SPARKS GO GO『SHINKIBA JUNCTION 2012〜ファン感謝でー』@新木場STUDIO COAST

SPARKS GO GO『SHINKIBA JUNCTION 2012〜ファン感謝でー』@新木場STUDIO COAST
2005年から「JUNK! JUNK! JUN!」などのタイトルで、SPARKS GO GOが毎年行っているイベントが、今年はタイトルどおり新木場STUDIO COASTで開催。これまでもユニコーンやPUFFYなど、90年代より時代を共にしながら活動し現在に至るラインナップが揃うイベントとして愛されてきた。今回も真心ブラザーズ、奥田民生など願ったり叶ったりのラインナップが並んだほか、期待のニューカマー達や、さらには今回初参加となるマキシマム ザ ホルモンまで登場するとあっては期待も一層膨らむ。

今回はSTUDIO COAST内の通常ステージを「メインステージ」とし、そして屋外のテントにもうひとつ「テントステージ」を設けるという2ステージ制で開催。外の広場には飲食店のブースも並び(彼等の故郷である北海道の「倶知安ブース」も。農産品まで販売)、2つのステージを行き来するにあたりリストバンドも配布されるなど、好天も加わって雰囲気は俄然フェスのそれ。しかも、今回はJCBのサポートの下、完全に無料の招待制というのも嬉しい運びとなった。応募出来るのはファンクラブ会員(タイトルの「ファン感謝でー」というのはそういう経緯から)、そしてJCBカードユーザーなど限定されたものではあるものの、JCBの応募だけでも20万通以上あったというから凄い。ここに集まった2500人はそれだけでも運のいい人達なわけで、そんな喜びもあって会場は開演前から実にいい幸福感に包まれている。

タイムテーブルも2つのステージが交互に進行する段取りで、見ようと思えば全アクトを無理なく見ることが出来る親切設定でした。というわけで、時間を追う順番で全アクトについてミニレポートします。なお、最初に申し上げておきますと、奥田民生と真心ブラザーズが居合わせているという事実から、彼等が新たに結成した「地球三兄弟」が初披露されるのでは?という期待を抱かれた方もいらっしゃると思いますが、残念ながらそれはありませんでした。ただし、奇妙な形での共演はしています。


15:30 nicoten@テントステージ

1 ジンジャーエール
2 Dat Trade
3 アルドレア
4 トビウオ

開演時刻は16時とアナウンスされてはいたものの、開場~開演までの時間を利用したオープングアクトとして登場した3人。この日はサポートにギターを加えた4人編成で演奏。彼等は7月にミニアルバム『メトロナポリタン』でデビューしたばかりのニューカマーで、音楽的にはストレートで明快なメロディーを持った楽曲で飛ばして行くスタイル。こういうバンドは昼の明るい時間帯が似合うな、とも思いながら聴いていたのですが、リズムにはモータウンなファンキーさがあったり、2曲目から早速オーディエンス参加のハンドクラッピングやジャンプを挟んでくるなど、勉強熱心ぶりを強く感じさせる面も。20分という短い時間ながら、その枠内において出来ることをフル実践したであろう、いい充足感がこちらにも残るいいライヴでした。

SPARKS GO GO『SHINKIBA JUNCTION 2012〜ファン感謝でー』@新木場STUDIO COAST
SPARKS GO GO『SHINKIBA JUNCTION 2012〜ファン感謝でー』@新木場STUDIO COAST
16:10 真心ブラザーズ@メインステージ

1 BABY BABY BABY
2 ENDLESS SUMMER NUDE
3 愛
4 空にまいあがれ (with 八熊慎一)
5 どか~ん
6 EVERYBODY SINGIN’ LOVE SONG
7 拝啓、ジョン・レノン
8 Keep on smiling

メインステージでは、開演時間にまず2005年からのこのイベントの思い出の映像が年次ごとに次々と流れた後、SPARKS GO GOの3人による冒頭挨拶に続き、まずは真心ブラザーズが招き入れられる。この日はMB’sとともに10人によるフル編成で登場し、一発目からゴージャスな雰囲気を作ってきた。同時に、SPARKS GO GOのファンクラブ会員が多め、というオーディエンスに配慮してからか、選曲はご覧のとおり彼等と共に時代を開拓した90年代後半の曲にシフトしたメニュー。まずは場内に共有感を満たしていく流れで、トップバッターとしての職務を全うしようとする姿勢で攻める。“EVERYBODY SINGIN’ LOVE SONG”で、それまで後ろの雛壇にいたホーン隊の4人がステージ前面まで降りてきて吹きまくる光景も、あの時代に確立されたもの。途中で八熊慎一が、メロディーが急上昇する、歌うにはなかなか難しそうなナンバー“空にまいあがれ”で共演。登場時の挨拶「こんばんは」からしてすでにかなりな高音で可笑しかったのですが、本人曰く「最初から準備しておかないと歌えない曲」だからそうです。と、言いながら難なく歌いこなしていたところは流石でした。


