『氣志團万博 2012』(1日目)@千葉県・袖ヶ浦海浜公園

『氣志團万博 2012』(1日目)@千葉県・袖ヶ浦海浜公園
氣志團の結成15周年(メジャー・デビューからは10周年にあたる)を記念して開催される、2003年、2006年以来通算3度目の氣志團万博。場所は、東京湾アクアラインの木更津金田ICからほど近い、袖ヶ浦市の海浜公園である。2日間で計14組のアクトが出演(オープニング・パフォーマンスのDJ OZMAは両日出演、氣志團は両日にそれぞれスロットがあるほか、2日目のクロージング・パフォーマンスも務める)。巨大なステージで、すべての出演者をゆっくりと楽しむことが出来るという野外フェスのスタイルで開催を迎えた。

公園内は緑の芝生が広く生い茂る快適な場所で、西側は東京湾に面し、アクアラインや海ほたる、北の湾岸にはコンビナート群が視界に収まるという景色だ。初日の朝早くから多くの参加者が詰めかけ、氣志團ファンの変形学生服や特攻服、ももクロファンの細やかな色使いファッション、仙台貨物ファンの真っ赤なツナギ、グループ魂のグッズである角付きの黄色いフードタオルと、それぞれの思い入れが表された姿が目に楽しい。地味な普段着で参加すると、ちょっとした疎外感を味わってしまうほどだ。直前まで天候が少し危ぶまれていたものの、日中は熱いぐらいの好天に恵まれた。

『氣志團万博 2012』(1日目)@千葉県・袖ヶ浦海浜公園
『氣志團万博 2012』(1日目)@千葉県・袖ヶ浦海浜公園
さて午前11時、オープニング・パフォーマンスのDJ OZMAが登場する。まさか2代目DJ OZMAではないだろうなとハラハラしていたが、30分ほどの持ち時間にほとんどフル・セットじゃないかというネタと人員を詰め込む、ガッチガチのステージであった。学帽にTバック・ビキニの「男子十二学帽」が股間に構えていた長い風船を飛ばし、余裕で放送禁止レヴェルの“Spiderman”ダンスも繰り広げられる。“アゲ♂アゲ♂EVERY☆騎士”のトラック出しに手間取ったところを繋ぐOZMAは思わず「今日は最初から最後までずっと感動してろー!!」と。誰かさんの人格が乗り移ってしまったかのような言葉だ。

『氣志團万博 2012』(1日目)@千葉県・袖ヶ浦海浜公園
『氣志團万博 2012』(1日目)@千葉県・袖ヶ浦海浜公園
ここにグループ魂が連なるという、休日の午前中の海岸にはまったくそぐわない、濃い目の暑苦しいエロス展開を見せる万博初日。「女は、マザー牧場のソフトクリームのようなものです。何もしてないのよ? 何もしてないのに、俺に見つめられているだけでグチョグチョになってしまうから!」とかます港カヲルである。暴動は、故・地井武男に触れて書くことも憚れるようなエピソードをブラックジョーク気味に飛ばすし、カヲル恒例のお色直しではブラウスにチェック柄スカートで「ゼーット!!」と姿を現すという、闇討ちも覚悟の上みたいな決死のペースでステージを進めていた。混沌とした熱狂を引き摺りながら、“チャーのフェンダー”でフィニッシュする。

『氣志團万博 2012』(1日目)@千葉県・袖ヶ浦海浜公園
『氣志團万博 2012』(1日目)@千葉県・袖ヶ浦海浜公園
去り際の港カヲルによって、勝手に名前をスギちゃんに改められてしまった仙台貨物、氣志團万博出演で電撃復活のステージ。親交の深いNIGHTMAREからは、「どうしてウチじゃないんですか?」と意見があったらしいが、氣志團サイドからの熱いラブコールによって出演となったらしい。ギガフレア(Dr.)は残念ながら訳あって欠席、サポートが入った編成だ。《こんにちは〜、こんにちは〜、氣志團〜万博〜》と登場したフロントマンの千葉は、自らも「シュール」と評した太陽の塔のコスプレ姿。熱いゲイ・コールを巻き起こしながらのステージだが、“絶交門”、“珍々的愛情故事”、“神様もう少しだけ”とユーモラスにして作曲も演奏も秀逸なロック・ナンバーに沸く。震災後の地元・仙台に向けられた人々のサポートにも、感謝の言葉を告げていた。今後はベスト盤のリリースと、それに伴うツアーも控えているそう。

