LOUD PARK 12 @ さいたまスーパーアリーナ

LOUD PARK 12 @ さいたまスーパーアリーナ - SLAYERSLAYER
2006年の初開催から早7回目を数える、ヘヴィ・メタル/ラウド系ロック・フェス『LOUD PARK』。今年はスレイヤー/ハロウィン/イン・フレイムスをはじめ強豪勢揃い、しかもここさいたまスーパーアリーナでは初の3ステージ開催!ということもあり、昨年と同じく1日開催ではあるものの、会場に集まったメタル・ファンの数もテンションも昨年より目に見えて熱いし、開場早々オフィシャル・グッズの行列数時間待ち(!)というあたりからも参加者の気合いのほどが窺える。

2つのステージがアリーナの両端にあった昨年の形とは違い(というか、一昨年の方式に戻したというべきか)、2つのメイン・ステージ「ULTIMATE STAGE」(ステージ向かって左)「BIG ROCK STAGE」(向かって右)が左右に隣り合う形で設置されたメイン・アリーナ。そして今年はもう1つ、場所的には可動式スタンドの裏にあたる「コミュニティ・アリーナ」というイベントスペースに、3つ目のステージ=「EXTREME STAGE」を新設。メイン・アリーナとの間の音漏れもないし、日中は光を遮れない(=照明も含めた世界観が作りにくい)こと以外は申し分なし。何より、メイン・ステージ2つに交互にアーティストが登場する、というこれまでの流れにもう1つのステージが加わり、アリーナと「EXTREME STAGE」の間を行き来する人の波が生まれることによって、「フェス」としての躍動感が格段に高まっている。これまでにも、2006年&2009年の幕張メッセでの開催時は3ステージ制で行われてきたわけだが、それがここたまアリでもついに実現!という時点で、7年連続で来ている自分はテンションが上がったのだが、やはり素晴らしかったのはその中身だ。

堂々の大トリを務めたのは、2006年・2009年に続き3度目の『LOUD PARK』出演となるスレイヤー。最新アルバムの『血塗ラレタ世界』から爆風の如く吹き荒れるアンサンブルとスラッシュ・ビート! 「ジュンビ、ハ、イイカ!」のトム・アラヤのコールから“ウォー・アンサンブル”、そして1stから“ダイ・バイ・ザ・スウォード”!と畳み掛け、巨大な空間を激情渦巻く漆黒の闇へと塗り替えていく。ついにはアリーナに特大の渦巻きを描き出すオーディエンスに「Are you excited?」と呼びかけるトム。ウォー!と会場中から高々と沸き上がる雄叫びに、メタルの化身の表情がおもわず満足げにほころんだ場面に、スレイヤーと日本のファン、そして『LOUD PARK』との間の絆が垣間見えて、思わず胸が熱くなった。本編最後に“エンジェル・オブ・デス”も聴けたし、アンコールでは“レイニング・ブラッド”も聴けたし――という珠玉の展開で、アリーナいっぱいのファンはもちろん、そろそろ電車の時間を気にし始めるスタンド席のオーディエンスをも21時半を回ってもなおぎっちり惹きつけてみせる渾身の名演を見せてくれた。

LOUD PARK 12 @ さいたまスーパーアリーナ - HELLOWEENHELLOWEEN
そして、もう1つの「BIG ROCK STAGE」のトリとして登場したのが、これが日本のロック・フェス初登場となるハロウィン!(去年元メンバー=マイケル・キスク&カイ・ハンセンを擁するユニソニックが“アイ・ウォント・アウト”をやったりしてはいるが)。ダニ・ルブレの4バス(!)ドラムが目を引くステージに、ジャーマン・メタルの古豪がオン・ステージ、“アー・ユー・メタル?”のシャウトが轟いた瞬間、そこはメロディックでダイナミックな音のバトルフィールドに変わる。“ホエア・ザ・シナーズ・ゴー”や、「フロム・ニュー・アルバム!」というアンディ・デリスのコールとともに披露された“バーニング・サン”(日本限定EP曲)など最新モードも前面に出しつつ、名曲“イーグル・フライ・フリー”や“アイム・アライブ”といった『守護神伝-第2章-』の曲などを1時間に凝縮したアクト。“パワー”での割れんばかりのシンガロングも、“アイ・ウォント・アウト”で見せた会場一丸のコール&レスポンスも、間違いなく今年の『LOUD PARK』の決定的瞬間だろう。アンコールは“DR. STEIN”。最高だ。

