Theピーズ@日比谷野外大音楽堂

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Theピーズ@日比谷野外大音楽堂
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バンド結成25周年記念ライヴにして、バンド史上3回目にあたる日比谷野音ワンマン。ピーズの普段の動員のアベレージからいうと、キャパ3000ちょっとであるこの会場は埋められるサイズではないのだが、少し前から「今回はなんかすごくチケット売れてるらしい」「売り切れ寸前らしい」という噂がとんでおり、結果、当日券は立見のみ、中に入れば「これ、ソールドにしてもよかったんじゃ?」と言いたくなるくらいの超満員。おまけにこの3回目の日比谷野音、結果として、ピーズにとって初めての雨が降らない日比谷野音になったわけで、アビさんとふたりで花で「25」と描かれたパネルを持ちながらステージに現れたはるさん、「いえーい、なんだか、なんかまるで、人生最良の日みたいだぜ!」とひとこと。ちなみにドラムの佐藤しんいちろう先輩は、そのふたりのあとについて、まるで護送される犯人のようにゼッケンを羽織って登場。そして、はるさん、「晴れてんよ、晴れてんよ野音、3度目の日比谷!」ともうひとこと発してから、1曲目“三度目のキネマ”に突入するのでした。

セットリストはこうでした。

1 三度目のキネマ
2 幸せなボクら
3 ドロ舟
4 サマー記念日
5 とどめをハデにくれ
6 ミサイル畑で雇われて
7 バカになったのに
8 絵描き
9 実験4号
10 かまわない
11 トロピカル
12 しげき的な日々
13 日本酒を飲んでいる
14 喰えそーもねー
15 使いのこし
16 シニタイヤツハシネ ~birn to die
17 でいーね
18体にやさしいパンク
19 底なし
20 道草くん
21 ノロマが走ってく
22 生きのばし
23 焼めし
24 日が暮れても彼女と歩いてた
25 真空管
26 階段

アンコール1
27 ニューマシン
28 バーゲン
29 霧の中
30 デブジャージ
31 グライダー
32 じゃますんなボケ(何様ランド)

アンコール2
33 チキチキバンバン
34 脳ミソ

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本編に加えアンコール2回、全34曲、約2時間半。2曲目の“幸せなボクら”をやる前に曲名を告げた時、それが言葉そのままの意味として放たれたようにしかきこえなかったり、5曲目の“とどめをハデにくれ”の「最低だ 最低だ 最低だ」のところを「最低だ 最低だ 最高だ」に変えて歌ったり、14曲目“喰えそーもねー”終わりのMCで、「いや、もう、気持ちよくてとろけっちゃうよ」ともらしたり、とにかくもう、うれしそうで楽しそうで幸せそうなはるさんでした。いや、はるさんだけじゃないか。3人ともか。で、最後までそのままのトーンでした。
アンコールのシメのあいさつで、はる、今日はバンド結成25周年のライヴだけど、活動休止期間を終えて、しんちゃんが入って再始動してから10年でもある、ということを話す。そう、ROCK IN JAPAN FES.への出演が発表になることで再始動をアナウンスしたのが2002年の6月だったから、ぴったり10年です。あと、はるは口にしなかったけど、だから、休止前に一度バンドを脱退したアビさんが戻ってきてから10年、ということでもあります。
で、ピーズだけでは食えないので、しんちゃんもアビさんも他の仕事をしながら10年やってきて、それでも、こういう日が来るのか……ありがとうございます。ということを告げ、「こうなってしまったら、もう、どこでやめるとかもないので、3人いるうちは、ずっと続きますので、よろぴく」と宣言するはるさんでした。さらに、「今日は、ほんと昔のお客さんも、最近のお客さんも、こんな、集まりすぎるくらい集まってもらって、ありがとうございました。今までいっぱい迷惑かけて……新しいネタ作らなきゃね。最近くたびれちゃって、あんまり新しい曲とか作ってなかったんだけど、こんな楽しい思いができるんなら、もっとやらなきゃと」。場内、大拍手。あと、大感動。