『氣志團万博 2012』(1日目)@千葉県・袖ヶ浦海浜公園
『氣志團万博 2012』(1日目)@千葉県・袖ヶ浦海浜公園
笑いとエロスの3連発の後、突如訪れた至福の時間。團長による「俺たちの育った街にキョンキョンの歌声が響くというだけで、号泣する自信がありますね」というコメント映像を受けて姿を見せる、この日1組目のアイドル枠(港カヲルのコスプレは除外します)=小泉今日子。“夜明けのMEW”から、盤石のバンド演奏に支えられて「あの声」が届けられ、1コーラスごとに喝采が上がる。「氣志團はデビュー10周年、結成15周年らしいんだけど、あたしなんか30周年なんだよ?」と10月にリリースされる新作アルバムからエレガントな新曲も披露。「あとでモモクロちゃんも出てきますが、年齢と経験だけは負けません。中年の方、お待たせしました!」と放たれるのは“The Stardust Memory”“ヤマトナデシコ七変化”“渚のはいから人魚”“なんてったってアイドル”といった怒濤の80’sヒット・メドレーだ。トドメとばかりに花道で景気良くコール&レスポンスを繰り広げるのは“学園天国”。普遍の輝きを持つ「センキュー!!」が決まった。

『氣志團万博 2012』(1日目)@千葉県・袖ヶ浦海浜公園
『氣志團万博 2012』(1日目)@千葉県・袖ヶ浦海浜公園
「湘南vs. 房総」という対立の構図が生み出され、強面の挑発ノリで一人残らずブチ上げてやるという意気込みを見せるのは湘南乃風。The BK Soundで知られる木更津出身のBKが、人質という立ち位置でセレクターのポジションに収まっているのが可笑しい。彼のバウンシーな豪腕トラックと共に、息もつかせぬマイク・リレーでしかも即興性の高いパフォーマンスを繰り広げる若旦那、HAN-KUN、RED RICE、SHOCK EYEの4ディージェイである。オリンピックというより完全に喧嘩腰なわけだが、“黄金魂”や“曖歌”のエモーショナルなメッセージを次々に投げ掛け、「ケンカはケンカでも気持ちのケンカだよ! どっちが熱いか勝負しようぜ!」とオーディエンスを巻き込んでゆく。タオル回しに一斉ジャンプと、ダイレクトなコミュニケーションで最後には房総リスペクトに繋げてしまう、灼熱のステージであった。

『氣志團万博 2012』(1日目)@千葉県・袖ヶ浦海浜公園
『氣志團万博 2012』(1日目)@千葉県・袖ヶ浦海浜公園
本編の前に“天手力男”でこの日の出演者唯一のリハーサルを行い、さっそく場内を騒然とさせていたももいろクローバーZ。「あくまでもリハーサルなんで、この間に水分補給とかしないと疲れちゃいますよ」と呼び掛けていたのは立派。さて、この日の5人はブラックの氣志團万博Tシャツにリーゼントアップのヘアスタイルだ。めちゃくちゃ可愛い。女子のリーゼント大好きです。スクリーン上の日の丸を背負って登場してから“労働讃歌”でスタートし、いちいち身体負荷の高そうなダンスを、鮮やかに踊りこなしてくれる。決め台詞付きの挨拶を済ませたところで有安杏果の姿が見えなくなるが、一瞬にしてステージ・セット上手の高台に出現。「バカは高い所が好きなんだー!」と声を上げる(でも、直後に小道具の巨大手袋がない、と慌てていた)。学ランを羽織って(学ランについたタグを取ってくれたお礼にと高城れにが玉井詩織の頬にキス)“One Night Carnival”を元気丸出しなハーモニーでカヴァーするスペシャルな一幕は初日のハイライトだったろう。「ももクロになったことに意味なんてなかったよ……ただ少しだけ……可愛かったのかもしれない!」の台詞が最高だった。

