INORAN @ 渋谷公会堂

INORAN @ 渋谷公会堂
「42歳になってもムチャクチャやるんで皆さんよろしくお願いします!」――その言葉通り、42歳を迎えた今もなおヤンチャで、エネルギッシュで、不思議なイノセンスを湛えたINORANの魅力が気持ちよく発揮された夜だった。自らの誕生日である9月29日、一夜限りで行われたスペシャル・ライヴ「INORAN BIRTHDAY LIVE ?Code 929- 2012」。ソロ・デビュー15周年を迎え た今年は6月27日に10枚目のオリジナル・アルバム『Dive youth,Sonik dive』をリリース。それを引っ提げた全国ツアー、欧州7都市を周ったヨーロッパ・ツアーを経ての凱旋公演でもある。ちなみに前日の9月28日には、9月5日に1stアルバム『Crush It』を リリースしたばかりの新ユニット=Muddy Apesのライヴも敢行済み(ライヴレポートはコチラ→http://ro69.jp/live/detail/73445)。その熱も冷めやらないまま迎えたのが、今夜のスペシャル・ライヴなのだ。

客入り中からステージ上では大小たくさんのキャンドルが灯り、厳かなムードを湛えた場内。開演時刻を10分ほど過ぎて暗転すると、シャンソン調のSEが流れ、モニターやアンプに這わせた無数の電飾がパッと点灯する。バースデー・ライヴにふさわしい幻想的な演出ではないか? そう胸を躍らせていたのもつかの間、サポート・メンバーのYukio Murata(G/MY WAY MY LOVE)/u:zo(B)/RYO YAMAGATA(Dr)/d-kiku(Key&マニピュレーター)に続いてINORANがゆっくりと現れ、“smoke”でライヴをはじめると、場内の空気をビリビリと震わせる重低音ビートがいきなり炸裂! もくもくとし たスモークがステージ上に立ち込めて、場内は瞬く間にスリリングなムードを極めていく。そのまま“grace and glory”“SuperTramp”と畳み掛け、「東京、元気だったかー? ヨー ロッパを周ってきて、いわゆる凱旋帰国ってやつ!? 自分で言うのもナンですが、この記念すべき日を楽しんでいってくれー!」とINORAN。プレイ中には身を乗り出してハンドクラップを煽ったり、激しいアクションを見せたりと、寡黙にギターを弾き鳴らすLUNA SEAでの彼からは想像もつかなほどのエネルギッシュなパフォーマンスで観客を力強く鼓舞していくのだった。

脳天をハンマーでぶん殴るような重たいグランジ・サウンドが轟いた“NO NAME”や“Selfless”。淡々と刻まれるリズムの上でINORANの艶っぽいギター・フレーズが鳴り響いた“no options”。静と動のコントラストが美しい “Nine closets”――。オルタナティヴなメロディと、歪んでエッジの効きまくったバンドサウンドがせめぎ合う楽曲は、どこか荒んでいてクールな風合いを持ちながら、同時に胸がすくような昂揚感をも兼ね備えているのが面白い。まるで真夜中のハイウェイをひとり車を飛ばして駆け抜けている感じとでも言おうか。孤独で、切なくて、でも全てのしがらみから解き放たれたような自由な空気に満ちているのだ。さらにINORANのアコギ・サウンドが広大な大地を描いたインスト・ナンバー“HOME”や、風のようにさすらうアコギの旋律に乗せて客席のライターの火が灯った“Joshua”のオーガニックな響き――。メンバーそれぞれが強烈な個性を持ったLUNA SEAの中においても、土にどっしりと根を張る太い樹木のよ うな静かな存在感でもってバンドを支えているINORANだが、そんな彼の人柄が滲み出ているような強くしなやかなサウンドが、伸び伸びと鳴っていることがこの上なく嬉しい。

INORANがステージを掃けてサポート・メンバー4人で展開されたジャム・セッションでは、Yukio Murataの歪みまくったギターが炸裂。拡声器を持ったINORANが途中で登場する と、客席から凄まじいオイ・コールが沸き起こる。その後のMCでは、u:zoの音頭によって「♪ハッピーバースデー、ディア INORAN~」の大合唱がスタート。ステージ上にはバースデー・ ケーキが持ち込まれ、勢いよくロウソクを吹き消したINORANに大きな拍手が送られた。さらに「昨日一緒にライヴをやったスペシャル・ゲストです」という呼び込みで、Muddy Apesのヴォーカル兼ドラマーを務める MAESONことマエノソノ マサキ(8otto)が登場し、「INORANさん、誕生日おめでとう!」と祝福。そのまま後半戦へ突入すると、“Nasty”を皮切りにアッパー・チューンの乱れ打ち。“Rightaway”では渋谷公会堂の床が大きく揺れ、“Hide and Seek”では メタリックなギター・フレーズが疾走し、“One Big Blue”ではパンキッシュな轟音がポップに弾け――と、1曲ごとにハイライトと呼べるような光景が描かれていく。さらに“時化”でラウドに上り詰めたかと思いきや、「お前らが声出せる曲をやるからな! もうやんねーかもしんねーぞ!!」とプレイされたのは、なんとLUNA SEAの名曲 “TONIGHT”!! これには観客も狂喜乱舞するばかりで、眩い光で彩られた巨大な歓喜の輪が場内に形成されていくのだった。もう、最っ高!

その後は「もっと声が出るだろう!?」と“Get Laid”でコール&レスポンスを引き起こし、ラスト“LEMONTUNE”で客席にピースサインの花を咲かせてフィニッシュ。アンコールなしの全18曲、約90分に及んだアクトは大団円を迎えた。
「ヨーロッパ・ツアーでは少ないところでは20人ぐらいしか観客がいないこともあって。本当に勉強になりました」。“TONIGHT”に入る前、こんなことを語っていたINORAN。“Get Laid”の前には来月開催予定の香港・台湾公 演について触れ、「アジアで武者修行した後に曲作りに入って、来春ぐらいにまたライヴで戻ってきます」とも言っていた。この日のアクトでは、生まれたての衝動をそのまま音に変えたようなバンドサウンドを無邪気に鳴らす姿がとにかく印象的だったINORAN。その瑞々しい輝きは、バンドとソロの両方で確固たるキャリアを築き上げた42歳のギタリストとは思えない攻撃的な姿勢によって、今後さらに鮮烈さを増していきそうだ。(齋藤美穂)

セットリスト
1.smoke
2.grace and glory
3.SuperTramp
4.No Name
5.Selfless
6.no options
7.Nine closets
8.HOME
9.Joshua
10.Dr & Bass
11.Nasty
12.Rightaway
13.Hide and Seek
14.One Big Blue
15.時化
16.TONIGHT
17.Get Laid
18.LEMONTUNE
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