BUCK-TICK @ 日比谷野外大音楽堂

BUCK-TICK @ 日比谷野外大音楽堂
BUCK-TICK @ 日比谷野外大音楽堂
こんなにもグラマラスで、狂気じみていて、且つ重厚なオーラを持ったバンドは他にいるだろうか? 2時間強に及ぶライブの間、そんな問いが常に私の頭の中をよぎっていた。今年でデビュー25周年を迎えたBUCK-TICKの日比谷野音2DAYS「at the NIGHT SIDE 2012」の2日目。最初のMCで「また雨だよ。みんな濡れちゃえ」と櫻井も言っていたように、ファンクラブ会員限定ライブが行われた初日に引き続いてあいにくの雨模様に見舞われたアクトだったけど、そんな悪天候すら味方につけてしまうような、圧倒的なオーラでオーディエンスを魅了するバンドの姿がそこにはあったのだ。

ライブタイトルと三日月のロゴをプリントしたバックドロップが掲げられた野音のステージに登場した5人。まずは最新シングル“エリーゼのために”をブチかまし、客席を大きく揺らしていく。さらに「Fuck up!」のシャウトで野音をカオスの渦に落とし込んだ“ナカユビ”、極彩色のアンサンブルで野音を艶やかに彩った“NATIONAL MADIA BOYS”と、最新曲から90年代初期の曲まで飛び出す展開でオーディエンスを翻弄。初っ端から25年のキャリアを見せつけるその展開は去ることながら、力強いビートと力強いメロディでオーディエンスを熱狂の渦へと引きずり込んでいく楽曲の威力さに改めて驚かされる。

4曲目“蜉蝣 -かげろう-”からは、退廃と官能に彩られたB-T流メランコリアが炸裂。ダイレクトに腰を刺激するエレクトロ・ビートの上でシンセサイザーとギターの音色が物哀しく響く“羽虫のように”もすばらしかったが、雄大なサウンドスケープの上で《空に舞って 降り注いで》《帰ろう 雨あがり虹の彼方へ》と伸びやかに歌われる“空蝉 -ウツセミ”が、サーッと雨が降り注ぐ空模様にマッチしていて最高だった。

BUCK-TICK @ 日比谷野外大音楽堂
BUCK-TICK @ 日比谷野外大音楽堂
「8ビートでガンガン行きましょうか」と“MISTY ZONE”に突入すると、それまで小降りだった雨足が一気に強くなる。そして櫻井の「ワー!」という雄叫びを合図に、“Memento mori”へ。ライブを観るたびに思うが、どっしりとしたビートとオリエンタルな旋律で辺境の彼方へと連れ去っていくようなこの曲のスケールの大きさ、神々しさにはいつも圧倒される。今日は野外で放たれていることもあり、その凄みがさらに増していたように感じた。また、客席後方でスモークが焚かれる中、しっとりと鳴らされた“ノクターン -RAIN SONG-”もいい。エフェクターを駆使して歪んだギターの音色を響かせる今井と、淡々とした佇まいでアコギを掻き鳴らす星野。そんな対照的なギター隊2人の手によるアンサンブルが、たまらなく幻惑的で美しい。そこからさらなる桃源郷へと上り詰めた“幻想の花”も含めて、目の前の景色を黒く塗り込めていくような攻撃的なロック・チューンとはまた違う、透明な美しさを持ったB-Tのアナザー・サイドをじっくりと堪能できたセクションだったように思う。

ヤガミ・トールのダイナミックなドラミングから“REVOLVER”へ雪崩れ込むと、ステージ後方のバックドロップが落ちて大量のライトが露に! 強烈な光がビカビカと点滅する中、地を這うビートが先ほどまで固唾を呑んでステージを見守っていたオーディエンスの身体を激しく揺らしていく。ステッキを突きながら甘美な歌声を届ける櫻井の姿がオーラありまくりだった“ROMANCE”を経て、「さあ、踊ろう!」と突入した終盤戦は、クライマックスへ向けてノンストップのダンスタイム。“Django!!! -眩惑のジャンゴ-”ではタンバリンを打ち鳴らす櫻井の隣で今井が妖しく舞い踊り、“独壇場Beauty -R.I.P.-”ではそれまで後方にいたベースのユータが、ギター隊2人とともにステージ前方に一直線に並んで骨太なアンサンブルを奏で……と、4つ打ちで押しまくるダンサブルなサウンドに乗って一気に躍動感を増したメンバーのパフォーマンスからも目が離せない。そして本編ラストは“Baby, I want you.”。ザクザクと不敵に突き進む分厚いグルーヴ、そして今井が繰り出すテルミンの音が日比谷の空の上へと突き抜けて、あっという間のクライマックスを迎えた。

