アンドリューW.K. @ LIQUIDROOM ebisu

アンドリューW.K. @ LIQUIDROOM ebisu - pic by YOSHIKA HORITApic by YOSHIKA HORITA
アンドリューW.K. @ LIQUIDROOM ebisu
なんと約5年半ぶりの単独での来日公演だという。昨年3月の『PUNKSPRING』に出演予定だったが、震災の影響で中止。“兄貴”ことアンドリューW.K.を慕って止まない日本中のパーティー野郎どもの衝動は、沸々と溜まる一方だったのだ。しかし、ついにこの夜がやって来た!

サウンドチェックが始まると、激しい手拍子と「W.K.! W.K.!」という待ちわびた掛け声が上がる。その熱気に刺激されてか、マイクチェックをするスタッフの声が、やたらとエモーショナルで熱い。そして、薄暗くなった場内に響き渡ったサイレン音。「ハロー・エヴリワン! イッツ・タイム・トゥ・パーティー!」とスタートが宣言され、ステージに駆け込んできたバンドメンバーたち。コーラス担当のアンドリュー夫人・シェリーもいる。沸き立つ観客に負けないくらいに、メンバーたちもハイテンションで腕を振り上げて臨戦態勢。満を持して我らの兄貴、アンドリューが登場すると、興奮した観客たちの雄叫びが場内をビリビリと震わせた。兄貴が手に持っている白い紙製のボードには、「STUPID」と書かれている。「バカになれ!」というメッセージだが、我々は既にバカになる準備が完璧に出来ていた。1曲目“It’s Time To Party/パーティーの時間がやってきた!”(英語のタイトルだと何だか感じが出ないので、以下、邦訳タイトルがあるものは併記することにする)が 始まるや否や、理性ゼロ、本能丸出しの熱気が場内を覆った。

今回のツアーはデビュー・アルバム『アイ・ゲット・ウェット~パーティー・一直線!』のリリース10周年を記念したアニバーサリー・ジャパン・ツアー。あの鼻血ジャケットの名盤が、曲順通りに演奏されていった。だから2曲目は勿論、“Party Hard/パーティー・一直線!”。巨漢のアンドリューが乱れた長髪を垂らし、可愛らしく前かがみとなって鍵盤に向かい、「ポン! ポン! ポン! ポン!」という、あの独特なピアノフレーズを叩き出し始めたら、激しく踊らずにはいられない。鍵盤をプレイする時は邪魔にならないようにすかさずマイクをズボンに挟み込むアクションが、実に手慣れていて感心した。マイクは丁度股間の位置に差し込まれ、先端の丸い部分がズボンのヘリからヒョッコリ顔を出す。なかなか卑猥な見た目になるのが、とても素敵だ。「トーキョー、ジャンプ!」と煽られて、フロアがタテノリで揺れまくった“Girls Own Love/あの娘は愛を独り占め”。さらなる熱狂へと突入し、場内の酸素がなんとなく薄くなったように感じられた“Ready To Die/爆死上等!”。曲タイトルのお言葉に甘えて上半身くらいは脱ぎたいくらいに身体が熱く燃えた“Take It Off/脱いじまえ!”……極上のパーティー・ロックが全開で連発された。

「セイ・パーティー!」と呼びかけ、「パーティー!」と返す観客。そのレスポンスのキレに気を良くしたのか、「パーティー」という言葉の発声ヴァリエーションを次々と複雑に変化させ始めたアンドリュー。やたらと長く延ばしたり、一旦声を低くしてから一気に高音で突き抜けてみたり……我々の対応が不可能となったところで演奏再開。サビが素晴らしい大合唱となった“I Love NYC/好き好きニューヨーク”は、Tシャツの首周りを頭に引っかけ、ウルトラマンに登場する怪獣・ジャミラのような姿になって熱唱した姿が印象的だった。「セイ・ファミリーマート! セイ・セブンイレブン! セイ・ローソン!」という唐突なコール&レスポンスが今一つ盛り上がり欠けたのに失望したのか、冒頭で使用した「STUPID」ボードが丸められ、パンツの中にしまわれちゃった……。続いて披露されたのは“She Is Beautiful/イカす彼女に一目ぼれ”。冒頭では兄貴がギターを鳴らして観客を煽っていたが、本編が始まるとギターを外してハンドマイク体制。ステージ上を巡りながら熱唱した。

