アルカラ @ LIQUIDROOM ebisu

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SEに合わせて飛び跳ねる観客達を嬉しそうに眺めながらスタンバイした田原和憲(G)、下上貴弘(B)、疋田武史(Dr)。稲村太佑(Vo & G)はヴァイオリンをノリノリでプレイし、時折弓をかざしてポーズを取る。ステージ上に据えられた立派な脚立に上って哀愁のフレーズを奏でると、女性の声によるナレーションが流れ始めた。「意気揚々と恵比寿リキッドルームに辿り着いたのは、ロック界の奇行師アルカラです。ここで注意事項。本日のステージが空回った場合、恵比寿リキッドルームは、明日から恵比寿ソリッドルームになります」。「それは大変だ!」と一応皆が動揺してみたところで「今日はファイナル。お祝いの言葉が届いております」と、おもむろに吉田美和のお面を着用し、“決戦は金曜日”を熱唱しだした稲村。首に掛けたお馴染みのタンバリンが歌に合わせて嬉しそうに揺れる。今回のツアータイトルは『嗚呼、決戦は金曜日』だから、ドリカムに敬意を表したというわけか。観客も歌って応える。不思議なテンションに包まれながら、ライヴはスタートした。
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オープニングを飾ったのは“交差点”。いきなり必殺チューンを聴けて最高! 猛烈なタテノリで沸き立ったフロア。“ミ・ラ・イ・ノ・オ・ト”“振り返れば奴が蹴り上げる”“癇癪玉のお宮ちゃん”……キレが猛烈に良い曲が連発され、場内の温度はみるみる上昇していく。6曲目“涙腺”で、全開でイケイケだった冒頭の曲群から少し趣きを変えた。下上と疋田によるヘヴィなビートを軸に狂おしいメロディを響かせた“アリスギター”。リズムの変化を巧みに交えつつ、ドラマチックな展開を遂げた“散らかった部屋とわたし”。そして、最初のMCタイムへ。稲村のもとへ紙芝居が運び込まれる。最初のページには「アルカラのせいで観れなかった人へ」と書かれていた。何のことだろう? 次のページに行くと、現れたのは「サッカー 日本vsヨルダン戦」という文字……すっかり忘れていたが、今まさにW杯アジア最終予選が行われているのだ。「日本  ―  ヨルダン」、点数の部分が空欄となっているスコアボードに稲村が進行中の試合の点数を書き込みだした。ヨルダンは「0」。安堵の声が広がる。では日本の点数は?……「ひみつ」と人を喰った文字で記したため、「えーっ!」というブーイングが起こってしまった。全く動じることなくページをめくり、金星の太陽面通過を実演した稲村(イラストの太陽面を棒の先端に付けた黒丸が移動しただけ)。そしていつしか紙芝居はしりとりへと転じた。「りんご」→「ゴリラ」→「ラジオ」→「オットセイ」→「犬」……「ネクストソングは犬の歌!」。犬の鳴き声が響き渡り、“カキツバタ832”へ。何処かエキゾチックな香りもするギターフレーズに刺激され、観客の本能剥き出しのダンスがフロアを揺らす。この曲を皮切りに、変幻自在なリズム、アクの強いギターフレーズを活かしたトリッキーな曲が続いた。
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“阿弥陀ワルツ”の演奏が終わり、小休止。「イヤなやつ!」と唐突に言った稲村。彼の解説によるとスタジオジブリの映画『耳をすませば』の主人公・月島雫のモノマネなのだという。「太陽面を金星が通過している間に我らの篠田麻里子さまが5位に甘んじて……」と、いつしか話題はAKB48総選挙へと転じ、最終的には「アルカラがライヴをやるせいで、サッカーの視聴率が下がったと本田選手から苦情の電話がありまして。今日も6時54分に電話があって、“また視聴率が下がる! イヤなヤツ!”と言っていました」というオチへ辿り着いていた。

“キャッチーを科学する”から、いよいよ佳境。熱いサウンド、歓声、ジャンプ、ハンドクラップが場内に渦巻きまくった。タイトルそのままに、皆、痛いくらいに手を叩きながら踊って恍惚となった“マゾスティック檸檬爆弾”。皆の理性を破壊してやまなかった“半径30cmの中を知らない”……などなど、熱い曲だらけ。そして“やいやいゆいな”の後、稲村が観客に挨拶。「本日はチャン・グンソク presents『嗚呼、決戦は金曜日』に起こし頂き、誠にありがとうございます。皆さまのお陰で、明日からリキッドルームはソリッドルームにならずに済みました。皆さまのその笑顔に! 最後にこの曲を歌いたいと思います。♪少し気が多い私なりに~。さっき練習したでしょ!」。稲村に促され「♪泣いたり笑ったり~」と、ドリカムの“決戦は金曜日”を共に歌い始める観客。アカペラで交わされる歌声が一体感を生んだところで演奏再開。“メランコリア”へと雪崩れ込んだ。迸る爆音、シャープなビート、スピード感たっぷりの展開が抜群に心地よい。脚立の上から稲村がジャンプするアクションも飛び出し、本編は華々しく締め括られた。
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「オッカワリ~! オッカワリ~!」、アンコールを求める歓声と手拍子に促され、ステージに戻ってきた4人。「1人1人にお礼を言いたいけど、それは20年後にディナーショーをした時にします。だから皆で吉田美和さんにありがとう!って言いましょうね。あのね。おとつい歩いてたら、横からパトカーが走ってきて。ボーっとしてたからぶつかりそうになって。警察官が車内から手を動かして“早く行け!”ってやるわけ。めっちゃ気分悪くなって。でも、その警察官にも娘がおるんやなと思ったら許せたんだけど……」というような稲村の前フリで始まったのは、2月に出たEP『おかわりください』を最後まで聴くとわかる、あの曲。腕を掲げて開放的に踊る観客。そしてラストを飾ったのは“ミックスジュース”。大合唱も巻き起こしつつ、限界まで皆のアドレナリンを絞り上げていた。

演奏が終わると、立ち位置のまま下を向いて静止したメンバー4人。そしてエンディングSEのX JAPAN“TEARS”が高らかに響き渡った。まずは稲村がゆっくりとステージ袖へと向かう。じっくりと間をおいた後に田原。続いて下上。最後は疋田……1人1人がやたらと神妙な表情を浮かべ、丁寧に一礼して去っていく様が可笑しい。V系バンドのような二の線のフィナーレだ。観客は大喜びしながら拍手を贈る。演奏をしている時は正統派にカッコ良くてスリリング。しかし、随所でムダに面白いアルカラを目一杯に堪能したツアーファイナルであった。(田中大)

1.交差点
2.ミ・ラ・イ・ノ・オ・ト
3.振り返れば奴が蹴り上げる
4.癇癪玉のお宮ちゃん
5.チクショー
6.涙腺
7.アリスギター
8.散らかった部屋とわたし
9.カキツバタ832
10.わ、ダメだよ
11.阿弥陀ワルツ
12.キャッチーを科学する
13.マゾスティック檸檬爆弾
14.夢見る少女でいたい。
15.半径30cmの中をしらない
16.やいやいゆいな
17.メランコリア

アンコール
18.(上記レポート参照)
19.ミックスジュース
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