ストレイテナー @ 日本武道館

「21st CENTURY ROCK BAND」

ストレイテナー @ 日本武道館
ストレイテナーが、メジャーデビュー10周年を記念して「21st CENTURY ROCK BAND」と題した日本武道館公演を開催した。投票を募ってセットリストを決めるという企画で、オーディエンスも開催前からワクワクせずにはいられなかったのだろう。ソールドアウトを果たし、ぎっしりと埋め尽くされた客席からは、「遂に始まる!」と言わんばかりの喜びの歓声が巻き起こる。

まずは、この10年を振り返る映像がスクリーンに流れる。ホリエアツシとナカヤマシンペイの二人だったストレイテナーは、04年に日向秀和が正式に加入し、08年には大山純が加入し、恐れずに変化してきた。そういった編成や、音楽性、映像などに至るまで、やりたいことを具現化してきた歴史を、改めて感じさせられた。

ストレイテナー @ 日本武道館
ストレイテナー @ 日本武道館
映像が終わり、ハンドクラップが起こると、暗闇の中を4人がオン・ステージ。シンペイが大きく手を挙げてはじまった1曲目は“TRAVELING GARGOYLE”。テナーをライヴバンドとして成長させてきた納得の選曲に、オーディエンスも沸き上がる。そして“Ark”、“星の夢”と畳み掛けていく。

ここまで終えたところで、「おーい!」と呼び掛けるホリエ。「日本武道館、元気なのか!? 席があるからって縮こまってたら、もったいねえぞ!」――たくさんのオーディエンスに向かって、堂々と煽れる逞しさは、この10年で培われたものだろう。さらに「今日はみなさんが選んでくれた曲をやります。みんな受け取る側ではないですよ。作り手ですよ。だから、感謝の気持ちと魂を込めて演奏します」と、ライヴの趣旨をストレートに説明。そして「さっそく、これがなかったら1回もやらずに終えていたであろう曲」と“LEAP IN THE DARK”を鳴らし出す。その後も、“Discography”や“KILLER TUNE”など、ライヴで踊らせてきた楽曲を交えつつも、次々と「おっ!?」と驚く楽曲が飛び出してきた。ホリエ「王道な曲が選ばれるかと思ったら、なかなかマニアックで重いよね(笑)」、シンペイ「『帰れま10』だったら、絶対帰れない(笑)」という会話もあったように、メンバー自身も意外だったんだろう。このセットリストは、テナーのファンは、想像以上にコアに彼らを愛しているという表れだったと思う。そんな人たちだけで武道館が埋まってしまうのだから……何て幸福なことだろうか。さらに“COLD SLEEP”のような懐かしい楽曲でも、2階席まで盛り上がるのだから。この楽曲に、こんな未来が待っていたなんて。まだ前半戦なのに、込み上げるものがあった。ひなっちの先導でハンドクラップが広がった“Fawell Dear Deadman”では、早くもフィナーレのような空気が生まれ、“Lightning”、“シンクロ”など、ホリエが鍵盤を弾く楽曲も続き、武道館はしみじみとした感慨に満たされていく。

ストレイテナー @ 日本武道館
次のMCで、ホリエは「(武道館)二回目なんですよ。でも、一回目よりめっちゃ力入ってる」と、09年の『Nexus』ツアー以来の武道館への思いを語る。するとシンペイが「わかるよ。まだ武道館できるんだ、みたいな。ベテラン選手の代打の打席みたいな」と喩えていたが、まだまだ代打じゃないんじゃないかな?と思ったのは、私だけだろうか(そこでホリエが「山倉とか、川藤とか」と言った時には、おーい、世代が出てる!と思ったけれど。笑)。

鳴りやまぬメンバーを呼ぶ声を、ホリエは武道館という距離感を感じないような「シーッ」という言い方で収めて、“Dive”へ。その穏やかなまま“SAD AND BEAUTIFULL WORLD”に滑り込み、途中からバンドサウンドへ。さらに“From Noon Till Dawn”では、タブゾンビと元晴(SOIL&”PIMP“SESSIONS)と田中邦和が参加し、ステージはパーッと華やかに。その後も、シンペイの「日本武道館のバーサーカーたちへ!」という声ではじまった“BERSERKER TUNE”、客席が明るく照らされた“YES,SIR”とハイライトに次ぐハイライトの展開となった。

