SPEEDSTAR RECORDS 20th Anniversary Live 〜LIVE the SPEEDSTAR 20th〜1日目 @ Zepp DiverCity

ロック・レーベルとして1992年に設立され、シーンを支えてきたスピードスター・レコーズは、20周年という大きな節目を迎えた。それを記念して、3日間に亘り、東京・Zepp DiverCityで繰り広げられるアニヴァーサリー・イヴェント。のべ14組の出演が予定されているが、その顔ぶれは豪華絢爛でありながら、世代も音楽性も極めてヴァラエティ豊か。スピードスターがサポートする音楽の、その可能性の幅広さを改めて伝えるイヴェントになりそうだ。ということでまずは、4組が出演した初日の模様をレポートしたい。

■SHEENA & THE ROKKETS
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3日間のトップを務めるのは、スピードスター設立時より在籍、というよりデビュー35周年に至ろうというレジェンドの、SHEENA & THE ROKKETSである。鮎川誠(G./Vo)、奈良敏博(B)、川島一秀(Dr)の3人でTHE ROKKETS名義の“Oh No I'm Flash ホラフキイナズマ”を披露したのち、鮎川が「クイーン・オブ・ロックンロール・ハート!」と呼び込むのは、キラキラとした赤いミニ・ドレスに黒い革ジャンとブーツを合わせた装いがカッコいいシーナだ。鮎川の鋭いギター・リフから始まるザ・キンクスのカヴァー“You Really Got Me”で、ステージ上をセクシーに練り歩きながらその唯一無二のハスキー・ヴォイスを届けてくる。鮎川のギターが右肩上がりに熱を帯び、リズム隊2人が追い込んでゆく“Lemon Tea”では、オーディエンスの体をしっかり暖めるコール&レスポンスも盛り込まれる。シーナは「スピードスターを応援してくれてありがとね! みんなにあったかいハートを、夢を、お届けするレコード会社よ♥」と告げていた。ダイナミックにして、刺激物の塊のような、鉄壁の8ビート・ロックンロールのステージ。最高のトップ・バッターであった。

■AA=
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ものの15分ほどという手際の良い転換を挟み、2番手はTAKESHI UEDAのソロ・ユニットであるAA=。ライヴではTakayoshi Shirakawa(Vo)、児島実(G./Cho)、金子ノブアキ(Dr)という猛者ぞろいのサポート・メンバーもお馴染みだ。膨大な光量を放つようなデジタル・ハードコアのサウンドを繰り出し、瞬く間にオーディエンスを沸騰させてしまう。TAKESHIは「スピードスターにはAA=の前のバンドから世話になっていて……長ったらしい名前なので忘れてしまいましたが(笑)、もう15、6年になるそうです」と語りながら(後に「思い出しました! THE MAD CAPSULE MARKETSでした」と茶目っ気たっぷりに補足)、『#3』モードの自らの歌をフル回転させるパフォーマンスを展開していた。『動物農場』の「七戒」が殴り書きされた幕も掲げられ、人間社会に警鐘を鳴らすシリアスなアート・フォームは不変なのだが、それでも今回は2013年の初ライヴ、しかもアニヴァーサリー・イヴェントということで、ご機嫌なパーティ性をもたらすステージになったように思う。しかし最後に、「才能あふれるヴォーカリストが、昨年末に亡くなりました」「Pay money To my Pain、Kに捧げます」と、震災復興プロジェクトAA=AiDの楽曲でKも参加した“We're not alone”をAA=ヴァージョンで披露する一幕は、シリアスな現実を受け止めて進むTAKESHIの姿勢が表れていて、とりわけ素晴らしかった。AA=は2/13に、ライヴDVD『TOUR #3 ver1.0+2.0』のリリースが控えている。

