レキシ @ LIQUIDROOM ebisu

『レキシツアー〜今回は遺跡に行けるのですか?〜』

レキシ @ LIQUIDROOM ebisu
12月5日にリリースした3作目のアルバム『レキミ』を携え、翌12/6の福岡からスタートしたツアー。年明けに追加公演が行われ、そちらも含めてチケットは全公演がソールド・アウトとなった。満員御礼のリキッドルームである。ほら貝の音が鳴り響きバンド・メンバーが旗印を掲げるステージ上で、紋付袴姿の御館様ことレキシ(池田貴史)は、第一声から「どうかしてるよ!」と率先して呆れながらも喜びを隠せない。厳密に言うとレキシはJ-WAVEの年またぎカウントダウン・スタジオ・ライヴを行ったりもしているのだけれど、2013年も晴れて幸先のよい爆笑ライヴで幕を開けた。なお、1月18日には仙台darwinでの追加公演も控えているので演奏曲の表記などはなるべく控えるが、そちらへの参加を楽しみにしている方は以下、レポートの閲覧にご注意を。

「でも、追加公演だと思ってないからね。どうも、マコーレー・カルキンです。今日は晴れてたから、夜空はさぞかし……ナニ? 一面の? 町人じゃないわよ。公家でもないわよ、そう、武士!」というMCに続いて初っ端から歓喜のミラーボール・タイムに突入である。バンド・メンバーはDA小町(G.・町田昌弘/from 100s)、ヒロ出島(Ba.・山口寛男/from 100s)、元気出せ!遣唐使(Piano/Cho・渡和久/from 風味堂)、蹴鞠Chang(Dr.・玉田豊夢/ from 100s)というお馴染みのレキシネームを頂いた猛者たち。御館様はハンド・マイクで歌っていたかと思えば、自らキーボードを引っ張り出し、わざわざオーディエンスに正対して弾きまくる。元気出せ! 遣唐使との連弾で桃色のラビリンスに迷い込むと、《恵比寿からお越しの〜、春日局さま〜、お連れさまがお待ちでございます》と場内アナウンス風のパートにもアドリブを加えて飛ばしまくる。

「人は誰でも一度は忍者になりたいと思う。忍んでる? 忍んでる? 全然見えてるよ! 気配消して。おれ、気配消せるよ(落ち込んでいるようにしか見えない)」とフリーダムな喋りをぶっ込みながらも、今回の御館様はそれなりにステージの時間配分を気にかけていたようだ。その上でしっかり笑いをもぎ取ろうとするから、新作『レキミ』を含めたすべての楽曲の中での「音遊び」がタイトに決まりまくってゆく。鍵盤のイントロが葛城ユキやゴダイゴの曲になってしまって「ちがう、この曲じゃない!」とボケ倒したり、熱いディスコ・ファンクの中で田中邦衛の物真似をしつつオーディエンスを挑発したりといった、スピード感溢れる笑いに目が回る。爽やかで甘酸っぱい恋の駆け引きが綴られたラテン・ファンク・ナンバーは、ユーモアに溢れながらもリアルな心情を描き出してしまっていて見事だ。ここぞとばかりに熱唱を聴かせてくれる。

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「追加公演ということで特にゲストも決めないまま来てしまいましたが、なんと! 立派な平城京」と呼び込まれるのは、足軽先生(MC・いとうせいこう)である。「あけまー!……ってお前が言ってたんだよ! 流行ってるのかと思って言ってみたのに!」とさっそく当たり散らしながらも、『レキミ』収録の“恋の落ち武者”を披露。ヒロ出島がウッド・ベースをプレイする妖しいグルーヴの一曲だが、正直言ってこの曲がライヴでこんなに盛り上がるとは思わなかった。盛大なコール&レスポンスもがっつり挟み込んでフロアが沸き立つ。

そして、本編終盤にかけてはロック色豊かなソリッドなナンバーを並べ、サングラスを外して顔の汗を拭いながら御館様、「え? こんなに人いたの!? もしかしてお金払って来たの!?」と今更びっくりしている。「最後の曲です」「ええー!」「全っ然動じない。そこで負けて何度、2時間が3時間に、3時間が4時間に……負けそうやわー!」とラストの美しいソウル・バラードへ。またもや音遊びで長渕剛“乾杯”に軽く移行してみたら、ゆっくりとグッズのライトを振るオーディエンスがノリノリで大合唱を始めてしまい、結局ワン・コーラス丸々歌いきる羽目に。自業自得である。めげずに“レット・イット・ビー”のメロディも盛り込んで《レキシー レキシー♪》と歌い、「ちゃんちゃらおかしいことばっか言ってますけれども、心の中は感謝で一杯でございます!」と頭を下げる御館様であった。いい歌なんだから普通に歌えばいいのに、決してそれだけでは済まさない男。それがレキシ=御館様である。

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さて、ここからのアンコールも長かった。花飾り(かんざし?)姿のお姫様と化した御館様の、ピアノ弾き語りによる独壇場で笑いを振りまき、風味堂“ナキムシのうた”の旋律を奏でたりもしてさんざん焦らしたのち、「気づいたの。この曲は紋付じゃなく、この衣装でやらんといかんでしょう!」とシークレット・ゲストに齋藤摩羅衛門(Vo./G.・斉藤和義)を迎えてロックンロール・ナンバー“姫君Shake!”を投下だ。齋藤摩羅衛門は自前の着流し姿もレアでかっこいい。「まさか来ると思わんかったでしょう! 来るんやで! レキシ、馬鹿にせんといて!」と御館様も得意気だが、唐突に岩崎良美“タッチ”の歌詞をねじ込んできたりもするので、いよいよ齋藤摩羅衛門からも「やりたい放題だねえ」と呆れられていた。「ここに来てくれることもビックリだけど、その前にレキシに参加してくれたことがビックリだから。いろんなところに書いておいて! レキシは得って」。

さらに、足軽先生とシャカッチ(本当に急な参加だったらしく、お土産に持参したお菓子の化粧箱で仮面を自作していた)が加わり、“狩りから稲作へ”の自由極まりない展開が伸びる伸びる。反復の高揚感の中で《稲作中心ー!》のレスポンスが渦を巻く。恐らくこの日3度目ぐらいの《ウルトラソウルッ!!》のフィニッシュのあとにも、ダブル・アンコールで1曲を披露して実に2時間50分。歴史ネタも音楽も笑いも、高度なスキルに支えられているのに決してマニアックではなくポップに詰め込んでみせる、池ちゃんのバランス感覚は改めて凄かった。(小池宏和)
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