『キューン20イヤーズ&デイズ』 ユニコーン/TOTALFAT @ LIQUIDROOM ebisu

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『キューン20イヤーズ&デイズ』 ユニコーン/TOTALFAT @ LIQUIDROOM ebisu
『キューン20イヤーズ&デイズ』 ユニコーン/TOTALFAT @ LIQUIDROOM ebisu
ここRO69ライブレポートのコーナーでも立て続けにレポートをお届けしている、キューンミュージック設立20周年&社名変更記念ライブ企画『キューン20イヤーズ&デイズ』。真心ブラザーズとゴスペラーズとか、RHYMESTERとねごととか、おそらくこういう場でなければまず実現しないであろうというブッキングも「ミスマッチ」ではなく「面白い!」にしてしまうのも、キューンというレーベル特有の磁場をリアルに物語っているのだが、この日のユニコーンとTOTALFATもまさにその極致のような、リキッドルームが終始高揚感のカタマリと化したまま2時間半があっという間に過ぎてしまった、奇跡の一夜だった。


■TOTALFAT

01.Summer Frequence
02.Highway Part2
03.Good Bye, Good Luck
04.PARTY PARTY
05.World of Glory
06.Good Flight & Promise You
07.See You Later, Take Care
08.All for You
09.Place to Try
10.Overdrive

ステージを覆うスクリーンに、キューンミュージック所属アーティストたちの祝福コメント映像が映し出された後、まずは先攻のTOTALFAT登場。「キューン20周年、楽しみましょう! TOTALFATです!」の絶叫とともにShunがカウベルを乱打して“Summer Frequence”の4つ打ちビートへ突入、さらに「激しいやついくぞー!」というJoseのコールから“Highway Part2”の快速ビート炸裂! ジェット・エンジン級のエネルギー全開パンク・サウンドと「初めての人も多いと思います。出会えてよかったです!」(Shun)という渾身のポジティビティが、見た目ユニコーン・ファン多めのオーディエンスをぐいぐい巻き込んでいく。“Good Bye, Good Luck”でフロアを高らかなクラップで包んでみせたところで「のっけからむちゃくちゃ楽しいんですけど! くそアウェイだと想像してたんで。あったかいっつうか、暑くて……(笑)」と語るShunの顔は早くも汗と感激で眩しいくらいだ。「ユニコーン先輩よりちょっと音固めなんですけど。曲知らなくても関係ないんで!」「TOTALFAT、今日ここにすべてぶち込んでいくつもりなんで! こんな日が来るなんて……今日、人生最大の事件になるかもしれない!」と、異種格闘技的なこの日の対バンへの意欲と充実感が、その言葉から次々にあふれ出してくる。

「今日は、俺たちのニュー・シングルの発売日です!」というJoseの言葉に導かれて、まさにリリースしたばかりのシングル曲“PARTY PARTY”へ! ディスコ・ビートのイントロからオフスプリング“プリティ・フライ”ばりのAメロ→爆走2ビートのサビ→間奏でヘヴィ・メタル、と瞬間ごとにサウンドと景色が変わり、歓喜の先へと聴く者を誘っていく。Joseのハイトーン・ヴォイス、Kubotyの飛翔感に満ちた速弾きメタル・ギター、剛性と熱気の結晶のようなShunのベース、そして多彩なビートを繰り出すBuntaの爆裂ドラム……持てる音楽的武器を1曲に注ぎ込んで死に物狂いのパーティーを描き出すような、壮絶なまでに爽快なナンバーに、TOTALFATとしてのポジティブな闘志が凝縮されているように思えて、胸が熱くなった。

レーベルメイト=井上ジョーを呼び込んでの“World of Glory with JOE INOUE”完全再現、性急に希望の先へと駆け抜けていくような“Good Fight & Promise You”……と畳み掛けた後、「ぶっちゃけた話、CD買って音楽を聴いたり、チケット買ってライブ行ったり、音楽を楽しむ上では重要ではない情報かなって。それは死ぬまで変わらないと思うけど……」と、キューン20周年について、そしてメジャーの場で闘うことについてShunが語る。結成から12年経って、続けていくことの大変さと、そこから物を生み出していくことの素晴らしさを感じていること。ここリキッドルームはTOTALFAT自身にとっても、インディーズでのラスト・ツアーのファイナルの場所であり、キューン所属後初ツアーのキック・オフもここリキッドルームだったこと。「俺らはパンク・バンドなんで、気に入らなければ中指を立てるし、気に入ったものには親指を立てるけど、一緒に時間を尽くして、TOTALFATのためにすべてを尽くしてくれるキューンミュージックに、心からのお祝いを言わせてください!」。そんな真摯な言葉と“See You Later, Take Care”の優しいメロディに、熱い拍手が広がる。

「俺らは1年中、どこでもライブをやってます! 今日の俺たちの顔と音を思い出してもらえたら嬉しいです!」とShun。「歌詞がわからない? 曲がわからない? ノリ方がわからない? そんなの関係ねえんだよ!」とJose。全曲アンセムのようなアクトの最後、“Overdrive”で持てる力を完全燃焼させるまで約50分間、潔いまでにパンク・ロックへの愛と誠意とロマンが吹き荒れた時間だった。


『キューン20イヤーズ&デイズ』 ユニコーン/TOTALFAT @ LIQUIDROOM ebisu
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■ユニコーン