トリ前には岡村靖幸が登場だ。はっはっは、音がでかい。セット・リストは“どぉなっちゃってんだよ”に始まって“カルアミルク”でオーディエンスのハートを鷲掴みにするという定番のものだけれど、復活後の岡村ちゃんが対バン企画やフェス出演で見せる、「岡村ちゃんを余り良く知らない人にも、ノーベル賞ものの大発見と一生モノのトラウマを押し付けてしまう」この感じ、痛快な気持ちになる。團長は「親のセックスを見てしまったような」と的確なコメントをしていてさすがだった。バンドの爆発的なファンク・グルーヴとそれを視覚的に描き出す岡村ちゃんの超絶ヴォルテージのダンス。そして弾けるヴォーカル・パフォーマンスは絶好調。ちょうど陽が沈んだタイミングで岡村ちゃんが房総ロックンロール・オリンピックに放つロングシュート(エチケット仕様)は、復活後に観たどのロングシュートよりも美しい軌跡を描いていた。

『氣志團万博 2012』(1日目)@千葉県・袖ヶ浦海浜公園
『氣志團万博 2012』(1日目)@千葉県・袖ヶ浦海浜公園
というわけで、いよいよ初日のトリ、氣志團。光のトランペットが鳴り響き、ステージ床下から團長が浮上。そのまま、團長の長ランが伸びる伸びる! ステージ天井高の半分以上にまで到達してしまったところで、翔やんの第一声「俺たち、とてつもなく大きくなって帰って来たぜー!!」とそのまま“One Night Carnival”を歌い出してしまうのだった。凄いし面白いけど、怖くないのかな。「でもちょっとだけ……可愛くなかったのかもしれない」と、ももクロのネタに応えているぐらいだから大丈夫なんだろう。下降して再び床下に潜ったかと思えば、“日本人”の歌い出しで花道の先端に突然飛び出して来るという大掛かりな演出が連発である。“スタンディング・ニッポン”、ノンストップで繋ぐ“キラ キラ!”と飛ばしていった。勢いがついているのに恒例「オーライ! オムローン!」のコール&レスポンスを引っ張りまくってしまうのは、致し方なしというか、ファンなら誰もが計算済みというか。

“結婚闘魂行進曲 -マブダチ-”に続いて“鉄のハート”では、腕の負傷の療養中であるユッキもマイクを握って姿を見せ、「一緒に歌うわよー!」と煽り立てる。笑顔を見せてはいるけど、やっぱり晴れの舞台、悔しいだろうな。そして團長、この日の出演者を一組ずつ振り返りながら、「俺たちは、スイーツとして楽しんでください。あんなに凄い人たちを呼ぶことが出来たのも、みんながここまで遊びに来てくれたおかげです。ドゲザイル」と床にリーゼントを押し付けてしまう。でも、そんな卑屈さというか謙遜ぶりがキャラクターとして定着しているとしても、今の氣志團のライヴが高い実力に裏付けられたライヴになっていることは、ファンの大半が理解していると思う。“愛 羅 武 勇”、“俺達には土曜日しかない”、地元に凱旋して歌われる“落陽”は格別に感動的だった。ここで少し雨が降り出してしまったけれど、ものともせずに“MY WAY”で本編をフィニッシュした。

『氣志團万博 2012』(1日目)@千葉県・袖ヶ浦海浜公園
特攻服を身に纏って再登場すると、「とんでもねえ夢を叶えようとしております! 調子こきまくってお願いしてみました!」とスペシャル・ゲスト=リーゼントの近藤真彦を招き入れ、“ハイティーン・ブギ”で夢の共演を果たす。雨の花道でノリノリのマッチもかっこいい。「ありえないって言ったでしょ!」と得意げな団長である。そして氣志團万博のテーマ曲でもある“SUPER BOY FRIEND”を、今度はそれぞれのカラーに染められたリーゼントのももクロによるダンスと華々しく披露。團長を中心にポーズも決めて、「かなこぉ〜↑↑」ならぬ「あやのこぉ〜↑↑」の声も上がった。最後には花火が打ち上げられ、初日から幸せ絶頂の氣志團万博である。一体、2日目にはどうなってしまうんだろう。(小池宏和)
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