LOUD PARK 12 @ さいたまスーパーアリーナ - IN FLAMESIN FLAMES
LOUD PARK 12 @ さいたまスーパーアリーナ - SONATA ARCTICASONATA ARCTICA
LOUD PARK 12 @ さいたまスーパーアリーナ - BUCKCHERRYBUCKCHERRY
LOUD PARK 12 @ さいたまスーパーアリーナ - SEBASTIAN BACHSEBASTIAN BACH
LOUD PARK 12 @ さいたまスーパーアリーナ - DRAGONFORCEDRAGONFORCE
LOUD PARK 12 @ さいたまスーパーアリーナ - HIBRIAHIBRIA
LOUD PARK 12 @ さいたまスーパーアリーナ - HALESTORMHALESTORM
LOUD PARK 12 @ さいたまスーパーアリーナ - CIRCUS MAXIMUSCIRCUS MAXIMUS
LOUD PARK 12 @ さいたまスーパーアリーナ - CHRISTOPHER AMOTTCHRISTOPHER AMOTT
超硬質オルタナティブ・メタル・サウンドに血沸き肉躍りまくるメイン・アリーナに「ずいぶん静かだな!」と呼びかけてさらに沸点越えの狂騒感を生み出したのはスウェーデンの雄=イン・フレイムスのアンダース。流麗なシンセとトニーのヴォーカリゼーション&ヘヴィなアンサンブルのコントラストが、神話と現実の間を突破するような厳粛な緊迫感を描き出していたソナタ・アークティカ。タトゥーの入った上半身を汗で光らせながら熱いシャウトを放射し、どこか次世代ミック・ジャガー的なロックンロール・アイコンとしての存在感を放っていたバックチェリーのジョシュ。“モンキー・ビジネス”などスキッド・ロウ曲も含め惜しげもなくドロップし、「イッショニ、ウタッテクレ!」と“アイ・リメンバー・ユー”ででっかいシンガロングを巻き起こしたセバスチャン・バック。“ヒーローズ・オブ・アワ・タイム”など文字通りメロディック・スピード・メタルの「メロディック」と「スピード」を極限増幅して恍惚の風景を描き出したドラゴンフォース。ハイトーンのスクリームとギター×2+ベースのタッピングがメロディック・パワー・メタルの異次元を飛び交うブラジル発・ヒブリア。『LOUD PARK 12』唯一の女性ヴォーカルとして会場丸ごと震わせる勢いの激唱を聴かせたヘイルストームのリジー……は、1曲ゲストで登場したセバスチャン・バックになぜかお姫様だっこされていた。シンセ・サウンドやサビでのコーラス一斉掃射でシンフォニックな音空間を作り出していたのはノルウェー発プログレッシブ・メタルの精鋭=サーカス・マキシマス。そして、昨年まで『LOUD PARK』に毎年出演を続けていたアーク・エネミーのマイケル・アモット(アーク・エネミーが出ていない年はスピリチュアル・ベガーズで出演)に代わってアモット家連続出場記録(?)を更新した弟のクリストファー・アモットは、ハイブリッドなサイケデリック・ブルースとでも言うべき独自のロック感を聴かせていた。

LOUD PARK 12 @ さいたまスーパーアリーナ - CHILDREN OF BODOMCHILDREN OF BODOM
LOUD PARK 12 @ さいたまスーパーアリーナ - DIR EN GREYDIR EN GREY
LOUD PARK 12 @ さいたまスーパーアリーナ - CRYPTOPSYCRYPTOPSY
LOUD PARK 12 @ さいたまスーパーアリーナ - 13491349
LOUD PARK 12 @ さいたまスーパーアリーナ - OUTRAGEOUTRAGE
LOUD PARK 12 @ さいたまスーパーアリーナ - NAGLFARNAGLFAR
一方、「EXTREME STAGE」もすごい。タイムテーブル的にはハロウィンの真裏ながら、“ヘイト・ミー”など紅蓮のメロディック・デス・メタル・サウンドで熱狂空間を作り出したチルドレン・オブ・ボドムをはじめ、研ぎ澄まされたアンサンブルと京のグロウル/スクリームで麗しの暗黒とでも言うべき世界を提示してみせたDIR EN GREY、ブルータルな爆走デス・メタルぶりを見せつけたカナダのクリプトプシー、死神そのもののようなメイクと音で観る者を震撼させたノルウェー発ブラック・メタル=1349、結成から実に30年間鍛え上げた魂のメタル・サウンドでオーディエンスを熱く揺さぶったOUTRAGE、クリストファーの絶唱冴えるスウェーデンの雄=ナグルファー……と、メイン・アリーナよりもさらに濃密でダークでエクストリームな音世界を作り出していた。

リンプ・ビズキット/ホワイトスネイクという2大ヘッドライナーの顔合わせがメタル・ファンにある種の困惑を呼んだ昨年とは違い、メタル/ハード・ロック/ヘヴィ・ロックを軸とした『LOUD PARK』の中でも今年はよりその核心だけをゴリッと抉り出したような空気感を実現していたのが印象的だったし、「ジャンル型音楽フェス」の中でもひときわ強い個性を放つ『LOUD PARK』ならではの、オーディエンスとの信頼関係が感じられる1日だったと思う。出演キャンセルになったストーン・サワーがもし今日のラインナップの中にいたら……とつい夢想しつつ、来年の開催を今から楽しみに待つことにしたい。(高橋智樹)

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