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って、なんで大感動なのかというと、これ、長年ピーズを追っかけているファンに共通する感覚だと思うが、ピーズのファンであり続けるということは、イコール、はるの心身を心配し続けることである。というところがあるからだ。ウガンダ脱退あたりからずっとそうだと言っていい。いや、違う。デビューからだ。デビューの時、ジャパンのインタヴューで、なんで1stアルバムを2枚同時発売にしたのかときかれて、「やる気なくなる前に音を残そうと思って」と答えた人である。で、その後、度重なるメンバー交代や活動の紆余曲折の末、本当に「やる気なくなって」ミュージシャンを廃業、調理師になった人である。そりゃまあ、ファンがそうなるのも無理はないと思う。しかもああいう歌詞を書く、ああいう歌を歌う、ああいう音楽をやっている人であり、こっちはそのファンであるだけに、はるを心配する=親しい身内とか好きな人を心配する、みたいな感覚を超えて、はるが大丈夫なうちは自分も大丈夫、はるがヤバくなると自分もヤバいみたいな、言うなれば自分を心配し自分を応援する的なマインドになっていくのです。
ただ、再始動後は、そういう危なっかしい感じがだんだん薄れてきて、特にここ数年、メジャーからもドロップアウトしたし、新しい音源はライヴと通販だけで売るシングルのみになってアルバムは全然作らないし、という状態になってから、却ってはる自身は「またやめるかも」みたいな、ひやひやさせる感じがなくなってきたように思う。それが心身ともに好調なせいか、それとも「結局自分はやるしかない」と腹をくくったからなのか、あるいは他の理由なのかはわかりませんが。でも、その末に、今日のこの、楽しく、めでたく、幸せで、美しいライヴがあったような気が、とてもしたのでした。
すばらしかった。長いことピーズ観てるけど、ベストのライヴだったかもしれない。たとえば5年前の20周年ライヴ@SHIBUYA-AXの時は、OTとか豪華ゲストいっぱい出て華やかだったけど、セットは後ろに組まれた「25」型のトラスのみ、ステージには終始3人きりの今回のライヴの方が、さらによかったと思った。

あと、合間合間のMCによると、はるさん、「とにかく雨が降りませんように」ということがものすごく憂鬱だったようで、それが見事に晴れたのも、本当にうれしかった様子でした。1回目のMCタイムで「昨日はピロウズで新潟で、今日、かけつけました」という紹介でしゃべりを振られたしんちゃんが「早くやらないと、だんだん雨が降ってきてしまう」と言うや「そんなことはない!」と食い気味で否定したり、その次のMCタイムで、「結局ね、雨とかどうでもいいの。このアル中の2人とバンドやって音出せる、それだけでいいの!」と泣かせることを言ったまではよかったが、続けて「だからいいの! 雨降れよ! 雨!」とか叫びだしたアビさんに対して「やめてー!」と絶叫したり、しまいには自ら「野音やるたびに雨で、こんなとこ来るもんかと思った」とか「こんなに気が重い日はなかった」とか「演奏よくなかったとかなら自分のせいだけど、天気みたいに自分の力が及ばないところで心配するのは嫌だからねえ」とこぼしたりするはるさんでした。アビさん曰く、はるさん、会場に到着するや、いきなりスタッフに握手を求めたそうです。降らなかったのがうれしくて。

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あと3つ。
ピーズの歌詞、デビューの頃からよく「文学的だ」と言われていたが、これ、とうに文学を超えてるよなあ、と、観ながら改めて思った。いつの間にか文学ができなくなったことをやっている、というか。特に最近の曲に、その傾向が強い気がする。って書いてて気づいたけど、伊坂幸太郎の書いた『実験4号』とか、絲山秋子の『逃亡くそたわけ』とか、実際に「文学に直接的な影響を与えているロックンロール」なんだった、ピーズは。
2つめ。アンコールでやった“デブジャージ”。アビさんが歌う(はるも一部歌うけど)のがお決まりになってるけど、あれ、いつからでしたっけ? で、なんででしたっけ? アビさん本人も、歌う前に「なんでこうなったかわからねえ、まあしゃあねえ、ほんとは歌いたかないけど歌うぜ」みたいなことを言っていた。ライヴのアクセントとしてはいいけど、アビさんが歌うの。あの曲、1stアルバム(『Vol.2』の方です)を聴き直すと、最初のところとか、はるは、かなりコミカルな歌い方をしているので、「今はああいうふうに歌えないからアビさん歌って」ってことになったんだろうか。と、空想したりしています、観るたびに。
それから。見事満員となった日比谷野音、さすがピーズのファンだけあって、えー、なんというか、年季の入った方、多かったです。私もですが。そして、やはりピーズのファンだけあって、アルコールの消費量、ハンパじゃなかったです。ライヴ中、どのお客さんも、足元に、ビールもしくは酎ハイの缶がゴロゴロ転がっている。野音の客席後方の左右にある売店、相当な売上だったと思う。
私の5列くらい前にいた、ハットかぶったおにいさんは、ブリックパックの日本酒を買っておられました。顔を見たら、The Birthdayのドラムの方でした。帰りにあいさつしよう、と思ったんだけど、終演後、そのまま帰ってしまい、電車の中で「あ、キュウちゃんに声かけるの忘れた」と気づいたので、ここに記しておきます。「記すなよ!」と言われそうですが、ご本人に。すみません。(兵庫慎司)
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