トータス松本 @ 渋谷公会堂

トータス松本 @ 渋谷公会堂 - pic by HAYATO (Leggera)pic by HAYATO (Leggera)
『トータス松本 ツアー 2012 “NEW FACE”』

2枚組の大長編であり、また、ファンクラブ会員には全曲の別バージョンを収録した特別サンプル盤を配布するなど、内容はもちろん作品仕様からして並々ならぬ意欲作となった『NEW FACE』。この2年ぶりの新作を引っさげた全国ツアー、題して『トータス松本 ツアー 2012 “NEW FACE”』が11月14日の福岡国際会議場から幕を開けた。その2、3本目は、「ここ好きなんですよ、独特の音の響きがあって」(ライブ中のMCより)とトータス自身お気に入りの渋谷公会堂。2デイズ公演の初日の模様を――まだツアーも序盤なので極力ネタバレしないよう――ダイジェストでお伝えしたい。

この夜の全体的な印象としては、とにかく「楽しかった!」の一語に尽きるのだけれど、もう少し詳しく述べれば、魂揺さぶる歌唄い・トータス松本の“いま”が全開だった、ということ。「『NEW
FACE』ってアルバム出したんですけど、結構気に入ってるんですよ」と自賛を惜しまない最新作収録ナンバーをたっぷりとセットに組み込み、時にハンドマイクでステージを練り歩きながら歌い踊り、時にエレキやアコースティック・ギターを掻きむしって熱唱し、ある場面ではスタンドマイクに噛み付くようなシャウトを響かせるという、何しろ全編にわたって熱くてエネルギッシュなキャラクターが弾けていたのだ。

トータスを支えるバック・バンドには、初恋の嵐のメンバーであり、斉藤和義のバックも務める隅倉弘至(B)、ROCK'A'TRENCHのギタリストであり事務所の後輩でもある豊田ヒロユキ(G)など敏腕メンバーが揃い、その5人が「バババーン」などではレッド・ツェッペリンばりの図太くも強靭なロック・グルーヴをぶちかましてくるもんだから堪らない。盤石にして心強い後方射撃を得て、「ホールでやると、自分で書いた曲がえらいエエ曲に聴こえますね(笑)」とトータスも気分上々で、いつも以上に伸びやかに、そして高らかに、あの感情とバイタリティに満ちた歌声を響かせていた。

客席をびっしり埋めたオーディエンスがまた熱狂的で、うら若きボーイズ&ガールズからそれほど若くはない(失礼!)元ボーイズ&ガールズ、背広姿のオジサンまで、その誰もがビートに合わせて元気いっぱいに腕を突き上げ、「シブヤー!」というトータスの呼びかけには「イエー!!」と大歓声。「スッキリして帰ってくれよ! モヤモヤとか、いらんもん全部捨てて帰ってくれ!」という言葉に駆られて、日頃溜め込んだ“いらんもん”を全出しする勢いで好き放題にヒートアップ(特にライブ終盤での一体感とパーティ感は格別だった!)。終演後、ココロの中の不純物がきれいサッパリ出尽くしたような爽快感があったのは、この夜も披露された「無我夢中」の一節――<五里霧中でもいい 間違いはひとつもない>――にあるように、かっこ悪いところもアカン部分も含めて、聴く者を丸ごと肯定するトータス・マジックに他ならない。この肯定力こそ、トータス松本のいちばんの武器だ(思えば代表曲「明星」でも、<何もかも 間違いじゃない 何もかも ムダじゃない>と歌われていました)。頑張らないといけないシーンは多いし、とかく気の滅入るようなニュースの多い毎日だからこそ、僕らはたびたび彼のライブに通ってしまうのだろう。これからツアーに参加予定の皆さん、思う存分楽しんでスッキリしてきてください!(奥村明裕)
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