対バンがライヴの醍醐味であるならば、この日の渋谷WWWでは、それを濃厚に味わえるはず。何たって、ラインナップはキノコホテルとN'夙川BOYS! ぎっしりのフロアから漂う期待値もハンパない。
先攻はキノコホテル。まずイザベル=ケメ鴨川、ファビエンヌ猪苗代、ジュリエッタ霧島が楽器を打ち鳴らしはじまったのは、“キノコホテルのテーマ”。焦らしに焦らして、やっと拡声器を片手にマリアンヌ東雲が登場。悠々踊りながら演奏に加わり、“球体関節”へ。クールな佇まいながら、突如《私はもえているのよ》と絶唱する、そのスリリングな色気にドキドキさせられる。昨年末に加入したベーシスト、ジュリエッタ霧島も、バンドにグルーヴを与えているのはもちろん、ニコニコ楽しそうなのがいい。さらに“真っ赤なゼリー”では、マリアンヌがハンドマイクで、オーディエンスに食らいつき歌うと、ケメも前に出てギターソロ。ますます、サウンドでもヴィジュアルでも魅せられるようになった彼女たちに、ライヴを体感すべきバンドだと痛感した。
MCでは「今日、九割夙川のお客さんじゃないよね」と疑うと、たくさんの歓声が送られる……ものの「もっと意地を見せろ!」と厳しいマリアンヌ様。そして「夙川と共演したF-X(2月20日に福岡で行われたイベント)で、あるものを共同制作したんです。それは後ほど」と、含みを持たせながら、ムーディなイントロの“ノイジーベイビー”へ。さらに、ブレイクの緊迫感が最高に気持ち良かった “愛と教育”、マリアンヌのノイジーなギターが轟いた“セクサロイドM”と畳み掛けていく。さらにマリアンヌが「もうちょっと盛り上がってくれないと、困ることがあるのよね」と、言いつつ、ライヴ告知をしていると、その後ろで無邪気にタオルを投げ合っているケメとファービー。それにキレるマリアンヌ……どこまで演出なの!?と思えるくらい、絶妙なコンビネーションだ(笑)。終盤は、マリアンヌがハンドマイクで舞いながら、オーディエンスを指さしまくった“キノコノトリコ”、従業員紹介のド派手なソロを織り交ぜた(マリアンヌはCO2を噴射!)“♯84”と続け、フィナーレの“キノコホテル唱歌”へ。マリアンヌは鍵盤に乗り、これ以上ないくらいセクシーに激しく弾きまくる。それでいて、マイクをフロアに向け、シンガロングを起こしている様子からは、ステージだけで成立しないエンタテインメントを求めていることが伝わってきた。高まり切った熱狂に、マリアンヌはキスを投げてステージを降りた。
後攻はN'夙川BOYS。暗闇に現れると、リンダdadaの真っ赤なトップスと、シンノスケBOYsがくわえたサイリウムが光る。そして、シンノスケがフライヤーをばら撒き、マーヤLOVEが“W・W・W”(この会場にピッタリ!)を歌い出してライヴはスタート。さらに“プラネットマジック”で、リンダのキュートな声と、マーヤの絶唱が、この二人じゃなきゃ無理でしょ!?という息の合ったハーモニーを聴かせていく。そして「自由に楽しまないかい?」とマーヤが言い、シンノスケがサイリウムを投げ“Freedom”へ。文字通り、ステージもフロアも、どんどん解き放たれていく。その盛り上がりに、まだまだ序盤ながら、マーヤとリンダも「暑い!」と連呼。せっかく冬のいで立ちにして、マフラーを巻いてきたものの「ライブハウスでは必要なかったぜ!」とマーヤが言うくらいだ。そんな気合いも納得。夙川は、キノコホテルとの対バンを、とても楽しみにしていたのだという。「マリアンヌ様がなかなか喋ってくれなかったんだけど、F-Xで向こうから話しかけてくれて。この日に間に合ったことが嬉しい」と笑顔を見せるマーヤ。
そして「ちょっと久しぶりの曲を」と、ゆったりした“HERO IN BOY”から、「セットリストにはないけど、聞いてくれる?」と“アダムとイヴがそっと”も披露! シンノスケが背中でギターを弾きつつダイブすると、マーヤも続く。メンバー自ら自由を存分に体現してくれるバンドであることを、再確認。その思いはフロアにも伝染し、「曲が増えたけど、もっとやっていい?」とリンダが可愛く問うと、大歓声が起きていた。ハイライトは、“物語はちと?不安定”。シンノスケがスピーカーから照明のタワーにまで高々とよじ登り、華麗なソロを披露! そしてマーヤも、「ヤバイ奴らが手を組めば、ヤバイことになるに決まってるやんけ!」と言いながら、オーディエンスの頭上でコール&レスポンスを敢行! しかし、彼らの場合は、ぶっ飛んでいるだけではない。「次の曲は、メガネを外さなきゃいけない。ここまでで、一人一人の顔を、覚えてないけど見た。次の曲は見えなくていい!」というマーヤの言葉から、“死神DANCE”へ。そう、彼らのパフォーマンスは、全て愛ある故なのだ。マーヤは真っ黒に縁取った目を剥き出しにして、超絶にエモーショナルに歌い上げて、ライヴを締め括った。
アンコールの拍手に迎えられて、再び三人が登場。チョッ速の“フェアリー”をブチかますと「マリアンヌ様が何か言ってたよね」とマーヤ。すると、キノコホテルの4人がオン・ステージ! マリアンヌだけフロアから革ジャンで現れ、言葉を噛んでしまったマーヤに蹴り数発。期待を裏切りません(笑)。そして、シンノスケのギターをバックに、特別に作ったTシャツを投げまくる。最後はファービーがドラムを叩きだし、みんな踊りだし、完全にパーティの趣! 確固たる世界観を持ちながら、何よりもオーディエンス思いの2バンドらしいエンディングだった。マリアンヌは「2.26事件よ」と言っていたが、まさに記憶に刻まれる対バンとなった。(高橋美穂)
セットリスト
●キノコホテル
1.キノコホテルのテーマ
2.球体関節
3.業火
4.真っ赤なゼリー
5.ノイジーベイビー
6.すべて売り物
7.愛と教育
8.セクサロイドM
9.エレキでスイム
10.悪魔なファズ
11.キノコノトリコ
12.#84
13.キノコホテル唱歌
●N'夙川BOYS
1. W・W・W
2. プラネットマジック
3. Freedom
4. 路地裏BE-POP
5. homework
6. HERO IN BOY
7. アダムとイブがそっと
8. Candy People
9. 物語はちと?不安定
10. 死神DANCE
En. フェアリー
キノコホテル × N'夙川BOYS @ 渋谷WWW
2013.02.26