カイト/チーム・ミー @ LIQUIDROOM ebisu

カイト/チーム・ミー @ LIQUIDROOM ebisu - KYTE  All pics by KAZUMICHI KOKEIKYTE All pics by KAZUMICHI KOKEI
カイト/チーム・ミー @ LIQUIDROOM ebisu - TEAM METEAM ME
インディー・ポップ/ロック・ファンにはお馴染みの企画『Hostess Club』によって今回リキッドルームに招かれたのは、過去サマーソニックを含む数度の来日公演で着実に支持基盤を強固なものにしている英レスターシャー出身のバンド=カイトと、ノルウェーはオスロ出身である6人組のチーム・ミーという組み合わせ。いざ蓋を開けてみればサウンドに感じさせるバック・グラウンドも、パフォーマンスの雰囲気もまるで異なっていた両者だけれど、ドリーミー・ポップにおける現在地のスタンスをそれぞれに伝えてくれていた。関東では不安定な天候が続いているにもかかわらず、会場は大盛況。

カイト/チーム・ミー @ LIQUIDROOM ebisu
カイト/チーム・ミー @ LIQUIDROOM ebisu
先行するのは初来日公演となるチーム・ミー。フロントマンの一人であるウーノが、バンドの登場に沸くフロアに向けてさっそくバシャバシャとカメラを向けている。2011年にデビューEPを、今年初のアルバムを発表した新人バンドでありながら、まるで気負ったところのないこの余裕。彼が気合一閃の雄叫びを挙げ、クラップを巻き起こしつつ"Patrick Wolf & Daniel Johns"によってライヴの幕を切って落とした。いったい誰がリード・ヴォーカルなんだか分からないような豊穣なコーラス・ワークは、インディー・ポップのトレンドを射抜いた作法と言えるだろうか。大きなサウンドのうねりを生み出し、高揚感をもたらしてくれる。

作品に触れただけでは正直ここまでとは思っていなかったのだけれど、ベーシストのスカリ、ドラマーのビヤーンらがすこぶる強力なリズム・セクションである上、マルチな活躍を見せるマリウスが前線でフロアタムを打ち鳴らしたりするものだから、祭典的でダイナミックなグルーヴが形作られてしまう。彼は「ノルウェーから来ると、東京は暑いねえ」と言っていたが、それってバンドのせいでもあるだろう。かと思えば、EP収録曲"Kennedy Street"ではシガー・ロスを彷彿とさせるようなボウイング奏法のギターを披露して繊細な美しさを演出してみせたり、或いはエクスペリメンタルなノイズの中に飛び込んでゆく場面も見られる。紅一点のブロンド・ビューティであるエリダは最近バンドに加入したようだが、そもそもチーム・ミーとは北欧のインディー・バンドによくある、コミュニティ型のバンドなのではないだろうか。これまでにも多くのメンバーが入れ替わるようにしてバンドに関わってきたようだ。

カイト/チーム・ミー @ LIQUIDROOM ebisu
カイト/チーム・ミー @ LIQUIDROOM ebisu
メンバー達は目に楽しいフェイス・ペインティングを施し、レディオヘッドやブロークン・ソーシャル・シーンといった先鋭的なグループにも影響を受けながら、しかし土着のフォークロア色も受け止めさせる自由で豊かな音楽を作り上げている。緊張感をまったく感じさせないその「音楽の近さ」は、現代日本人にとっては羨ましくさえあるほどのフィーリングだろう。一見、我々は音楽に囲まれているようではあるけれど、果たして、彼らのように気負わず、より密に、音楽に接しているだろうか。終盤の優れてポップなメロディを持つビート・ナンバー"Show Me"は秀逸だった。9曲をプレイしたところで終了したものの、「もう1曲だ!」とすぐに飛び出してきて計10曲。期待はしていたけれども、それ以上のパフォーマンスであった。

