宇宙まお @ Zher the ZOO YOYOGI

宇宙まお @ Zher the ZOO YOYOGI
宇宙まお @ Zher the ZOO YOYOGI
3アーティストが出演する『Almost,Always』という、Zher the Zoo YOYOGIのイベント……イベントというか、普通にハコがブッキングして3組が出演する、ということだと思いますが、とにかく、その3組のトリ。全7曲。1曲目、バンドが演奏し始めてからギターを持たずに登場し、スタンドマイクで“穴だらけ”を歌ってから、2曲目でギターを持って“バイバイ”をやり、あとはエレキとアコギを持ち替えながらラストまで歌う、ラストは “ロックの神様”、という全体の構成は、ここ数回のライヴと同じ流れ。6曲目は、春に出た1st ミニアルバム『風とどこかへ』には入っていない曲。新曲だそうです。「今いちばん歌いたい曲です」みたいなことを、MCでおっしゃっていました。

宇宙まお @ Zher the ZOO YOYOGI
宇宙まお @ Zher the ZOO YOYOGI
で。今回のライヴも、すばらしかった。というか、すごかった、いや、「すごい」という言葉は似つかわしくないかもしれない。「はあ?」「どこが?」と言われるかもしれない。「わかりやすい」音楽だけど、「わかりやすくすごい」音楽ではないので。でも、というところまで含めて、「すごい」というのが最もふさわしい形容だと思う、やはり。
シンプルで、大げささやカマシや装飾などが一切ないし、サウンド・スタイルもオーソドックスだし、音像も「厚い」「薄い」でいうと後者だし、全体に「過剰」か「淡々」のどっちかと問われるなら明らかに「淡々」だし、バンドもヴォーカル&ギターの本人以外はギターとベースとドラムというごくあたりまえなフォーマットだし、ステージでの本人、特にアクションがあったり饒舌にMCしたりするわけでもないし。むしろ、MC、おぼつかなくて、しゃべり終わったところでバンマス(ベースのキダタマキ)に「今日は、どうでしたか?」とかきいてたし。
そんな人がやっているそんな音楽なのに、すごいのだ。簡単で、聴いたまんまで読んだまんまなのに、1ライン1ラインが、ひとことひとことが、いちいち「言い得ている」「核心を突いている」歌詞。日本語がのっかるものとして、無理のあるところや不自然なところが1ヵ所たりともないのびやかなメロディ。すんごいハイトーンだったりすんごい個性的だったりするわけじゃない、どっちかというとヴォーカリストっぽくない普通の子っぽいそれなのに、耳に入ってくることそれ自体が異様に心地いい歌声。
誰もが理解できる、誰もが思いあたる、誰もが共有できることを歌う。というのは、多くの人に共有され愛される、普遍的なものになる場合もごく稀にあるが、「普通」「あたりまえ」「言われなくてもわかっている」「そんなみんなが言えそうなことあなたが言わなくてもいいじゃん」という結果になってしまう場合もある。というか、ほとんどがそうだ。この宇宙まおという人が、なぜ「ごく稀に」の側なのか、何をもってそんなことが可能になっているのかは、何度観ても、何度聴いても、よくわからない。わからないが、パッと聴くと最もキャッチーで最もおいしい曲である(と僕は思う)“ロックの神様”よりも、“バイバイ”と“満月の夜”の2曲の方に、その底知れぬ威力が、より濃く、より強く表れているように思う。
この2曲が持つ普遍性はすごい。特に“満月の夜”は、もう、シャレになっていない。「満月の夜 空も飛べる気がしたよ 物語を はじめよう はじめなきゃ」。ね。誰でも書けそうでしょ。でも、書けないのだ。そして、聴いていると本気で「物語をはじめなきゃ」と思ってしまうのです。何を始めんだおまえが。終わりかけのくせに。という話ですが、それは置いといて。「100年後も歌い継がれる歌」とか、よくある言い方すぎて好きじゃないが、でもこの曲、本気で、そのレベルだと思う。

宇宙まお @ Zher the ZOO YOYOGI
宇宙まお、ROCK IN JAPAN FES.(8月4日土曜日の出演です)で観れるという方、ぜひお楽しみに。って、別にROCK IN JAPAN FES.じゃなくても、観れる機会があったら、今のうちに観ておいたほうがよいと思います。(兵庫慎司)

セットリスト
1.穴だらけ
2.バイバイ
3.みじめちゃん
4.満月の夜
5.逢瀬
6.新曲
7.ロックの神様
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