16:55 UCARY & THE VALENTINE@テントステージ

1 THIS IS THE TERROR GAME
2 MISTY THE WORLD
3 UPSIDE-DOWN CROSS
4 FILTER
5 SYNDROME2

アーティスト名だけ見るとバンドのようですが、こちらはUCARYという19歳の女性シンガーのソロ・プロジェクト。今回はギター、べ―ス、ドラムの3人を従え、本人が時にシンセサイザーを弾きながら、時にマイク片手にステージ前面で歌うというステージ。シンセサイザ―による無機質なサウンドと、バンドの奏でるグラムロック的な猥雑さが合体したような楽曲を、ニコリともせずアンニュイなヴォーカルで聞かせるスタイルはなかなかに挑発的。MCも挨拶程度の最小限なもので、矢継ぎ早に曲を繰り出してくる性急さの果てに登場したラスト曲“SYNDROME2”は、スピード感もたっぷりの2分にも満たないパンクロックナンバー。オーディエンスに余裕の投げキスを放って颯爽と去って行った、一瞬のような25分。

SPARKS GO GO『SHINKIBA JUNCTION 2012〜ファン感謝でー』@新木場STUDIO COAST
SPARKS GO GO『SHINKIBA JUNCTION 2012〜ファン感謝でー』@新木場STUDIO COAST
17:20 奥田民生@メインステージ

1 俺は知ってるぜ
2 音のない音
3 愛のボート
4 ルーシーはムーンフェイス(with 橘あつや&たちばな哲也)
5 ロボッチ
6 さすらい
7 マシマロ

ステージ上にはバンドの機材は無く、置いてあるのは椅子とそれを取り囲むように、オーディエンスから見て左側に水やタオル用のテーブル、奥に2台のアンプ、そして右側にエレキギター4本を立てかけたスタンドという構図。つまり弾き語りなわけですが、いつもの弾き語りと違うのはギターがアコ―スティックではなくエレキだということ。「よろしくお願いします」という丁重な挨拶とともにまずは一本のエレキギターを取り上げ、ポロンポロンといじりながら何をやろうか考えている風情からスタート。この瞬間というのは、こちらも和みながらも「さて何が出てくるのか?」という期待感も高まる良い時間なんですが、意を決したように歌い出したのは“俺は知ってるぜ”でした。2曲目からはリズムボックスをゆったりとしたテンポで鳴らし、そうしてから次の曲のためにギターを取り替えるくだりもこの人らしく、場内の空気も自然にそのペースに寄り添っていくような感覚がまたいい。ただしアコースティックの時と違うのは、エレキなので音色を操作出来る点で、3曲目からはおもむろにテーブル上やマイクスタンドに設置されたエフェクター類を駆使し始め、深いエコーを響かせたかと思えば、そのままジェット音のような轟音を作り出すなど意表を突く場面も。そして、唐突に全てのサウンドを遮断して客席を驚かせるところもあり、弾き語りライヴにまた新たな風を吹き込もうとしている様子も垣間見せる。

SPARKS GO GO『SHINKIBA JUNCTION 2012〜ファン感謝でー』@新木場STUDIO COAST
しかしながら中盤以降は和やかな進行にシフト。SPARKS GO GOのカヴァー“ルーシーはムーンフェイス”では橘あつやとたちばな哲也を呼び込み、2台のギターとカホーン(南米産の打楽器)によるリラックスした演奏を聴かせる。その後も「“イージュー★ライダー”と“さすらい”、どっちがいいですか?」と客席とカジュアルな会話をしながら進行する様子も、最早この人ならではのペース。


18:05 I.M.O.@テントステージ

1 KITANOPOLIS
2 ヨウティーン
3 ちぇりーらみゅらみゅ
4 ジンギスカン ラムバイ
5 イモグリラ

アーティストの公式情報らしいものはほとんど無く、イベントのサイトにも「新たにI.M.O.(イモ マミレ オーケストラ)出演決定!」という告知があったのみで、その正体が気になっていたのですが、開演前からテントは満杯。実は、このイベント「JUNK!JUNK!JUN!」シリーズには、各出演アーティストからの選抜メンバーがこの日のために特別ユニット「倶知安乃風」を結成し有名曲をすべて倶知安あるいは北海道ネタの替え歌で歌う、というレギュラー企画があり、「イモ」の2文字から、このI.M.O.というのは倶知安乃風の変形版であろうことをオーディエンスは先刻ご承知でした。