■ORANGE RANGE
SPEEDSTAR RECORDS 20th Anniversary Live 〜LIVE the SPEEDSTAR 20th〜1日目 @ Zepp DiverCity
3番手は、2012年に自身のレーベルごとスピードスターの所属となったORANGE RANGEである。パーティーということなら水を得た魚も同然、ハイブリッドなパーティ・チューンの連打でオーディエンスを跳ね上がらせる。RYO(Vo)が「沖縄ではね、こういうお祝い事のときに必ずやるダンスがあります! スピードスターの成人式は、音楽に酔いませんか?」とカチャーシーの振りを誘い、YAMATO(Vo)が指笛で景気の良い間の手を入れてゆくという絶妙のコンビネーションはさすが。HIROKI(Vo)に至っては、イヴェントのグッズTシャツにハーフ・パンツという季節感無視の出で立ちでウェーヴを巻き起こしたりしてしまうわけだが、それにしても音楽面のブレーンであるNAOTO(G)と、涼しい顔で強烈なスラップ・ショットを放つYOH(B)らが、ポップなのに一癖も二癖もある楽曲群をパワフルに演奏する姿は凄かった。今回、サポートとしてツーバスのドラムスを叩いていたのはSASSYだ。新旧のナンバーが入り乱れたセットをこの日最速の“鬼ゴロシ”で締め括るまでの、どこまでも自由で、真冬に暑い夏を運んできてしまうようなパフォーマンス。ORANGE RANGEの成長期は、まだまだ留まるところを知らない。

■THE BACK HORN
SPEEDSTAR RECORDS 20th Anniversary Live 〜LIVE the SPEEDSTAR 20th〜1日目 @ Zepp DiverCity
さて、初日のトリとして出演するのは、年明けから『「KYO-MEIツアー」~リヴスコール~』の武道館公演、そして追加公演までを完遂したばかりのTHE BACK HORNだ。この日は、松田晋二(Dr)曰く「スピードスターと出会うきっかけになった」インディーズ時代のデビュー・アルバム『何処へ行く』を再現するスペシャル・セット。“ピンクソーダ”から、鋭利にして重厚なアンサンブルが立ち上がる。繊細な思考から感情を引き出し、生命の爆発を描き出すというパフォーマンスの根本は、当時から今日まで揺るぎないまま残されている。妖艶なスウィンギン・グルーヴを繰り広げる“カラス”では山田将司(Vo)が身をよじらせながら歌い、“冬のミルク”では菅波栄純(G)の奏でるイントロに大きな歓声が沸く。松田は「これからも良い音楽をどんどん作って、音楽で豊かな日本に、世界に、していきたいと思います!」と澱みない決意を告げ、そしてドリーミーなインスト曲“雨乞い”を挟んでからの後半戦は、真に初日のハイライトと呼べる熱狂の時間を生み出してみせた。終盤には山田が「こんな素敵な先輩方のいるレコード会社でやれて嬉しいです。お互いに、素敵な年の取り方が出来たらいいなと思います」と語る。未来を生きてゆくことに強く意識的な、過去作の再現ライヴ。だからこそ、リリース当時にはまだバックホーンのメンバーではなかった岡峰光舟(B)も、アンコールまでの渾身のパフォーマンスで熱狂を分かち合っていた。彼らは2/6にライヴCD『「KYO-MEIツアー」~リヴスコール~』を、また3/26にはDVD『「KYO-MEIツアー」~リヴスコール~ at日本武道館 2013.1.6』を、それぞれリリース予定。初日から素晴らしいパフォーマンスの連続だったが、イヴェントはあと2日、引き続き行われる。(小池宏和)

SET LIST

■SHEENA & THE ROKKETS
1. Oh No I'm Flash ホラフキイナズマ
2. You Really Got Me
3. HAPPY HOUSE
4. Lemon Tea
5. ユー・メイ・ドリーム

■AA=
1. Loser
2. sTEP COde
3. Lasts
4. The Klock
5. GREED...
6. FREEDOM
7. We're not alone

■ORANGE RANGE
1. おしゃれ番長
2. サディスティックサマー
3. 上海ハニー
4. Restart
5. Warning!!
6. GOD69
7. 鬼ゴロシ

■THE BACK HORN
1. ピンクソーダ
2. カラス
3. 冬のミルク
4. 魚雷
5. 雨乞い
6. 怪しき雲ゆき
7. 晩秋
8. 何処へ行く
En. 無限の荒野
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