“無限の風”といったシングル曲も盛り込んではあるものの、“ドースル?”“イオン”といった楽曲や“My Back Pages”(地球三兄弟のきっかけにもなったボブ・ディランのカバー)まで実にたっぷり12曲。そして、時折リズムマシンを絡めながらほぼ弾き語りで歌い上げたこの日のアクトから浮かび上がるのは、民生随一のカラッとした、それでいて拭いようもないメランコリック感に満ちたブルースであり、それをエンターテインメントとして聴かせてしまう骨太な包容力であり、ギター1本にアレンジのアイデアが凝縮されているような彼のギター・マジックだった。
「今日は平山さんの還暦……と、あの、本のやつ……で、呼ばれました!」と照れくさそうに挨拶していた民生。「『平山さんの記事が好きです!』とかいう人はあんまし傍にいてほしくないですが(笑)、平山さんはデビュー当時からお世話になってますんでね」と80年代を振り返りつつ、「平山さんがね、リクエストをしてきたんですよ。さすが平山雄一、シブいやつを……」と披露したのは“家に帰れば”。「新曲がないんだよね……だいぶ前だなこれも」と言いつつ“ひとりカンタビレのテーマ”を滋味深く響かせ、“無限の風”の絶唱でフロアを震わせ――という名場面が続く中、ライブはあっという間に終盤へ。「こんな飛び道具で終わっていいのかな?」と笑いながら、ベースを手にして演奏し始めたのは、地球三兄弟でのレパートリーでもあった真心ブラザーズ“サマーヌード”! 流麗なベースラインを弾きながら歌っていた――が、途中で「ベース無理!」と中断してギターに持ち替えて爆笑を誘うのもご愛嬌。最後は“イージュー☆ライダー”で熱いシンガロングを巻き起こして終了。意気揚々とギターを掲げてみせる民生に、ひときわ高らかな喝采が巻き起こる。
■ASIAN KUNG-FU GENERATION
01.それでは、また明日
02.AとZ
03.新世紀のラブソング
04.無限グライダー
05.マーチングバンド
06.N2
07.No.9
08.リライト
09.ループ&ループ
10.今を生きて
布袋寅泰/ゴスペラーズ/MISIA/電大/浜崎貴司/スピッツといった錚々たるアーティストからの平山氏へのメッセージ映像に続いて後攻:アジカンが登場。いやあ、すごい。「衝動や疾走感に身を任せて」といった趣ではなく、むしろ1音1音じっくりと感触を確かめながら演奏しているように見えるのだが、それでも楽曲とサウンドの1つ1つの持つエネルギーがとにかく巨大。後藤正文/喜多建介/山田貴洋/伊地知潔の4人に上田禎(G・Key)、三原重夫(Perc)、岩崎愛(Cho)をサポートに迎えた、昨年のツアーから続く7人編成でのアンサンブルも、“それでは、また明日”“AとZ”など最新アルバム『ランドマーク』収録曲はもちろん、“ループ&ループ”“リライト”といった初期曲も含めて、強くしなやかに鳴らす「今」のアジカンの音の肉体の確かな一体感を感じさせる。オープニング映像の中でも、「中3の頃から憧れていた」という奥田民生との共演を喜ぶコメントを寄せていたゴッチ。「平山さんと出会った頃の曲を……」と1stアルバム『君繋ファイブエム』から“無限グライダー”を選んでいたのは、もしかしたらこの日“無限の風”を曲目に盛り込んでいた民生への彼なりのリスペクトでもあったのかもしれない。
■アンコール(奥田民生 & ASIAN KUNG-FU GENERATION)
01.マシマロ
02.君という花
アンコールを求めるオーディエンスに応えて、再びステージに登場したアジカン。そして、ゴッチの隣にはもう1本のマイクが。「1人メンバーが増えます。奥田民生!」というゴッチのコールを受けて登場した民生の「がんばります!」の言葉に、割れんばかりの大歓声が沸き上がる! 軽快に走り出したキヨシのビートはなんと“マシマロ”! ゴッチが《だめな僕を気にしない ひげのびても気にしない》と歌い出すと、その歓声はさらに熱を増す。そして、この日のフィナーレは8人編成での“君という花”! Zepp丸ごと揺さぶるほどのフロア一丸大ジャンプが巻き起こる中、あのメロディを民生が歌い、レスポールを駆って絶品のロックンロール・ソロを奏でる! ハンドマイクでステージ最前へと歩み出たゴッチに、ギターを弾きながら歩み寄っていく民生。日本のロックを切り開き続ける2組の共演が、奇跡的なまでの多幸感を生み出したステージだった。(高橋智樹)