今回はテクノの名曲を替え歌にするというテーマ設定。なので、Y.M.O.の初期ユニフォームである人民服からの連想で、メンバー全員が黒の詰襟学生服(帽子も)、何人かはフレームの幅が広い眼鏡も着用。ステージ配置を説明すると、中央のドラムの両側に2人ずつシンセサイザーを前にしたメンバーが並んでおり、客席から見て左から奥田民生、オカモトショウ(OKAMOTO’S この後SPARKS GO GOのライヴにゲスト参加)、八熊慎一、金澤ダイスケ(フジファブリック これだけのために参加)、そしてYO-KINGという5人。ちなみに、金澤ダイスケはゲストだそうで、彼だけは青ジャケットに茶髪という小室哲哉的たたずまいでした。

“KITANOPOLIS”は“TECHNOPOLIS”の主旋律に~とうもろこし泥棒、捕まえろ。アスパラガス投げろ、逮捕しろ~という歌詞を無理矢理乗せたもので、“ヨウティーン”では“RYDEEN”に~羊蹄山、倶知安一の高さ。羊蹄山、蝦夷富士とも言うよ~と熱唱するという、まあ、簡単に言うと余興の時間です。ちなみに、中盤からゲストヴォーカルとして桜井秀俊が“ちぇりーらみゅらみゅ”ではオレンジのワンピース(金髪ロングヘアーの上にはリボン)で登場するわ、続く“ジンギスカン ラムバイ”では(オリジナルは81年のイモ欽トリオ“ハイスクールララバイ”細野晴臣作曲 これもイモ繋がり)ではイモ欽の学生服に早着替えして続けざまに登場するわの大回転ぶり。締めは電気グルーヴの“Shangri-La”の替え歌で、歌詞は~KISS KISS KISS KISS KISS KISS じゃがいも、さつまいも~と、いうものでした。


18:40 マキシマム ザ ホルモン@メインステージ

1 What’s up,people?!
2 「F」
3 maximum the hormone
4 恋のスウィ―ト糞メリケン
5 糞ブレイキン脳ブレイキン・リリー
6 川北猿員
7 ロックンロール・チェーンソー
8 恋のメガラバ

いきなり音が大きい。というか、いつも通りのホルモンのステージだったのですが、民生の弾き語り~I.M.O.のチ―プなシンセ音と続いた耳には、規格外の迫力に聴こえる。そしてホルモン初体験者が多いとおぼしき場内も、そのパワーに驚愕!といった様子で、そのためかどうかはわかりませんが、1曲目からあちこちで子どもの泣き声まで聞こえ始める状態。しかしながら、曲が終わったところでの挨拶MCでナヲちゃんがすかさず「ごめんなさい!可愛い顔してこんな大きな音出しちゃって、ごめんなさい!」と入り、早速オーディエンスを笑いで味方につけて行く手際の良さが光る。さらには「今日はとっても楽しみにしていました。私、実はSPARKS GO GOとユニコーンのファンクラブに入っておりました!」いう必殺MCで場内を大拍手に導く一幕も。ダイスケはんも「今日はこっち(メインステージ)では、僕らが最年少なんで」といつもとは違ったヤル気が漲っている様子がアリアリで、そこからは一層遠慮の無いラウドロックが炸裂することになる。“恋のスウィ―ト糞メリケン”など、一部メロディアスなパートを含む曲を入れてくる配慮もありながら、大先輩方の中にあってしっかりと本意を全うした40分。ここでも最後はしっかり「めんかた、こってり、やったー!」をオーディエンス全員参加で締めてました。


19:25 電大@テントステージ

1 Chuo Free-Way
2 炎のモーニングコール
3 Body Guard
4 By The Way
5 Route31
6 風天

全員、若々しいなあ、というのが見ていての印象。おそらく血の肉の中に潜む、バンドを始めた頃の衝動~これカッコイイ、これ面白い~というDNAを通常より多めに解き放っているからこそ蘇るものがあるのだな、と、そんな音楽のマジックを感じる30分。憑かれたように冒頭から脈絡も無く「ワ―ッ!」と叫ぶ手島の姿からして、今とても乗っているバンドとしてのオーラも充分。6月に1stミニアルバムを出してツアーをやって、そして10月に2ndを出してまたツアーをやって、という意欲もとても納得出来る。もっとも、歌詞は「カロリー計算は大事」とか「健康管理も仕事」とか自嘲的なんですが。