ストレイテナー @ 日本武道館
ストレイテナー @ 日本武道館
ストレイテナー @ 日本武道館
いよいよ終盤。ホリエは「メジャーデビュー10周年なんで、バンドの歴史はもっと長いし、ひなっち入って、OJ入って、何処に節目を持ってきていいかわからないので(笑)、今年はガッツリやっていこうと思います」と、一筋縄ではいかない歴史を築いてきた彼ららしい理由を語る。そして、さらに彼ららしい言葉を放ったのだ。「これから先の夢とかないんでね。ヒットチャートに入りたいとか、中学生の頃は抱いていたけれど、あんなん八百長だからね(笑)」――武道館のステージに立つほどの人間が「夢がない」と言ってしまうこと。もしかしたら、批判もあるかもしれない。でも、これは、彼らが目に見えない夢ではなく、目に見える人たちを信じていることの裏返しだと思うのだ。ホリエは「俺たちサービス精神があんまないけれど、ファンに恵まれて……チームやミュージシャンの仲間にも恵まれて……」とも言っていた。だからこそ、武道館でこういったライヴを行ったのだと思う。投票で決まった楽曲に忠実にセットリストを組むことは、恐らく大変だったはず。でも、それでも、彼らとしては、そこに大いに意味があったのだ。彼らが10年間を掛けて掴んだものは、メジャーに対して捻くれたイメージで抱くような、脆い地位でも権力でもなく、不変的な縁だったんだろう。彼ら自身も、10年前と変わらず、音楽好きのいち人間というところから、全くブレていないように見える。それは、他のアーティストと比べてみても、なかなかできることではないと思うのだ。

ストレイテナー @ 日本武道館
“MARCH”で本編を締め括って、4人はステージを降りた。アンコールに応えて出てきたのは、ホリエとシンペイだけ。あれ?と思っていると、二人は抱き合って、二人だけで“SILVER STAR”を鳴らし出したのだ! 個人的にも、二人テナーを見るのは、10年くらい前の下北沢シェルター以来だったように思う。そして、ひなっちが出てきて、やはり二人と抱き合い、“MAGIC WORDS”へ。さらにOJが出てきて、3人と抱き合い、“ネクサス”。最後はホリエの「これから10年先も、このバンドを、この音楽を応援して下さい」という言葉から“Melodic Storm”へ――そう、アンコールには、彼らの物語が凝縮されていた。二人から三人、三人から四人、そしてオーディエンスを含んで大きな存在となったテナー。感動はダブルアンコールを巻き起こし、ホリエは仲間に語りかけるように「俺たちの音楽が、みんなの何かの支えになればいいと思います」と言い、本当のラスト“ROCKSTEADY”へ。演奏が終わっても、暫く拍手が鳴り止まなかった。

最後に、投票の結果がスクリーンに流れる(1位は“SAD AND BEAUTIFUL WORLD”だった)。そして、5月から12月まで行われる、52本全都道府県ツアーの告知も。投票結果が、ツアーのセットリストを一考する際に影響するといいな、と願わずにはいられなくなった。5月にはベストアルバム『21st CENTURY ROCK BAND』もリリースされる。「君」のためにストレイテナーは在る――それを実感させてくれる1年のはじまりに相応しい、これ以上ないほど愛に溢れたライヴだった。(高橋美穂)


セットリスト

1 TRAVELING GARGOYLE
2 Ark
3 星の夢
4 LEAP IN THE DARK
5 Discography
6 Toneless Twilight
7 Man-like Creatures
8 KILLER TUNE
9 GUNSHIPRIDER
10 WHITE ROOM BLACK STAR
11 COLD SLEEP
12 Farewell Dear Deadman
13 Lightning
14 シンクロ
15 The Novemberist
16 Sunny Suicide
17 ETERNAL
18 Dive
19 SAD AND BEAUTIFUL WORLD
20 AGAINST THE WALL
21 From Noon Till Dawn
22 BERSERKER TUNE
23 YES,SIR
24 羊の群れは丘を登る
25 REMINDER
26 MARCH

EN1 SILVER STAR
EN2 MAGIC WORDS
EN3 ネクサス
EN4 Melodic Storm

WEN ROCKSTEADY
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