01.手島いさむ物語
02.デジタルスープ
03.WAO!
04.頼みたいぜ
05.メダカの格好
06.炎のモーニングコール(電大)
07.R&R IS NO DEAD
08.HELLO
09.SAMURAI 5~人生は上々だ
(Encore)
10.Feel So Moon

そして20:15、後攻ユニコーン登場! “スター・ウォーズのテーマ”とともに幕が開くと、オープニング曲を手掛けたアニメ『宇宙兄弟』にちなんでNASA風ツナギに身を包んだ5人の姿が……というスタートの段階ですでにメーター振り切れっ放しの大熱狂! “手島いさむ物語”でテッシーがさっきのKubotyと競り合うかのような鮮やかなタッピングを繰り出し、“デジタルスープ”の美メロにリキッドルームがさらに一体感を増し、“WAO!”でフロア一面でっかいハンドウェーブで覆い尽くす。活動周期的に言えば、今はユニコーンのライブ期間ではないどころかそもそもユニコーンの活動期間ですらない5人だが、こうしてステージに集結した時の連帯感とサウンドはやはり最高のポップ感にあふれている。「……つうかさ、このツナギでかいんだよね!」と曲の合間にボヤく阿部Bの姿すら、どこか1つのキャラクターのように見えてしまうのも、ユニコーンという空間ならではのマジックだ。

「えー、キューン20周年おめでとうございます! ユニコーンです! もともとユニコーンはキューンじゃなかったんですけど。再結成する時に、僕のソロがキューンだっていう理由でキューンに……別によかったんですよ、元のソニーでも。だから、いろんな後輩に比べて、立場的にはあまりよくないんですよ(笑)」と「キューン在籍4年目バンド」としての祝辞(?)で笑いを誘う民生。「久しぶりなんでね、恥ずかしいんですよ。隠れたい気持ち(笑)。阿部と俺がね、あんまり人前に出てないんですよ。ましてや恵比寿なんて……ねえ?」(民生) 「都会ってすごいねえ!(笑)」(阿部) 「でも今の君たち(とフロアを眺める)、どう見ても都会から来た感じじゃないよね?」(民生)と客いじりを始める頃には、すでに会場の一体感が「リキッドルーム全員ユニコーン」的なレベルにまで達している。

民生ドラムで川西/手島/EBIの3MCが“メダカの格好”を歌った後、いそいそと民生&阿部が退場。そのまま「DD」ロゴ入りスタジャンの3人が特に何の前置きもなく“炎のモーニングコール”を演奏し始めたのだが、これは川西/手島/EBIによる3ピース・バンド「電大」の曲。後から「電大っていうバンドみたいです」(阿部) 「やる前に説明しなさいよ。俺らただ休んでるみたいじゃない(笑)」(民生)と突っ込まれ放題。「何か別の呼び名あんの? カワニシジェット(「ジェット機」時代の川西のメンバー表記)みたいに」と訊かれたEBI、「あるよ! えー、EBIアンペア!」と答えた後「川西ボルト」「手島ワット」と次々に大喜利のようにひねり出していく。そんな脱線しまくりの空気が、阿部Bの物静かなピアノと歌から“R&R IS NO DEAD”のストイックな音空間へ流れ込んだ瞬間に一変、凛とした緊迫感がオーディエンスを一気に支配する。そこで生まれた感激を、そのまま“HELLO”の途方もないスケールのメロディへ直結してみせる。珠玉の時間だ。

ちなみに、上のセットリストでは「09.SAMURAI 5」と書いてあるが、“SAMURAI 5”の途中のブレイクで「『海岸線を』……あれ違うな。『俺が、海岸線を走っている時、あいつが言ったんだってさ』……」と芝居口調で語り始めたところから大きく脱線。「阿部Bが貼っていた湿布を民生に渡す→民生、テッシーに貼らせる→阿部B、もう1枚民生に渡す→今度はEBIに貼らせる」の場面あり、「いいよね、年に1回こういう感じで。この後(ユニコーンの)スケジュール入ってないもん」の民生の言葉にフロアから「えーっ!!」の絶叫が巻き起こって「だから電大やるっつってんじゃん!」と応える場面あり……とぐだぐだ語りの限りを尽くした挙げ句、♪走り続ける~ と阿部Bが拳を掲げたのをきっかけに“人生は上々だ”に突入。曲終わりと同時にそのまま本編が終わってしまう。

熱烈なアンコールの呼びかけに応え、再びオンステージした5人。最後の曲はやはり、アニメ『宇宙兄弟』のオープニング曲“Feel So Moon”。冒険心と憧れと神秘と切なさとがでっかいスケールで渦を巻くような、あるいは“すばらしい日々”の感激をそのまま銀河まで持っていったような阿部Bの至高の楽曲とメロディが、民生の熱唱&5人のパワフルなサウンドと一丸となって、最高のフィナーレを飾っていた。「というわけで、今年唯一の仕事……これまではね?」とアンコールのMCで民生が期待を持たせていた通り、この日の終演後、ライブDVD『MOVIE23 / ユニコーンツアー2011 ユニコーンがやって来る zzz...』とシングル『Feel So Moon』の6月発売決定! そして『キューン20イヤーズ&デイズ』はリキッドルームにて、4月30日の電気グルーヴ/ギターウルフ(!)までまだまだ続く!(高橋智樹)
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