曲が終わったところで何気にドラムのタム一発で次の曲に入っていく瞬間とか、3人で順番に追いかけながら歌っていくヴォーカルスタイルとか、長い音楽遍歴の中から体に染み込ませた快感のツボを惜しみなく繰り出してくる手練に唸らされっぱなしのライヴ。ちなみに、この日、10月20日はドラマ―川西さんの53歳の誕生日で、場内からは「おめでとう」の声も多々上がるなど、イベントを一層華やいだものにしてました。

SPARKS GO GO『SHINKIBA JUNCTION 2012〜ファン感謝でー』@新木場STUDIO COAST
SPARKS GO GO『SHINKIBA JUNCTION 2012〜ファン感謝でー』@新木場STUDIO COAST
20:00 SPARKS GO GO@メインステージ

1 BEAUTIFUL WORLD
2 NEW ROSE
3 Sookie Sookie
4 希望の街
5 I Can’t Explain(with オカモトショウ&オカモトコウキ)
6 ざまーない!
7 LET’S ROCK
8 Something Wild
<ENCORE>
1 NORTH SEA ROAD (全員)
2 SAD JUNGLE

そして最後にメインステージに登場するのは、本日の主役SPARKS GO GO。おびただしいバックライトに照らされる中、下手からゆっくり登場した3人。全員が手を高く掲げた姿はシルエットでもすぐに彼等と分かる光景で、スタート前からトリの貫録を示してくる。そして始まった1曲目は、今年6月にリリースした最新作のタイトル曲“BEAUTIFUL WORLD”。世界は美しいという歌詞をミディアムなリズムで奏でた、今なお歌うべき理由が沢山あることを示した楽曲で、まずはじっくりと腰を据えたスタートを見せる。

そんな様子で始まりながらも、場が進むにつれだんだんと理性のタガが外れてくるのも彼等のライヴの醍醐味で、今回は早くも2曲目、The Damnedのカヴァー“NEW ROSE”でそのスイッチが入る。ドラムのイントロにギターが絡み、八熊の「アッ!」という叫び一発で3人のアンサンブルになだれ込んで行く、彼等お得意の展開を見せた辺りから、全員の音がいきなりアタック感を増強。イントロも無いまま歌い出す4曲目“希望の街”での八熊の声の張りや艶からして早くもスタート時からはほとんど別人で、言葉のひとつひとつを鷲掴みにして投げてくるような野性味が一気に加速していく。

SPARKS GO GO『SHINKIBA JUNCTION 2012〜ファン感謝でー』@新木場STUDIO COAST
「息子を2人、紹介します」というアナウンスでOKAMOTO’Sからオカモトショウ(マラカス片手)とオカモトコウキ(ギター)の2人を招き入れ、The Whoのカヴァーで“I Can’t Explain”を披露したあたりからは、今度はステージ上の動きが活発化。歌をショウに任せた分、八熊はステージ前面に出てきてはマイクなしに叫んでオーディエンスを巻き込んで行く手法に一層ドライヴがかかる。場内が一気に温まった様子を見るや、その後再び3人に戻っての“ざまーない!”“Something Wild”といった代表曲では、AメロBメロを歌ったところで、すかさず大きなアクションからオーディエンスにサビメロの決めのフレーズを何度でも歌わせる。オーディエンスの歌声が回を追うごとに大きくなっていく中、その間ひたすら地声で叫び続ける姿は、イベントの大団円に相応しい雄々しくも美しいものだった。

SPARKS GO GO『SHINKIBA JUNCTION 2012〜ファン感謝でー』@新木場STUDIO COAST
SPARKS GO GO『SHINKIBA JUNCTION 2012〜ファン感謝でー』@新木場STUDIO COAST
アンコールでは、今日の出演者全員がステージに登場し、メンバーが改めてオーディエンスに出演者にスタッフにJCBに感謝の言葉を述べ、そして“NORTH SEA ROAD”へ。ここでは、巨大風船6個が客席に放たれ祝賀感を醸し出す演出も。そして最後の最後は再び3人に戻って軽快なスピードナンバー“SAD JUNGLE”を演奏し、カラッとしたムードで長い一日を締め括るのも彼等らしいメニュー。去り際、八熊は「また来年!」を2回も叫んでいたので、きっとまた来年も行われると思います。そして橘あつやが「今日は、NHK BSのカメラが入っていました」とも言っていたので、後日、今日の様子を画面で再体験出来ることでしょう。(小池清彦)
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