中田裕二 @日本橋三井ホール

中田裕二 @日本橋三井ホール - all pics by 河本 悠貴  ※写真は翌日10/27の公演のものですall pics by 河本 悠貴 ※写真は翌日10/27の公演のものです
「わが帝国へようこそ! 中田裕二 with SKB48です。国内屈指のスケベ(=SKB)をここに集結させました。久しぶりの大江戸・日本橋でございます!」という中田裕二の挨拶に、拍手と笑いが沸き起こる――9月19日にリリースされた2ndソロアルバム『MY LITTLEIMPERIAL』を引っ提げた全国ツアー「中田裕二TOUR '12 “IMPESIAL SUITE”」の3公演目となる、東京2DAYSの1日目。場所は1stアルバムのツアー以来、約10ヶ月ぶりとなる日本橋三井ホールである。ほぼひとりで全ての楽器を演奏した前作から一転、熟練のプレイヤーたちを招いた本作では、よりパワフルでダイナミックな歌とサウンドを聴かせてくれた中田。その世界観が堂々と提示されたこの日は、ツアータイトルよろしく「ソロ・アーティスト=中田裕二」の手による「帝国」が2時間強にわたって壮大に築かれたような、華麗な一夜だった。

中田裕二 @日本橋三井ホール
工業地帯を彷彿とさせる、シルバーの鉄骨が組み上げられた舞台セット。街頭を模した照明が設置され、西欧の街並みのようなノスタルジックなイメージを醸し出していた前回のツアーとは、大きく印象の異なるステージ風景だ。そこにカトウタロウ(G/ex.BEAT CRUSADERS)、真船勝博(B/EGO-WRAPPIN' AND THE GOSSIP OF JAXX)、白根賢一(Dr/GREAT3)、野崎泰弘(Key/ちなみに本ツアーはソウル・フラワー・ユニオンの奥野真哉と交代制でキーボードを担当するとのことで、この日は野崎出演日の初日)という強者揃いのメンバーに続いて、三つ揃えのスーツと蝶ネクタイで決めた中田裕二が登場。ライヴの開幕を華やかに告げるファンファーレのようなSEから間髪入れずに1曲目へ雪崩れ込むやいなや、ねっとりうねる極彩色のグルーヴが一気に花開いていく。眩い閃光を放ちながら高速回転するミラーボールのように、場内の隅々まで光を届けていく強靭かつ煌びやかなサウンドは勿論のこと、そこに奥深い歌謡の薫りをまとわせていく中田の伸びやかな歌声が素晴らしい。

中田裕二 @日本橋三井ホール
中田裕二 @日本橋三井ホール
ツアー序盤のため詳細を明かすことはできないが、2ndアルバム『MY LITTLE IMPERIAL』の楽曲を中心に、ソロ・キャリアのレパートリーを惜しみなく披露したセットリスト。ロック/ジャズ/ファンク/ポップなど多彩なサウンドを一糸乱れぬアンサンブルによって完璧に表現しきるプレイヤー陣と、高音と低音を自在に行き来しながらエモーショナルに歌い上げる中田の5人によって、1曲ごとにディープな音世界が築かれていく。開演前は、その濃密な世界観に似つかわしくないほど無機質に思えた舞台セットも、ライヴが進むにつれてその意図が明らかに。華やかなファンクネスが解き放たれた“MY LITTLE IMPERIAL”ではカラフルな照明が鉄骨を照らし、オルガンの音色を基調にしたスローチューン“ノスタルジア”ではセピア色の風景が浮かび上がり、ギターを置いた中田がハンドマイクを片手にエネルギッシュに歌い踊った“迷宮”では真っ赤なライトが燃え上がり……と、心の深淵をダイレクトに浮彫りにしたようなライティングの妙が、シンプルな舞台セットによって最大限に生かされていたように思う。

「去年の日本橋より今日の方がいっぱい入ってる!」とスタートした中盤のMCでは、日本橋高島屋のデパ地下でアルバイトをしていたインディー時代のエピソードを明かした中田。同じく銀座松屋のデパ地下でバイト経験があるというカトウタロウとの絶妙な掛け合いを交えながら、日本橋のお奨めスポットを紹介したり、ツアーグッズをコミカルに紹介したりと、スキのないグルーヴでフロアを圧倒させる演奏中の緊張感とは一転した、とても和やかなムードが築かれていく。本編ラストチューンに入る前のMCでは、「ソロも2年目になり、だいぶノってきました。(10月21日に行われたツアー2公演目の)高崎から4日間ぐらい空いていたんですけど、毎日曲作ってました。もう5曲ぐらいできました(一同拍手)。そのうち披露するので期待してて○×△☆%……!」とカッコよく決める一歩手前で中田が噛み、どっと笑いに包まれる一幕も。そんな非・二枚目な姿もまた、グラマラスに歌い上げる演奏中の姿とは異なる中田の大きな魅力になっていることが、よくわかるシーンだった。

中田裕二 @日本橋三井ホール
しかし。なんと言ってもこの日のライヴで顕著だったのは、バラエティに富んだ楽曲群の中に一貫して流れる「想い」の強さだ。アンコールでは、「今回のアルバムを作る上で重視したのは“ライヴ感
”。前回はソロ初のツアーということで、僕自身も慣れないことが多く気合いが空回りした部分もあって。そこから次のツアーでやりたいことが色々浮かんできて、それを実現すべく今回のアルバムを
作ったんですけど。今日のお客さんのリアクションを見て、アルバムを作って良かったと嬉しく思っています」と語った中田。その言葉どおり、この日披露された曲の数々には、オーディエンスを瞬
時に快楽の彼方へ誘うようなダイナミズムに満ちていた。サンバ調のリズムでオーディエンスを飛び跳ねさせた“DANCE IN FLAMES”しかり、ソウルフルなビートに乗ってむせ返るような色香が放たれ
た“UNDO”しかり、ポップに弾けた“話をしないか”しかり……。それでいて、どの曲でも狂おしいほどに沸々と燃え滾った「君」への思いが一貫して歌われていることにハッとさせられる。もちろん、こうした中田独特のディープな歌詞世界は今に始まったことじゃない。しかし格段に躍動的でオープンになったサウンドによって、その背徳的なエネルギーはより活き活きとした輝きを放っていたし、だからこそ一貫して心に渦巻く情念を開陳せずにはいられない中田裕二の表現者としての「業」のようなものに圧倒される、スリリングなアクトだった。

アンコールでは、ステージを降りてオーディエンスとハイタッチしながら熱っぽい歌声を響かせるシーンも。さらに本ツアーの追加公演として、12月23日の赤坂BLITZ公演も決定! 確固たる表現欲求を
胸に疾走する中田裕二の快進撃は、ここからまだまだ続いていく。(齋藤美穂)
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