カイト/チーム・ミー @ LIQUIDROOM ebisu
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さて、一方のカイトは、先週レコーディングが終了したばかりという新作アルバム『ラヴ・トゥ・ビー・ロスト』の収録曲による、嬉しい世界初公開ライヴ。明滅する照明の中、鋭利かつ大音量の低音が轟き、チーム・ミーの祭典的なグルーヴ&コーラスとは裏腹な、ニック・ムーンただ一人に委ねられた繊細なヴォーカルが届けられる。オープニングの"Every Nightmare"から、さっそく新作のナンバーを投下である。

甘い絶望の陶酔感を呼び込む上モノのフレーズがありつつ、強烈にせりだしたボトムはポスト・ベース・ミュージック時代のバランス感覚と言うべきだろうか。そしてマイクを握りしめ、声量は控え目でありながらも大きな溜め息のようにブレスが漏れ聴こえるニックの美しいヴォーカルは、いつもどこか居心地が悪そうで、しばしば歌いながらスコットのドラム・セットの方を向いてしまっていたりする。バンドのサウンドは中央のニックの歌を必死で支えるようであり、行き過ぎて歌声を掻き消してしまったりもするような、そんな緊張感に満ちている。この日の来場者にフリー・ダウンロードのパスコードがプレゼントされていた新作収録曲"Friend of A Friend"も披露される。

新作お披露目ライヴではあるのだが、ところどころに配置された往年のナンバーで歓声が沸くのはここ数年で頻繁に来日公演を行ってきたカイトならではの光景だろう。歌の場面では何か後ろめたさを引き摺っているような素振りのニックも、一曲をプレイするごとに丁寧に感謝の言葉を投げ掛けてくる。若く、潔癖な感性を持つアーティストと、その実力を遠慮なく引き出そうとするオーディエンスの相乗効果が、フロアにとても良い空気を作り上げてゆくように感じられていた。ニックとトムがツイン・ギターで透明感に満ちたサウンドを描き出す"Aerials"から、大胆なシンセ・リフと共にニュー・ウェイヴ・マナーで繰り出される"Half Alone"への流れは、カイトのいかにもUKバンドらしいウェットな情緒とサウンド指向を示していた。

カイト/チーム・ミー @ LIQUIDROOM ebisu
カイト/チーム・ミー @ LIQUIDROOM ebisu
バンドを離れた元メンバーやトムのソロ・プロジェクトを含め、若い彼らはまだまだアーティストとしての自身の可能性を模索している最中なのだろうし、カイトとしても成長し、作品の手応えを変えてゆくだろう。それを長く見守るようなスタンスで接するファンの存在はバンドにとって本当に頼もしいはずだし、素晴らしいと思う。アンコールでは、映画の挿入歌にも使用されたお馴染みのナンバー"Boundaries"も披露されたが、ニックはこの夜初めてと言ってもいいくらい、まっすぐにオーディエンスを見つめながらこの曲を歌っていた。喝采の中でステージを去るときに告げられた言葉は、「We'll come back soon!!」だ。おお。夏か? TAICOCLUBへの出演経験もあるカイトだけに、正式なアナウンスが気がかりなところ。

さあ、『Hostess Club』と言えば、ポップ/ロック・ファン垂涎のイヴェント『Hostess Club Weekender』の第2回開催も、6/23と24に控えている。今回も優れた新作を生み出しているベテラン/中堅勢から話題沸騰のフレッシュなバンドまで、熱いラインナップが予定されているというところ。また、いくつかの出演者は単独公演も決定しているので、ぜひオフィシャルHPのチェックを。(小池宏和)

TEAM ME
01: Patrick Wolf & Daniel Johns
02: Weathervanes and Chemicals
03: Riding My Bicycle (from Ragnvalsbekken to S?rkedalen)
04: Kennedy Street
05: Favorite Ghost
06: Come Down
07: Daggers
08: Show Me
09: Dear Sister
en: With My Hands Covering Both of My Eyes I Am Too Scared to Have A Look at You Now

KYTE
01: Every Nightmare
02: Love To Be Lost
03: Breaking Bones
04: Friend of A Friend
05: Sunlight
06: Alone Tonight
07: Aerials
08: Half Alone
09: Scratches
10: IHNFSA
en-1: Boundaries
en-2: The Smoke Saves Lives
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