フラワーカンパニーズ @ 渋谷公会堂

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フラワーカンパニーズ @ 渋谷公会堂
フラカン、13年ぶりの渋谷公会堂。13年前の時は、お世辞にもいいライヴとはいえない出来で、はっきり言えば「ライヴハウスからホールに移る時に失敗したバンド」の典型みたいな結果に終わってしまい、もっと言えばそのあたりからフラカン、だんだん下降線を描いていって、数年後に契約切れ、ということになる──という意味では、ある種、トラウマと言っていい会場です。
その当時の詳しいことに関しては、この間、鈴木圭介がブログに書いていたし、以前に、このRO69の特集コーナーで、過去を振り返るインタヴューを行った時にも話していた。そのブログはこちら(2012年10月16日のところ)。http://6109.jp/flowercompanyz/ RO69の特集コーナーはこちらです。http://ro69.jp/feat/flowercompanyz201010_2?p=1#ftop

僕もその13年前、観たが、確かに、はっきり言ってコケたライヴだった。ステージに幕が下りていてそれが落ちてライヴが始まるとか、アンコールで“夜明け”をやる時に夜の街の映像を映すとか、そういう演出がいろいろあったし、ステージセットとかもそれなりにあった気がするが、まあ、要は、ハマっていなかった。あと、演出とか以前に、当時、バンド自体、あんまり状態のよくない時期でもあった。要は、さしてやりたいわけでもないのに、それでもやるならどうやるべきなのかということをちゃんと考えないままに、ただ周囲に流されてやってしまった、だから失敗した、ということです。

フラワーカンパニーズ @ 渋谷公会堂
フラワーカンパニーズ @ 渋谷公会堂
というわけで。その13年後の今回は一転、徹頭徹尾フラカンらしいホール・ライヴになった。演出とか一切なし、床もバックも黒一色でステージセット一切なし、ドラムも床にベタ置き、照明だけはふんだんにあるが、これも使い方は至ってシンプル。ライヴハウスのステージのように、まんなかに機材と4人がギュッと集まった形で、次から次へと曲をくり出していくだけのライヴ。で、それで、全然もってしまう。充分もってしまう。すばらしく、もってしまう。そういう2時間40分、全24曲だった。
特に圧巻だったのは2ヵ所。まず、1ヵ所目は、9曲目から16曲目まで。9曲目はちょっとアゲ気味だけど、あとは全部「聴かせる」系の曲。ものすごいテンション、ものすごい説得力、そしてものすごい切実さ、ものすごいリアリティ。前半や後半の、アップテンポの曲でアゲまくる時間よりも、そっちの方がすばらしい、というのが、今のフラカンの実力だなあ、と、観ながらつくづく思った。しかも、名曲“東京タワー”はやらない、“深夜高速”は前半でさらっとやる、そして後半にニューアルバムから“また明日”“エンドロール”をもってきてそこをピークポイントにする、という曲順で。見事にピークポイントになっていた、2曲とも。
そしてもう1ヵ所は、2度目のアンコール。これも、2曲とも「聴かせる」系の曲だけど、1曲目の“夜明け”は、13年前の渋谷公会堂でもアンコールでやった曲。前述のとおり、その時は映像を使ったりしていたが、今回はそういうのなんにもなし、照明も白・青系を点けっぱなしで点滅も切り替えもほぼなし、という、シンプル極まりない見せ方だった。で、最高だった。リベンジでした、確かに。

ただ、お客さん的には、バンドのそういう思いに付き合うのは全然やぶさかではないけど、個人的には渋谷公会堂にそこまで思い入れはないです、という感じではあった、正直。
それがよくわかったのは、後半にグレートが、今日のこれはツアーの1本目で、ラストに追加公演で日比谷野音ワンマンをやる、2013年4月21日です、と発表した時。ものすごい盛り上がりでした。あと、大晦日には下北沢GARDENで久々の年越しワンマンをやる、ということも発表。これも盛り上がっておられました、みなさん。
喜びの大きさでいうと、日比谷野音>下北沢GARDENで年越し>渋谷公会堂、という感じでしょうか。メンバーは心中複雑かもしれないが、ああ、やっぱフラカンのファンだなあ、いいなあ、と、僕は思いました。

フラワーカンパニーズ @ 渋谷公会堂
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あともうひとつ、発表で盛り上がったのは、1月から放映されるドラマのテーマソングをやる、ということ。大根仁が監督、テレビ東京、瑛太と松田龍平が主演する『まほろ駅前番外地』、オープニングがフラカンでエンディングと劇中音楽が坂本慎太郎。モロに大根さんの趣味、という感じだが、フラカン的にはこれ以上ないくらいいいタイアップだと思います。“ビューティフルドリーマー”という新曲を書き下ろしたそうです。

余談。衣裳の話。グレートはいつものオーバーオールではなく黒ハット・白Tシャツに黒いベストに黒いパンツ、圭介はストライプ入った黒いワイシャツ。どうしたんだろう、と思っていたら、1回目のMCで事情が明かされた。ニューアルバム『ハッピーエンド』のジャケット撮影で着た衣裳でステージに出よう、というつもりだったんだけど、メンバー間の伝達がうまくいっていなかったようで、ふたりはその衣裳だけど小西はいつものツナギ、そして竹安は……えーと、何か、てろーんとしたVネックみたいなのを着ている。竹安曰く、その写真で着ているジャケットを脱ぐとこの姿になる、という理由だそうですが、「何それ?」「普段着の方がいいじゃん!」と、圭介&グレートにボロクソに言われる。客席、大笑い。
で、そのまま5曲目“人生GOES ON”から始まるブロックに突入したんだけど、そのしばらくあと、メンバー紹介のコーナーで、竹安、「さっき、あんなに言われて、演奏中にへこんできちゃってさあ……このままだと、13年ぶりなのにそのことしか記憶に残らなくなる……」などと言い、次に小西がメンバー紹介されている最中に、ソデに消える。で、しばらしくして、ちゃんとしたシャツに着替えて、戻ってきました。
みんなさらに大笑い、拍手喝采。メンバーにいじられたから本番中に着替えに行く男、今年43歳。けどそれ、要はそれほどまでに真剣にへこんでたってことで、それだけセンシティヴな人だってことなわけで、私も普段、客前ではないにしても、圭介に負けず劣らず竹安をいじることが多いもんで、今後気をつけよう、と、反省しながら、帰路につきました。(兵庫慎司)

セットリスト(※はニューアルバム『ハッピーエンド』収録曲)
1はぐれ者讃歌
2.脳内百景
3.切符
4.煮込んでロック(※)
5.人生GOES ON(※)
6.空想無宿
7.なれのはて(※)
8.SO LIFE(※)
9.孤高の英雄
10.ロックンロール(※)
11.深夜高速
12.旅待ち(※)
13.感情7号線
14.この胸の中だけ
15.また明日(※)
16.エンドロール(※)
17.終わらないツアー
18.NUDE CORE R&R
19.チェスト
20.恋をしましょう

アンコール1
1.元少年の歌
2.真冬の盆踊り

アンコール2
1.夜明け
2.サヨナラBABY

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