スピッツ @ JCBホール

スピッツ @ JCBホール - スピッツスピッツ
キャパ3000人強。アリーナ形式のフロアと3階席まであるバルコニー席が共存。それでも客席とステージの距離がMAXで25mしか離れていない、というJCBホールの独特のレイアウトを「宇宙船内部のシアターみたいで、素敵ですよね?」と表現しながら「宇宙船スピ号に乗って、宇宙の彼方へ行ってみないかい?」と照れくさそうにオーディエンスに呼びかけてみせたマサムネ……そう、今日は『SPITZ JAMBOREE TOUR 2007-2008“さざなみOTR”』の後半戦、スピッツ初のJCBホール公演である。

18:35、客電が消え、スピッツの4人とキーボード・クジヒロコが登場。肘丈の白ポロシャツのマサムネをはじめ、白半袖シャツに膝丈の短パンのテツヤなど4人とも白の衣装。「秋も深まってまいりました。今日は熱い夜を過ごしていきたいと思います」とマサムネはMCで言っていたが、そのやんちゃなくらいに若々しい佇まいは、どう見ても終わりかけの夏休みを全力で謳歌する少年である。

最新アルバム『さざなみCD』を引っ提げて始まったツアーの後半戦だけに、当然ながら新作の楽曲を中心にしたメニューであり、序盤から“ルキンフォー”のようなシングル曲のみならず、“点と点”のような展開激しいジェットコースター的な楽曲まで披露していく。一方で、“ヒバリのこころ”“チェリー”などの超定番曲を交えながら、そして「昔はクレジットカードも作れなかった僕らが、今こうしてJCBホールのステージに立ってるなんて……」という苦笑もののMCを交えながら、一風変わったこの会場の空気を1曲1曲じっくりと、しかし確かに全身で呼吸していく。

ツアーはまだまだ今年いっぱい続くので、詳細なセットリストは割愛するが、序盤のムードは「息もつかせぬほど曲を次々畳み掛ける」とか「会場一丸となって大盛り上がり!」というものではなく、どちらかというと、スピッツの音楽に潜む「メロディという魔法」の在処を、ステージと会場が一緒に探っていくような、不思議な空気感の中でライブは進んでいる。

「ツアー後半戦から、生まれて初めてワイヤレスマイクというものを使っております」とマサムネが話していた通り、『さざなみCD』でも特にメロディアス度の高い曲たちをハンドマイクで熱く歌い上げてみせたり、中盤で披露した11月5日発売の34作目のシングル曲“若葉”では、アコースティックなサウンドを軸としたシンプルなスロウ・ナンバーに、マサムネが色鮮やかなメロディで爽快なイリュージョンを施していたり……と、無敵の美メロ咲き乱れる「今」のバンドの充実度が、ライブの端々から伺えた。

そして、“若葉”を過ぎたあたりから、ロック・サイド・オブ・スピッツが一気に覚醒! 終盤の、マサムネが黒のムスタング風ギターに持ち替えて始まったオルタナ・コーナー(?)では、アリーナから3階席まで合唱したり手拍子したりして圧倒的なグルーヴを生んでいたし、“僕のギター”の≪君を歌うよ 小さな声が 大きな光になってくように≫という言葉が、ギミックも武器も持たずに等身大のままでロックの「その先」の光り輝く風景を描き出していくスピッツそのもののように聴こえて、なんだか嬉しかった。

オーディエンスの「もっと聴きたい!」という熱気を残して、アンコールまで含め2時間強のライブが終了。ツアーの後、来年1月には初のアリーナ公演(1/17・18=さいたまスーパーアリーナ、1/24・25=大阪城ホール)も控えているスピッツ。彼らがそこでどんな音楽の大輪の花を咲かせるか。今から気になって仕方がない。(高橋智樹)
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