BUCK-TICK @ 日比谷野外大音楽堂
BUCK-TICK @ 日比谷野外大音楽堂
アンコールでは、まずは今井ひとりがオン・ステージ。レーザー光線に包まれながら“雨に唄えば”のメロディをゆったりと奏でる。それに合わせてメンバーが次々と登場し、櫻井が現れたところで“疾風のブレードランナー”へ。すっかり雨が上がった空の下、祝祭ムードに満ちたサウンドが伸びやかに広がっていく。さらに最新シングルのカップリング曲“夢見る宇宙”を浮遊感たっぷりに奏で、最後は今井のアナーキーなリリックが炸裂する“MY FUCKIN’ VALENTINE”でフィニッシュ。
ダブル・アンコールでは、“真っ赤な夜 -Bloody-”“天使は誰だ”の連打で再び野音を燃え上がらせる。そして「さあパレードが始まるよ。パレードが行くよ、みんなの街へ」と櫻井が言って大ラスに鳴らされたのは“スピード”! 7月4日リリースの25周年記念トリビュートアルバム『PARADEⅡ』、それに先駆けた対バンツアー、そして9月22・23日に2DYSで開催されるバンド主催のフェス「BUCK-TICK FEST 2012 ON PARADE」……と「パレード」の名を冠した25周年記念企画が今後は目白押しの彼らだが、そんな「パレード」の開幕を一足先に告げる祝祭歌として、今夜の“スピード”はいつも以上に華々しく鳴っているような気がした。

アルバムを引っ提げたツアーでは、毎回コンセプチュアルな世界観を見せつけてくれる彼ら。しかし今回はスペシャル・ライブ、しかも野音のシンプルなステージということも手伝って、バンドとしての素のかっこよさがいつも以上に浮き彫りになったアクトだったように思う。それによって見えてきたのは、BUCK-TICKというバンドの存在感と吸引力の凄さ。衝動に任せて激しくギターを掻き鳴らすわけでもない、オーディエンスを力強くアジテートするわけでもない。楽曲にしても「しっかりとしたリズム」と「しっかりとしたメロディ」が淡々と推移していくものが多い。にもかかわらず、こんなにもスリリングで、官能的で、美しい世界を築くことができるのは、聴き手の心をどうしようもなく震わせる根源的なパワーをバンドそのものが持ち合わせているからだと思った。しかも25年のキャリアを経て、その威力がどんどん増していることに驚かされる。改めて稀有なバンドだと思ったし、こういうバンドが25年間もの長きにわたって多くのリスナーをワクワクとさせ続けていることが、本当に嬉しい。気が早いかもしれないが、30周年、40周年……と逞しく歴史を刻んでいくバンドの姿がありありと目に浮かぶような、圧巻のアクトだった。(齋藤美穂)

BUCK-TICK @ 日比谷野外大音楽堂
セットリスト
1.エリーゼのために
2.ナカユビ
3.NATIONAL MEDIA BOYS
4.蜉蝣 -かげろう-
5.羽虫のように
6.空蝉 -ウツセミ-
7.MISTY ZONE
8.Memento mori
9.原罪
10.ノクターン –RAIN SONG-
11.幻想の花
12.REVOLVER
13.ROMANCE
14.Django!!! –眩惑のジャンゴ-
15.独壇場Beauty –R.I.P.-
16.Baby, I want you.

アンコール1
17.疾風のブレードランナー
18.夢見る宇宙
19.MY FUCKIN’ VALENTINE
アンコール2
20.真っ赤な夜 -Bloody-
21.天使は誰だ
22.スピード
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