男性客から「セクシー!」と呼びかけられたのを切っ掛けに、セクシーコールが巻き起こったまま突入した“Party Till You Puke/吐くまでパーティー”でのフロアの沸き立ち方は、本当に凄まじかった。観客の飛び跳ねまくるダンスが圧巻で、「良いジャンプだった!」と褒めてもらえた“Fun Night/今夜は終わらない”。熱い昂揚感に包まれつつも、グッと来るメロディを噛み締めた“Got To Do It/人生は楽しむものだから”。そして、続けざまに演奏された“I Get Wet/汗にまみれてパーティー三昧”と“Don’t Stop Living In The Red/こんな生活やめられない”は、モッシュ、ダンス、大合唱、咆哮、発汗の嵐だった。1stアルバムの全曲を演奏し終え、「10周年ありがとう!」と感謝の言葉を述べると、メンバー達は一旦楽屋へと戻っていった。

我々の手拍子と歓声に呼ばれてフラフラとステージに戻ってきたアンドリュー。手拍子に合わせて奇妙な動きで踊る様子が、何処となく志村けんの変なおじさんみたいだ。こういう不思議な日本人っぽさがあるのも、彼がこの国で慕われる理由の一つかもしれない。「今夜はありがとう。まだパーティーを続けたいか? じゃあ、2ndアルバムの1曲目を」。“Victory Strikes Again/パーティー野郎は無敵!~テーマ曲”が、ライヴ第2章の幕開けを告げた。ここからは2ndアルバム『THE WOLF/一匹狼』と3rdアルバム『CLOSE CALLS WITH BRICK WALLS/兄貴、危機一髪!』の収録曲によってセットリストが構成されていた。哀愁たっぷりにじっくり高鳴る“Never Let Down/オレはおまえの特効薬”のような、ひたすらアゲアゲの1stアルバムとは趣きが異なる曲も体感出来た。「ヘッドバンって意味分かるか? こうやるんだよ」という親切な実演を経て、本編のラストに演奏されたのは“Head Bang”。パンキッシュに爆走し、曲の後半では高速でヘヴィなギターリフが刻まれる中、場内一丸の超絶ヘッドバンギング大会となった。「トーキョー・ヘッドバン!」と煽られ続け、観客は限界まで首を振っていた。

アンコールのために登場したアンドリューは、最前列の観客達と固く握手。「ホー!」とコール&レスポンスをじっくり交わしてから演奏が始まったのは、“We Want Fun/宴を求めて三千里”。アンドリューは開放的に躍動するサウンドに包まれながら軽やかにステップを踏み、ノリノリで大熱唱していた。シェリー夫人とつないだ手を掲げ、ピースフルに最後の挨拶をするのかと思いきや、突然、再びヘッドバンギングタイムへ。ドラム以外の全メンバーがステージの最前線にズラリと並び、頭を振りまくってエンディングを迎えた。完全燃焼! アンドリューW.K.のパーティー・ロックは、やっぱり最高だった。

終演後、出口でおみやげが配布された。今回の来日ツアーを記念して行われた「鼻血写真コンテスト」の応募作を使ってデザインされたポスターだ。『アイ・ゲット・ウェット~パーティー・一直線!』のジャケ写の鼻血の部分に、様々な人の鼻血顔がコラージュされている。バカ受け! 良い記念になりそうだ。(田中大)

1. It’s Time To Party/パーティーの時間がやってきた!
2. Party Hard/パーティー・一直線!
3. Girls Own Love/あの娘は愛を独り占め
4. Ready To Die/爆死上等!
5. Take It Off/脱いじまえ!
6. I Love NYC/好き好きニューヨーク
7. She Is Beautiful/イカす彼女に一目ぼれ
8. Party Till You Puke/吐くまでパーティー
9. Fun Night/今夜は終わらない
10. Got To Do It/人生は楽しむものだから
11. I Get Wet/汗にまみれてパーティー三昧
12. Don’t Stop Living In The Red/こんな生活やめられない

13. Victory Strikes Again/パーティー野郎は無敵!~テーマ曲
14. Long Live the Party/パーティー大王!
15. Never Let Down/オレはおまえの特効薬
16. Totally Stupid/バカ丸出し
17. You Will Remember Tonight/そして、今夜も大勝利!!
18. Head Bang

19. We Want Fun/宴を求めて三千里
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